(狂愛)壊れた鏡がうつすものは
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前はここまでじゃなかったんだけどな。
そりゃ仲間だし危ない任務なら誰にでも心配の目は向けるけど、好きだと気づいてからかなえちゃんに対しては余計に過保護になった自覚はある。
それが平門さんにとっては面白く見えちゃうのかもしれないけど、俺は俺で真剣なんだ。
一緒の任務なら守ってあげられるけど、別々のときはそうはいかないから。
だからって一緒にしてくださいなんて言えないし…と悶々と頭を悩ませたのは一度や二度じゃない。
でも思いきって言ってみようかとも何度も思った。
今回も、そう…と、湿布の貼られた右手に視線を落とす。
こんなもので済むなら、湿布や絆創膏レベルなら、艇に戻ってきたらいくらでも貼ってあげられるけど…。
どんな任務を命じられたんだろう。
危なそうなら俺も名乗り出てみようか…と口を開きかけたとき、用は済んだのか平門さんは出口の方へ顔を向けた。
…行ってくれるならくれるで、それでいい。
二人きりのお茶会が再開できるから。ああでも任務の内容も気になるし…と、またもやもやしていると、かなえちゃんのほうが先に声を発した。
「あ、あの…平門さんも…一緒にお茶、どうですか?」
「……………」
放たれた言葉は、正直欲しくない言葉だった。
しかも、明らかに緊張が混じっているのを感じたから。
3人でお茶をするお誘いに、なんで緊張する必要があるの?って疑問が首をもたげる。
けどかなえちゃんのそんな様子は気づいているのかいないのか、平門さんはなんてことなしにそれを断った。
「いや、俺はまだやることがあるからいい。」
「あ…そうですか。大変ですね…。」
ほら、やっぱり。
あからさまにがっかりとトーンを落とした声。
かなえちゃん、解りやすすぎるよ。
それじゃ平門さんに気づかれちゃうよ?
けど、それでも平門さんはそんな彼女を歯牙にもかけずに颯爽と出ていった。
……あー…知りたくなかった。
平門さん、ずるいよ。
彼女に想われていながら、そんなつれなくするなんてさ。
いや…つれても困るんだけど。とにかくずるいよ。
「…忙しそうだったね。」
「うん…。そうだね。」
かなえちゃんは寂しさを残しながら、また笑顔を作った。
ねぇ、いつから?いつからそうなの?
全然知らなかった。いつかは振り向いてくれるよねとか、俺を少しは意識してくれているんだよね?とか、勘違いも甚だしい。
どんなに楽しそうにしてくれても、所詮はただの仲間で、そこに恋の感情はなかった。
振り向いて欲しくて頑張った結果、俺はただ居心地のいい位置に立っただけ?
そんな自分が恥ずかしくてどっかに埋まってしまいたい。
そして…途端に、さっき触られていたその右手すら憎らしく思い始めた自分に気づいた。
かなえちゃんに気がないなら、気安く触らないでよ。
そんなことするから、かなえちゃんは平門さんを意識してさっき顔を赤くしていたんじゃん。
皮肉にも誰かを好きになる気持ちは痛いほどわかるから、その時のかなえちゃんの気持ちもわかってしまう。
だから、かなえちゃんも無意識にさりげなく俺を意識させてたってことだよね。
好きな人に構われたら、嬉しくて意識するに決まってる。
かなえちゃんもずるい。
俺に気がないのに、平門さんに向かって俺を優しいって言うとか。
勘違いするに決まってる。
例えそれが意図的じゃなく本音だったとしても。
「與儀、どうかした?」
「…ううん、なんでもないよ。」
…なんて、内心ぐちゃぐちゃなのに、笑ってしまえる自分。
けど、うまく笑えてる自信がない。
さっきのかなえちゃんみたいにがっかりした部分が出ちゃっていたら、そこをどうしたのとツッコまれても困るから、そのままソファに戻ってお茶を一気に飲んだ。
実際、やたらと喉が乾いた。
かなえちゃんは何か言いたげだったけど、俺にならって同じくソファに静かに腰を下ろした。
もしかしたら、俺が戻ってきて邪魔だったかな、とか。
そんなこと思うような子じゃない、と思うけど。
「…ねぇ與儀、平門さんって…」
「……え…?」
「あ…ううん、なんでもない。毎日忙しそうなのに、顔に出なくてすごいよね。」
「…そう、だね。」
やっぱり君は、平門さんみたいな人が好きなんだね。
それじゃあ俺を選ばないよねー…って、自虐して胸にグサリと刺さる。
ねぇ、俺に何を聞く気だった?
平門さんの好みの女の子のタイプ?
それとも平門さんが君をどう思っているか?
今、好きな人がいるかどうか?
知らない…知りたくもない。
けど例えば好みのタイプがかなえちゃんと正反対のタイプだったら?
いつもの俺なら、教えない。
だって傷つくのを見たくないから。
好きな人の好みが自分とかけ離れてるなんて知りたくないもんね。
だけどもし…教えたらどうなるだろう…?
傷ついて、平門さんのことを諦める?
なら俺は、教えるべきか教えないべきか…今ならどうするだろう…って
思っちゃうくらい自分が意地悪くなってる。
いっそ傷ついて諦めてくれたらいいのに…って。
なに考えてんだろー…俺…。
彼女を傷つけたくない、守りたいはずなのに。
平門さんに関しては傷つくことを望むとかどうかしてる。
けど俺だって…
…君の好きな人が俺とは正反対のタイプだったなんて、知りたくなかったよ。
それでも諦めきれない。
だからきっと、君も平門さんの好きなタイプが自分とは正反対だとしても、諦めきれずに足掻くんだろうね。
もし平門さんのタイプがかなえちゃんみたいな女の子だったら?
頑張れば手が届く位置にいたら?
嫌だよそんなの、絶対。
誰より彼女に近いのは俺だって思っていたのに…。
足掻いて足掻いて傷ついて、疲れて俺のところにきてくれたなら、うんと優しく大事にするのにな。
かなえちゃんは、俺を平門さんの代わりにすらしないんだろうなぁ…優しい子だから。
「…ねぇかなえちゃん。例えば、すごく好きな人がいたとして、その人は自分とは正反対のタイプが好きだとしたら、どうする?」
「え?」
突然の、脈絡もなく始まった恋愛話にかなえちゃんはまぶたをパチパチさせて俺を見た。
そりゃそうだよね。だって俺たち、今までこんないわゆる恋バナなんてしたことはなかったんだから。
「どうしたの?いきなり。」
そして当然のごとく理由を聞かれるのも想定内で。
あらかじめ用意していたように、なるべく自然に笑って見せた。
「研案塔の看護師さんたちがね、そんなことを話していたから。…ほら、うちは平門さんとか朔さんとかいるし。」
思い当たるふしがあったのか、かなえちゃんは簡単に納得した。
お二人は研案塔でもモテるから、行くとたまに二人のことを聞かれる。
闘員ならその経験は何度かあるだろう…し。
女の子は切り替えが早いっていうから、もしかしたらかなえちゃんも失恋確定したらちょっと泣いてすぐ立ち直るかもしれないし、ってわずかに期待した。
そうだなぁ…と、かなえちゃんは思案しているのか視線を空に泳がせる。
…今、誰のことを考えてる?
「うーん…ショックだけど、だからって諦めるのは早いよねぇ…。」
「早い?」
「タイプは違うかもしれないけど、実際に好きになる人は別だってよく聞くじゃない?」
「そっ、そう!?」
「な、なに?もしかして與儀、そんな子がいるの?」
思いがけない答えについ反応した。
…鋭い。俺の気持ちには鈍いのに…。
「ち、違うよ…俺の話じゃなくて…。」
「そう?…もしいるなら言ってね。協力するよ。」
「……………う、ん。」
これも優しさには違いないのに、この親切は俺には正直…痛い。
好きなタイプは実際に好きになる人とは別…なら…かなえちゃんだって、俺を好きになってくれたっていいのに。
俺が誰かを好きなことを、君は成立させるために協力してくれるんだね…。
残念ながら、彼女は切り替えが早いタイプではないみたい…だ。
足掻いて足掻いて傷ついて、でも足掻く…そこも、俺と同じなんだね。
それから、恋バナは自然と流して別の話題に移っていった。
そりゃ仲間だし危ない任務なら誰にでも心配の目は向けるけど、好きだと気づいてからかなえちゃんに対しては余計に過保護になった自覚はある。
それが平門さんにとっては面白く見えちゃうのかもしれないけど、俺は俺で真剣なんだ。
一緒の任務なら守ってあげられるけど、別々のときはそうはいかないから。
だからって一緒にしてくださいなんて言えないし…と悶々と頭を悩ませたのは一度や二度じゃない。
でも思いきって言ってみようかとも何度も思った。
今回も、そう…と、湿布の貼られた右手に視線を落とす。
こんなもので済むなら、湿布や絆創膏レベルなら、艇に戻ってきたらいくらでも貼ってあげられるけど…。
どんな任務を命じられたんだろう。
危なそうなら俺も名乗り出てみようか…と口を開きかけたとき、用は済んだのか平門さんは出口の方へ顔を向けた。
…行ってくれるならくれるで、それでいい。
二人きりのお茶会が再開できるから。ああでも任務の内容も気になるし…と、またもやもやしていると、かなえちゃんのほうが先に声を発した。
「あ、あの…平門さんも…一緒にお茶、どうですか?」
「……………」
放たれた言葉は、正直欲しくない言葉だった。
しかも、明らかに緊張が混じっているのを感じたから。
3人でお茶をするお誘いに、なんで緊張する必要があるの?って疑問が首をもたげる。
けどかなえちゃんのそんな様子は気づいているのかいないのか、平門さんはなんてことなしにそれを断った。
「いや、俺はまだやることがあるからいい。」
「あ…そうですか。大変ですね…。」
ほら、やっぱり。
あからさまにがっかりとトーンを落とした声。
かなえちゃん、解りやすすぎるよ。
それじゃ平門さんに気づかれちゃうよ?
けど、それでも平門さんはそんな彼女を歯牙にもかけずに颯爽と出ていった。
……あー…知りたくなかった。
平門さん、ずるいよ。
彼女に想われていながら、そんなつれなくするなんてさ。
いや…つれても困るんだけど。とにかくずるいよ。
「…忙しそうだったね。」
「うん…。そうだね。」
かなえちゃんは寂しさを残しながら、また笑顔を作った。
ねぇ、いつから?いつからそうなの?
全然知らなかった。いつかは振り向いてくれるよねとか、俺を少しは意識してくれているんだよね?とか、勘違いも甚だしい。
どんなに楽しそうにしてくれても、所詮はただの仲間で、そこに恋の感情はなかった。
振り向いて欲しくて頑張った結果、俺はただ居心地のいい位置に立っただけ?
そんな自分が恥ずかしくてどっかに埋まってしまいたい。
そして…途端に、さっき触られていたその右手すら憎らしく思い始めた自分に気づいた。
かなえちゃんに気がないなら、気安く触らないでよ。
そんなことするから、かなえちゃんは平門さんを意識してさっき顔を赤くしていたんじゃん。
皮肉にも誰かを好きになる気持ちは痛いほどわかるから、その時のかなえちゃんの気持ちもわかってしまう。
だから、かなえちゃんも無意識にさりげなく俺を意識させてたってことだよね。
好きな人に構われたら、嬉しくて意識するに決まってる。
かなえちゃんもずるい。
俺に気がないのに、平門さんに向かって俺を優しいって言うとか。
勘違いするに決まってる。
例えそれが意図的じゃなく本音だったとしても。
「與儀、どうかした?」
「…ううん、なんでもないよ。」
…なんて、内心ぐちゃぐちゃなのに、笑ってしまえる自分。
けど、うまく笑えてる自信がない。
さっきのかなえちゃんみたいにがっかりした部分が出ちゃっていたら、そこをどうしたのとツッコまれても困るから、そのままソファに戻ってお茶を一気に飲んだ。
実際、やたらと喉が乾いた。
かなえちゃんは何か言いたげだったけど、俺にならって同じくソファに静かに腰を下ろした。
もしかしたら、俺が戻ってきて邪魔だったかな、とか。
そんなこと思うような子じゃない、と思うけど。
「…ねぇ與儀、平門さんって…」
「……え…?」
「あ…ううん、なんでもない。毎日忙しそうなのに、顔に出なくてすごいよね。」
「…そう、だね。」
やっぱり君は、平門さんみたいな人が好きなんだね。
それじゃあ俺を選ばないよねー…って、自虐して胸にグサリと刺さる。
ねぇ、俺に何を聞く気だった?
平門さんの好みの女の子のタイプ?
それとも平門さんが君をどう思っているか?
今、好きな人がいるかどうか?
知らない…知りたくもない。
けど例えば好みのタイプがかなえちゃんと正反対のタイプだったら?
いつもの俺なら、教えない。
だって傷つくのを見たくないから。
好きな人の好みが自分とかけ離れてるなんて知りたくないもんね。
だけどもし…教えたらどうなるだろう…?
傷ついて、平門さんのことを諦める?
なら俺は、教えるべきか教えないべきか…今ならどうするだろう…って
思っちゃうくらい自分が意地悪くなってる。
いっそ傷ついて諦めてくれたらいいのに…って。
なに考えてんだろー…俺…。
彼女を傷つけたくない、守りたいはずなのに。
平門さんに関しては傷つくことを望むとかどうかしてる。
けど俺だって…
…君の好きな人が俺とは正反対のタイプだったなんて、知りたくなかったよ。
それでも諦めきれない。
だからきっと、君も平門さんの好きなタイプが自分とは正反対だとしても、諦めきれずに足掻くんだろうね。
もし平門さんのタイプがかなえちゃんみたいな女の子だったら?
頑張れば手が届く位置にいたら?
嫌だよそんなの、絶対。
誰より彼女に近いのは俺だって思っていたのに…。
足掻いて足掻いて傷ついて、疲れて俺のところにきてくれたなら、うんと優しく大事にするのにな。
かなえちゃんは、俺を平門さんの代わりにすらしないんだろうなぁ…優しい子だから。
「…ねぇかなえちゃん。例えば、すごく好きな人がいたとして、その人は自分とは正反対のタイプが好きだとしたら、どうする?」
「え?」
突然の、脈絡もなく始まった恋愛話にかなえちゃんはまぶたをパチパチさせて俺を見た。
そりゃそうだよね。だって俺たち、今までこんないわゆる恋バナなんてしたことはなかったんだから。
「どうしたの?いきなり。」
そして当然のごとく理由を聞かれるのも想定内で。
あらかじめ用意していたように、なるべく自然に笑って見せた。
「研案塔の看護師さんたちがね、そんなことを話していたから。…ほら、うちは平門さんとか朔さんとかいるし。」
思い当たるふしがあったのか、かなえちゃんは簡単に納得した。
お二人は研案塔でもモテるから、行くとたまに二人のことを聞かれる。
闘員ならその経験は何度かあるだろう…し。
女の子は切り替えが早いっていうから、もしかしたらかなえちゃんも失恋確定したらちょっと泣いてすぐ立ち直るかもしれないし、ってわずかに期待した。
そうだなぁ…と、かなえちゃんは思案しているのか視線を空に泳がせる。
…今、誰のことを考えてる?
「うーん…ショックだけど、だからって諦めるのは早いよねぇ…。」
「早い?」
「タイプは違うかもしれないけど、実際に好きになる人は別だってよく聞くじゃない?」
「そっ、そう!?」
「な、なに?もしかして與儀、そんな子がいるの?」
思いがけない答えについ反応した。
…鋭い。俺の気持ちには鈍いのに…。
「ち、違うよ…俺の話じゃなくて…。」
「そう?…もしいるなら言ってね。協力するよ。」
「……………う、ん。」
これも優しさには違いないのに、この親切は俺には正直…痛い。
好きなタイプは実際に好きになる人とは別…なら…かなえちゃんだって、俺を好きになってくれたっていいのに。
俺が誰かを好きなことを、君は成立させるために協力してくれるんだね…。
残念ながら、彼女は切り替えが早いタイプではないみたい…だ。
足掻いて足掻いて傷ついて、でも足掻く…そこも、俺と同じなんだね。
それから、恋バナは自然と流して別の話題に移っていった。