(狂愛)壊れた鏡がうつすものは
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近くにいられたらそれで良かったよ。
一番仲良くなって、一番一緒にいる存在になれたら…いつか、自然と恋が芽生えるって信じていたんだから。
それがただの神話で、あっさり崩れ落ちるのは簡単なんだって思い知らされた。
「えっ……?」
潜入捜査をしていたかなえちゃんが、脱出の途中で遭遇した敵と戦闘になって負傷した。
ツクモちゃんからそう連絡が入ったとき、俺は冷や水を浴びせかけられたようにゾクリと寒気がした。
けれど運ばれたのは研案塔ではなく艇の医務室だというから、大事ではなかったんだと思う…けど、急いで現場から艇に戻って医務室に走った。
「かなえちゃん!?」
「あ…與儀。もう帰ってきたの?おかえり。」
かなえちゃんは変わらず笑っていたけど、右腕には先日の湿布なんかじゃ比べ物にならないくらい、包帯をグルグル巻いていた。
傍に付き添っていたツクモちゃんも驚いたくらい、俺は慌てて帰還したからよほど早くの到着だったらしい。
「大丈夫なの!?」
「うん、大丈夫。ちょっとかすっただけ。包帯はちょっと大袈裟だったかな。」
「大袈裟って…ヴァルガとの戦闘でしょ!?」
「まーた與儀の過保護が始まったね。本当に大丈夫だよー。」
あはは、とかなえちゃんはあくまで明るく笑う。
痛いとか怖かったとか、泣き言はいつも言わない。
かなえちゃんにとっては、本当に大したことない怪我なんだろう…けど。
包帯が…痛々しい。
俺が傍にいれば、絶対に怪我なんかさせなかったのに。
痛くないはずはないだろうし、傷痕が残ったりしたら…。
そんな俺の本気の心配を、どうして過保護だって笑えるの…?
伝わらない想いに、ギリギリと拳を握る。
そうしていると、医務室の中に平門さんが入ってきた。
一気にかなえちゃんに緊張が走ったのがわかった。
気づいたのはたぶん、俺だけ。
「具合はどうだ。」
「あ…怪我は大したことはありません。任務は成功しましたが…すみません。」
「いや、いい。ヴァルガとの遭遇はあの場合イレギュラーな事態だった。にもかかわらずよくやったな。」
「あ…はい…ありがとう、ございます…。」
「あとはツクモに引き継がせるから、お前は休め。」
「え…だ、大丈夫です。やれます!!これくらい…。」
「無理するな。それに、向こうがこれで警戒体勢に入った可能性もある中、面が割れたかもしれないお前が入るのは危険だ。…ツクモ、できるな。」
「ええ、任せて、平門。かなえも。」
「…………………」
それから…
ツクモちゃんを伴って去っていく平門さんを見るかなえちゃんの目は…酷く傷ついていた。
そっか…かなえちゃんはこの恋に、とっくに傷をいっぱい負っていたんだね。
わかるよ、その気持ち
……ごめん
君を傷つけない、俺が守るって決めていたのに、俺はまた君に怪我をさせた。
とても、とても痛い見えない怪我を。
「…ね、かなえちゃん。せっかくだから休もうよ。それで、ゆっくり怪我を治せばいいよ。」
「…う、ん…。」
「このあと、俺…空いてるんだ。よかったら…気晴らし、しない?」
君のその傷、俺が癒してあげる。