(甘)じゃれ犬とツン猫のはなし
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「……っ」
「…あ、ごめん。もしかして、こういうのも嫌?」
「え…。」
ドキドキして固まってしまい、そのまま下を向いてしまったのを、與儀は私が嫌がっていると思ってしまったのかもしれない。
頭に置かれていた手が離れていく。
「べ、べつに…触りたかったら触っても……。」
「うーん、そりゃ俺は触りたいけど…」
「嫌じゃないし…。」
「そう?」
違う、本当は触って欲しいの。
いっぱいいっぱい触られたい。
だけどそれってまるで…痴女みたいで言うのを躊躇う。
與儀はこんな甘えベタな女で本当にいいのかなって思っちゃう。
今までずっと、女からベタベタするのは、男の人はうっとおしいんじゃないかと思ってた…けど。
可愛いことも言えないし、可愛い子ぶることもできない。
甘えることもできない。
こんな私のどこを好きなのかがいまだに理解できずにいる。
だから、自信のなさが余計に今の私を作っているのかもしれない。
「俺ってスキンシップとか距離感が近いのかなぁ?だからいっつも花礫くんに怒られちゃうんだよねぇ。」
「それでもめげないってスゴいよね。」
「仲良くしたい!!って気持ちが先に行っちゃうんだよね。わ~!!って、やりたくなっちゃうんだ。」
无くんを抱き締めたりもするし、花礫くんに嫌がられてもめげずに頭を撫でたりしては怒られてる。
感情が先走りしちゃうのかな?
でも、それがいつも良いほうに先走ってるのだから尊敬する。
いっそ私もそうなれたらいいのにな。
気持ちのままに…触りたい、触られたいって感情のまま動けたらな。
それができない私を、與儀はどうして好きだって思ってくれるの…?
「よ…與儀は……」
「うん?」
「…なんで私のことが好きなの?」
「え?」
「…っ…いい、やっぱりいい!!!」
なんで私のことが好きか、なんて。
自分で言ってて恥ずかしすぎるっ!!!
気になる。気にはなるけど、こんなこと彼氏に聞くとか私ってばバカ!?
「それは、あの…」
「だ、だから言わなくていいって…っ…」
恥ずかしくてそらしていた顔を思いきって向けると、與儀は頬を赤く染めて私を見つめていた。
さっき、大好きだよーって言っていた笑顔とはまた違う…表情で好きを表している顔。
恋してる、顔。
なんで…私に、そんな顔をしてくれるの。
「月乃ちゃんは、すっごく可愛いよ。」
「なに、言って…。」
可愛いわけない、こんな無口で愛想もないのに。
口を開けば喋るのも苦手。
一緒にいて気まずくはなっても、楽しい空気になんかなりはしないのに。
「見た目もだし、中身もすっごく可愛い。俺がドジしてもなにやってるのって言いながら、呆れずに大丈夫?って心配してくれる優しいところとか。人のことを悪く言わないし。」
「そうだっけ…。」
「うん。俺のお喋りをずっと聞いてくれるし、時々笑ってくれるとすごく可愛くてドキドキする。だから、さっきからつい月乃ちゃんの顔ばっかり見てニヤニヤしちゃって。見てるだけでも幸せ。俺の彼女さんは本当に可愛いな〜、こーんなに可愛い子が俺の彼女さんなんだな〜、って。」
「…………っ…………」
「あ、でも俺、もしかして見すぎ!?ただ見てニヤニヤするとか気持ち悪い!?」
「いや、そんなことはないけど…。」
「じゃあよかった。」
これが、お世辞とか言い繕っているわけじゃないのはわかる。
どれも本気の言葉で…だから、余計に恥ずかしくて俯いてしまう。
そりゃ私だって、たまには人の面白い話を聴いて笑ったりくらいはする。
それを與儀は、可愛いってドキドキしてくれたの…?
無口でいる私の姿すら、ニヤニヤ見て幸せって思ってくれるの。
恥ずかしい…けど、嬉しい。
好きな人にこんなふうに言われたら、普通じゃいられないでしょ。
ドキドキと心臓が震えて顔が熱くなる。
可愛いのは與儀のほうだよ…って思うけど、好きな人に可愛いと言われて嬉しくないわけがない。
「わ…私……」
こんな気持ちになるの…恋をしたのは、初めてなの。
だからどうしたらいいかわからなくて、でも嬉しくて。
この高ぶる想いを、どう伝えたら伝わるのかがわからない。
「…好きだよ…與儀のこと…。」
「………へ?」
與儀の言う、"わーっ"ってなる気持ちがわかった気がする。
溢れて止まらない想いが、考えるより先に口に出た。
触りたい、触ってほしい。
そんな気持ちが止まらなくて、言葉に出す前に…コツン、と與儀の胸にオデコをくっつけた。
(う…わぁぁあ…っ)
すっごく恥ずかしいことをしているっていうのはわかるんだけど…與儀みたいに抱きつくなんて絶対無理だし、これが精一杯の愛情表現。
與儀はさっきまでのおしゃべりと真逆に、今度は黙りこんでしまった。
なにか言ってよぉ…っ!!
せっかく勇気を出したのに…リアクションしてくれなきゃ引っ込みがつかないよ。
私に、好きって言ってほしいんじゃなかったの?
それともくっついたのはやりすぎだった?
段々とクリアになってきた思考でそんな嫌な方向にばかり考えが浮かぶ。
もうさっさと離れて逃げてしまおうか…と思ったその時、…ガッと両肩を掴まれて離された。
なに…っ!?
と思う暇もなく、真っ赤な顔をした與儀がいきなり近づいてきて唇を塞がれた。
「――っ!!??」
與儀の唇が私の唇に当たって、思わず見開いた視界にドアップの目を閉じた與儀の顔。
初めてのキス…と認識をする前に離れて、また見つめられた。
「もぉ…っいきなり可愛いことするからっ!!」
「な…っ…え…っ?」
「ごめん…また気持ちが先走った…。」
はぁぁあ……とため息をつきながら、今度は與儀が私の肩にオデコを預けてもたれてきたので、無言で硬直する私。
近い…距離が。それどころかくっついちゃってる。
肩にかかる重みが、温かさが…ど、どうしたらいいの?体が動かない。
「…さっき、言ったでしょ~?俺、本当に月乃ちゃんのことが可愛くて大好きなんだってば。なのに、好きな子に好きって言われただけでどうにかなりそうなのに、あんな…くっつかれたら…もうダメ…俺、ドキドキしすぎて死んじゃうよ…。」
「え…と…ご、めん…」
「…や、ううん…ごめん、いきなりその…キス、とか…しちゃって…。思わず体が勝手に動いてた…。」
いえ、あの。
…付き合っているんだから、そりゃいつかはキスくらいするんだろう…けど…だから、謝る必要はないんだけど…。
それに、ほんの一瞬だったし。
そう言いたいのに、
不意打ちすぎて…
心臓が早鐘を打ってる。
一瞬だったのに、確かに唇に残っている感触。
「…いつか好きって言ってくれたらそれで良いって思ってたのに…ズルいよぉ…。俺、本当は触りたいのとかすっごく我慢していたんだよ…。」
「あの…別に私、嫌じゃないし…触りたかったら、触っても…いいし…。」
違う、こんなことが言いたいんじゃない。
私…私は……ああもう、早く言葉出てきて…っ!!!