(甘)じゃれ犬とツン猫のはなし
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「與儀、あのね…。」
もう少し…今なら、素直になれる気がする。
つたない言葉でも、きっと與儀はちゃんと根気よく聞いて、理解しようとしてくれる。
不器用なりに紡ぐ言葉を。
この広くて大きな腕と胸で包まれてみたい。
壊れそうなほどドキドキしても、きっと幸せな気持ちになれると思うから。
「な~に?」
優しく笑いながら首をかしげて耳を傾けてくれた與儀に、抱き締めて…と言おうと口を開いた…その時。
「與儀と月乃ちゃん、いるかなぁ??」
「多分、もう戻ってきていると思うけれど…。」
「――――っ!!!」
ガヤガヤと賑やかな話し声が近づいてきたのが聞こえて、私はバッと與儀から離れた。
同時に无くん、花礫くん、ツクモちゃんが入ってきてバクバクと心臓が高鳴った。
あ…危なかった。
イチャついているところなんか見せられないっ!!!
「あ、二人ともいたー!!」
「―………ど、っ…ど、うした、の?」
さっきまで與儀としていたこと、言おうとしていたことを思い出して動揺が止まらない。
與儀も少し照れくさそうな顔で三人のほうを向いてる。
…名残惜しそうに、横目でちらちらと私を見ながら。
…見るな。頼むから今の私を誰も見ないでっ!!!
うう…せっかく勇気を出そうと思ったのに!!!
慣れないことをしようとするから…いや、そもそもこんな共有スペースでイチャつくなって話なんですけどね。
「ツクモちゃんが、そろそろ二人が戻ってきてるかもって言ったから、みんなで遊ぼーって。」
「…俺は寝たい。」
「どうしたの?二人とも。並んで座るなんて珍しい…」
「っ!!!あ…あーーっ!!!だ、だったら私、みんなのお茶入れてきてあげるっ!!!」
「え?羊さんにお願いしたら…」
「い、いいでしょ!私のお茶でもっ!!行ってくるっ!!」
「あ…」
どうにもいたたまれないっ!今すぐさっきの私よ消えろ!!とばかりにリビングを飛び出した私。
出入り口を走り出たところで一度呼吸を落ち着けるべく立ち止まると、途端にへたりこんだ。
「はあぁ…なにやってるの、私……。」
これじゃかえって怪しまれる…というか、しばらく與儀と二人きりになる自信がまたなくなった。
素直になるのなんか…自分の気持ちをちゃんと言葉にするのなんか、あんまりしたことがなかったのに。
與儀の前だと気持ちがはやる。
「…なに、なんか珍しく慌ててたな、あの鉄仮面。」
(てつ…っ!?)
…花礫くん、それ悪口じゃなくて率直な私の印象なんだろうけど…それはないんじゃないかなぁ…?
確かに否めないので反論のしようがありませんが…。
「てつかめん?」
「な…无くん、それは覚えなくていいから…。」
「ちょっ…花礫くん!!月乃ちゃんは鉄仮面じゃないよ!ちゃんと笑うよ!」
「は?笑うのあいつ?つか表情筋あんの?見たことねぇけど。」
「ひょーじょーきん?」
「それも覚えなくていいから…ね?」
「笑うよ!!すっごく可愛いよ!!」
―――やめてええええっ!!!!!!
與儀の必死なフォローがこっちとしてはノロケにしか聞こえなくて、私はしばらく一人悶えてリビングに戻れなくなっていたのだった。
笑顔のまえにすっごく真っ赤な顔をみんなに見せることになってしまう。
ていうか鉄仮面は本当にひどいと思う。
悪気はないのだろうけど…軽く乙女心が傷ついたので、せめて、喋らない代わりになるべく笑顔は心がけようと思う――…………。
おわり
2015.04.03
こんにちは、今回もお待たせしてしまい申し訳ありません!
「無口で口下手なヒロインとほのぼの」
です。
ツンキャラになってしまいましたが、いかがでしたでしょうか…?
自分に自信が無いから喋ることも苦手で、言葉にしないと伝わらないけど、つたなくても一生懸命に言葉にしようとする頑張りを與儀はちゃんと見ていて好きになってくれたのかなぁ?なんて思いつつ書きました。
リクエストありがとうございました!