(切甘)同じ空を泳ぐ
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泣きそうになりながらも本当に嬉しそうに笑ったあの顔は、出会ってから見た中でも最高の笑顔だった。
今、またあの笑顔に触れることができたなら……会いたくても会えない寂しさなんかすぐに飛んでいくのにな。
そう思うとまた後ろ向きな気持ちに支配されちゃいそうで、向こうに聞こえないように静かに息を吐きながら時計を見た。
ああ……もう寝なきゃいけない時間だ。
もう電話タイムも終わりかぁ……早いよ。
「……そろそろ、寝ないとだね。」
『あ……うん、そうだね。……明日もお互いに頑張ろうね!!』
「うん。」
寂しいけど、リイナちゃんのほうから終わりを告げられる方がずっとつらいから、今日は俺の方から切り上げた。
どことなくリイナちゃんも寂しそうに聞こえたのは、ただの俺のうぬぼれかなぁ。
「じゃあ……おやすみ。」
『うん、おやすみ!』
「…………」
『…………』
「……切るの惜しいね。」
『……うん。』
もう終わりにしないといけないのに、どちらからも電話を切ることができなくて二人して少し沈黙した。
切るのも切られるのも寂しい、だからお互いに動けずにいる。
こういうのも、心が繋がっているってことなら、これは皮肉かな。
本当は今すぐにでも会いたい。
それで、そのままずっと一緒にいられたらいいのに。
この寂しさは、壱組と貳組で離れているのに好きになった、俺たちの宿命かな。
……いいよ、今寂しい分、会えた時はうんとくっついて離れないから。
大好きって気持ちがあれば、距離なんかいつでも越えられるから。
……なんて、強がってもみる。
そうしないと、心は意外と脆いってことをよく知っているから。
『あ……そういえば、今度また貳組と仕事があるんだった。』
「え?そうなの?」
『うん、さっきいきなり言われたから與儀になかなか報告できなくて。』
「そっか、じゃあ……。」
会える……なんて、仕事なんだから言っちゃダメだよね。
そう思って慌てて口を閉じたけど、電話の向こうで吹き出したような声が聞こえた。
『久しぶりに会えるね。』
「あ、うん……。」
まるで代弁してくれたのかなっていうくらい俺の気持ちと同じだったから、ドッキリした。
リイナちゃんも思ってくれたんだ……。
『なに、会いたくない?』
「会いたいっ!!」
そんなの、会いたいに決まってる!!
少しでいいから顔が見たい、直接声が聞きたい……それだけでいいんだ……贅沢なんて言わないから。
『まぁこれくらい大丈夫だよね。私は普段から優秀なので、ちょっと私情が入るくらいは許してもらわないと。』
「あはは、じゃあ俺も私情を挟んでも大丈夫なくらい頑張らなきゃ。」
『與儀も大丈夫だよ~。やる時はやるじゃない。』
「そ、そうかな……。」
『そうだよ~!』
輪の俺たちは……
任務なんかないほうが、平和の証ってことだけど…。
頑張るから。すごくすごく頑張るから、任務があるときにちょっとでも会いたいって思っちゃうのは、許してもらえないかな……。
二人きりになる暇はないと思うから、贅沢は言わないよ。
ただ会って話すだけでいい。
それだけでいいから。
大好き……だから……。
「……じゃあ、本当にそろそろ、おやすみ……。」
『うん、おやすみなさい……またね、與儀。』
「うん、またね。」
電話じゃなく直接おやすみって言葉を交わして、抱き締めながらキスをして眠る。
そんな夜を過ごすことを、もう何度夢見ながら一人きりのベッドで寂しさに耐えたかな。
普通の恋人同士は当たり前にできることが、俺たちはできないから。
電話を切ったあと、チラリとさっきの星空を横目に見た。
どうかこの景色だけでも、彼女に届きますように…。
同じものを見て繋がりたい。
それか、いま彼女が見ている景色が知りたい。
星が見えない彼女の部屋の窓の空は、いまどんなふうになっているのか……少しでいいから教えてください……。
―……壱組と仕事か。
いつになるのか、明日平門サンに聞いてみよう。
そう思いながら、近いうちに会えるんだって早くも高ぶる気持ちを抑えてベッドに潜り込んだ。