(狂愛)壊れた鏡がうつすものは
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「與儀……?」
大好き、大好きだよ。
いつも一番近くにいるのは、俺だって思っていたのに…どうして気づいてくれないんだろう。
どうしたら伝わるのかなぁ?
やっぱり言わなきゃ伝わらないものなのかな。
「…大好き」
一生懸命、勇気を振り絞ってみたけど、かなえちゃんは表情を強張らせてひくりと喉を鳴らした。
どうして?頑張って告白したのになぁ。
「大好きだよ。俺と、ずっと一緒にいてくれるよね?」
絶対に、誰にも渡したりなんか、しないからね。
「ただいまぁ」
「あ、お帰りかなえちゃん!」
艇のリビングルームでくつろいでいると、任務から帰ってきたらしいかなえちゃんが疲労の色を浮かべて入ってきた。
たしか今日は葬送だったよね。
クタクタに疲れた顔をしてソファにドサッと座り込むのを見て、よっぽど今日は大変だったんだなぁと思った。
「おつかれさま。お茶、飲む?」
「あ、ありがとう。じゃあもらおうかな。」
背もたれにくったりと体を預けながらも、かなえちゃんはニコッと笑ってくれた。
大好きな笑顔が見られて今日はラッキーかも、なんてウキウキしながら、ティーポットに手を伸ばす。
もしかしたら今日はこのまま二人でお茶できるかも。
誰も来なければいいなぁ…って思っちゃダメかな。
でもでも、ちょっとくらい思ったっていいよね。
二人きりでいたい…なんて。
こんな気持ち、かなえちゃんには言えないけど。
言わなくても伝わればいいのにな。
そう思いつつ、羊が持ってきてくれたカップに紅茶を注いで、そっと差し出した。
「はい、どーぞ。砂糖とミルクは?」
「ありがとー。どっちももらうよ。」
うん、知ってるよ。
角砂糖ならいつも2つ、ちょっと疲れているときは3つ…だよね。
案の定、かなえちゃんはシュガーポットから角砂糖をつまんで、3つ入れた。
やっぱり疲れてるんだな。
そしてカップに口をつけてコクン…と飲み込むのを見て、ハッと気づいた。
右の手首に、紫色のアザが出来てる。
「かなえちゃん、手首どうしたの!?」
「え??…あ、アザになってる。いつぶつけたかな。」
「痛そうな色してるよ。大丈夫?俺、医務室で湿布をもらってくるよ。」
「え?いいよいいよこれくらい!あまり痛くないし。」
「ダメだよ、こういうのはちゃんとしなきゃ!待ってて!」
「あ…、ちょ、與儀!?」
切り傷とかではないただのアザだけど、怪我なことに変わりはないから。
医務室に連れていくまではしなくても大丈夫だと思うから、俺は湿布をもらいに急いで走った。
葬送で負傷するなんて、全く怪我をしない可能性なんかないこの世界。
危険と隣り合わせの仕事をしているんだから、仲間で助け合いは大事でしょ?
「…まぁ、俺の場合…ただの仲間とは思ってないんだけど…。」
大事な子だから、なるべく怪我はしてほしくないけど。
仕方ないよね、そういう仕事なんだから…。
だから、なにかあった時は俺が守ってあげなきゃって思うんだ。
やっぱり女の子だし。
たかがアザかもしれないけど、女の子の肌にあんなアザは痛々しい。
気休めにしかならないけど、なにもしないよりはいいからと湿布を持って急いで戻った。
すると、中から何か話している声が聞こえたから、思わず隠れてそっと覗きこんだ。
(あ…平門さんだ。)
リビングにいつ来たのか、平門さんがかなえちゃんと何か話している。
仕事の話かもしれないし、ただの雑談かもしれないけど…そりゃ、上司と部下だし話くらいするけど。
俺は、二人が話しているのがなんだか複雑な気持ちで…ギュッと胸のあたりを掴んだ。
平門さんはカッコいい。
俺なんか遠く及ばないくらい…仕事も、男としても完璧で。
俺は平門さんに憧れて尊敬もしてる。
だからこそ、そんな人が好きな女の子と話をするのを見ると穏やかでいられない。
こんなの、ただのヤキモチだってわかっているけど。
かなえちゃんは楽しそうに笑いながら喋ってる。
その笑顔は、誰にでも分け隔てなく向けられるもので…俺だけのものじゃない。
だ、だけど、普段いつも傍にいるのは俺だから、仲の良さなら俺のほうが上のはず!!
平門さんは上司だから…きっと、俺より遠い場所にいるはず。
でもやっぱり……耐えられなくて、いっそ割って入ろうかと思った。
その時、平門さんは何かに気づいた様子で軽く屈んだ。
そしてかなえちゃんの右手をとってジッと見つめてる。
平門さんも、アザに気づいたんだ。
まるで検分するように見て、触ってる。
それを…
「……っ……」
見て、しまった。
腕を触ってる平門さんを見るかなえちゃんの顔が、赤くなっているのを。
すごく恥ずかしそうに、だけどどこか嬉しそうにも見える。
それを見た途端、心臓が凍りついた。
(かなえちゃんは…平門さんが、好きなの…?)
ずっと近くにいたのに、どうして気づかなかったんだろう。
ただ傍にいられるだけで嬉しい、そんなことを思っている間に、彼女は別の人を見ていたなんて。
……いやいや、まだ決めるには早い。
ほら、純粋で男慣れしていないから、単に触られて恥ずかしかっただけかもしれないし!!うん、そうだよ。
だって、かなえちゃんと一番仲良しなのは、俺だもんね。
そのうちきっと、俺の気持ちにも気づいてくれる…はず。
そしたらきっと振り向いてくれるよね。
だから…お願いだから…
あまり、かなえちゃんに触らないで…っ!!!
「おっ…お待たせっ!!」
少し声がひっくり返っちゃったけど、もういたたまれなくて無理矢理リビングルームに乱入した。
つかつかと歩み寄ると、かなえちゃんはサッと右手を引いて平門さんから離した。
触られていたのを見られたくなかったのかな。
ほら、やっぱり俺に誤解されたくないから…つまり、少しは俺を意識してくれているんだよね?
「は…早かった、ね?」
「だって、怪我は早く治療したほうがいいでしょ。ほら、手を出して。」
「もう、大丈夫なのに…。」
かなえちゃんは苦笑いしながら、俺に右手を差し出した。
痛々しいアザに湿布を貼る様子を見て、平門さんも笑った。
「過保護だなお前は。」
「よ…用心するに越したことはありませんから。」
確かにただのアザに湿布は大袈裟…かもしれないと思ったらちょっと顔が熱くなったけど、好きな女の子が怪我をしたら、アザだろうと小さな擦り傷だろうと心配に決まってる。
なにかしてあげたい気持ちにくらいはなるよ。
「まぁ見たところ、骨には異常がなさそうだったから良かったな。ただの内出血だ。」
「あ…はい。ありがとうございます。」
そんなの…俺だってわかってるよ。
だから、異常があったらすぐにでも医務室に連れていってる。
必要ないと思ったから湿布を取りに行ったんだ。
良かったな、と…そう言った平門さんに、かなえちゃんがどことなく嬉しそうに見えたのは…気のせい…かな。
そういえば、俺に触られても顔を赤くしないんだね。
「……………」
嫌な考えばかりがグルグル回る。
ダメダメ、余計なことは考えない。
好きだから余計に勘ぐりたくなるだけ…だよ。
滅多にない平門さんの優しい労いが嬉しいだけ、そう。
俺だって、平門さんにたまに褒められれば嬉しくもなる。同じだよ。
だって、俺たち同じ立場だもんね。
上司に褒められたら嬉しいよね。
だから、労いをもらって喜んでもおかしくない…それだけ。
「はい、できた。」
「ありがとう、與儀。」
「う、うん……。」
ほら…俺だって、かなえちゃんのこのたった一言で、こんなに嬉しくなれるんだから。
かすかに触れた手に、ドキドキと心臓が高鳴る。
「保護者も大変だな。」
「與儀は優しいんですよ。」
(…………っ)
ねぇ、ほら
かなえちゃんだって、ちょっとくらいは俺のこと…って、思っちゃうでしょ。
もう少し頑張れば、手が届くかもしれないって思ってしまう…でしょ?
「どちらかというと、俺にはかなえが保護者に見えるがな。與儀のほうがなついている子供みたいだ。」
「ど!どういう意味ですか!?」
一生懸命好きで追いかけているのを、よりによってなついている子供って!!
かなえちゃんは俺を見て吹き出した。
え?つまり当てはまるってこと!?…ひどいよ、もう!!
「與儀みたいな子供なら大歓迎で欲しいですけどね。」
「かなえちゃんまで!ひどい!!」
俺はかなえちゃんの子供じゃなくて恋人になりたいのに!!
…って言いそうになって、それは抑えた。
今はまだ言うときじゃないから。
ちゃんとタイミングを見て、それなりのセッティングもして告白するんだ。
ずっと二人の大事な思い出になるように、素敵なシチュエーションで。
それに、楽しそうに笑う笑顔を見たら、今のこの楽しい時間は壊したらダメだって思うから。
「おっ!俺のほうが年上なんですから!かなえちゃんを守るのは俺のほうです!!」
「ますます背伸びしている子供だな。」
「平門さんーっ!!」
「あははっ…もう、平門さんもやめてくださいよー!」
「笑わないでよー!!」
ムキになる俺だけど、ついにこらえきれず笑い出すかなえちゃんの姿には、嬉しかった。
君が俺で楽しく感じるならそれが一番嬉しいから。
だけどね、今はまだもろいこの関係を、早く固めてしまいたいってはやる気持ちもあるんだよ。
けどきっと君は振り向いてくれる…そう、信じてた。
だってこんなに楽しそうにしてくれるんだもん。
ひとしきり笑ったあとで、平門さんはあらたまってかなえちゃんを見た。
「…さて。ではかなえ、さっきの話だが…。」
「はい、わかりました。」
「なに?なんの話?」
「新しい任務の話だよ。與儀が医務室に行ってくれている時に、言われたの。」
「…そうなんだ。」
任務の話、か。
じゃあ、またかなえちゃんは危ないことをするのかな。
仕事だから仕方ないけど、やっぱり心配になるのは過保護なのかなぁ。
今度はアザじゃ済まないかもしれない。
任務のたびにいちいち気にしていたら身がもたないけど、毎日毎日無事に戻ってくることを願ってしまうのは…好きだから。
大好き、大好きだよ。
いつも一番近くにいるのは、俺だって思っていたのに…どうして気づいてくれないんだろう。
どうしたら伝わるのかなぁ?
やっぱり言わなきゃ伝わらないものなのかな。
「…大好き」
一生懸命、勇気を振り絞ってみたけど、かなえちゃんは表情を強張らせてひくりと喉を鳴らした。
どうして?頑張って告白したのになぁ。
「大好きだよ。俺と、ずっと一緒にいてくれるよね?」
絶対に、誰にも渡したりなんか、しないからね。
「ただいまぁ」
「あ、お帰りかなえちゃん!」
艇のリビングルームでくつろいでいると、任務から帰ってきたらしいかなえちゃんが疲労の色を浮かべて入ってきた。
たしか今日は葬送だったよね。
クタクタに疲れた顔をしてソファにドサッと座り込むのを見て、よっぽど今日は大変だったんだなぁと思った。
「おつかれさま。お茶、飲む?」
「あ、ありがとう。じゃあもらおうかな。」
背もたれにくったりと体を預けながらも、かなえちゃんはニコッと笑ってくれた。
大好きな笑顔が見られて今日はラッキーかも、なんてウキウキしながら、ティーポットに手を伸ばす。
もしかしたら今日はこのまま二人でお茶できるかも。
誰も来なければいいなぁ…って思っちゃダメかな。
でもでも、ちょっとくらい思ったっていいよね。
二人きりでいたい…なんて。
こんな気持ち、かなえちゃんには言えないけど。
言わなくても伝わればいいのにな。
そう思いつつ、羊が持ってきてくれたカップに紅茶を注いで、そっと差し出した。
「はい、どーぞ。砂糖とミルクは?」
「ありがとー。どっちももらうよ。」
うん、知ってるよ。
角砂糖ならいつも2つ、ちょっと疲れているときは3つ…だよね。
案の定、かなえちゃんはシュガーポットから角砂糖をつまんで、3つ入れた。
やっぱり疲れてるんだな。
そしてカップに口をつけてコクン…と飲み込むのを見て、ハッと気づいた。
右の手首に、紫色のアザが出来てる。
「かなえちゃん、手首どうしたの!?」
「え??…あ、アザになってる。いつぶつけたかな。」
「痛そうな色してるよ。大丈夫?俺、医務室で湿布をもらってくるよ。」
「え?いいよいいよこれくらい!あまり痛くないし。」
「ダメだよ、こういうのはちゃんとしなきゃ!待ってて!」
「あ…、ちょ、與儀!?」
切り傷とかではないただのアザだけど、怪我なことに変わりはないから。
医務室に連れていくまではしなくても大丈夫だと思うから、俺は湿布をもらいに急いで走った。
葬送で負傷するなんて、全く怪我をしない可能性なんかないこの世界。
危険と隣り合わせの仕事をしているんだから、仲間で助け合いは大事でしょ?
「…まぁ、俺の場合…ただの仲間とは思ってないんだけど…。」
大事な子だから、なるべく怪我はしてほしくないけど。
仕方ないよね、そういう仕事なんだから…。
だから、なにかあった時は俺が守ってあげなきゃって思うんだ。
やっぱり女の子だし。
たかがアザかもしれないけど、女の子の肌にあんなアザは痛々しい。
気休めにしかならないけど、なにもしないよりはいいからと湿布を持って急いで戻った。
すると、中から何か話している声が聞こえたから、思わず隠れてそっと覗きこんだ。
(あ…平門さんだ。)
リビングにいつ来たのか、平門さんがかなえちゃんと何か話している。
仕事の話かもしれないし、ただの雑談かもしれないけど…そりゃ、上司と部下だし話くらいするけど。
俺は、二人が話しているのがなんだか複雑な気持ちで…ギュッと胸のあたりを掴んだ。
平門さんはカッコいい。
俺なんか遠く及ばないくらい…仕事も、男としても完璧で。
俺は平門さんに憧れて尊敬もしてる。
だからこそ、そんな人が好きな女の子と話をするのを見ると穏やかでいられない。
こんなの、ただのヤキモチだってわかっているけど。
かなえちゃんは楽しそうに笑いながら喋ってる。
その笑顔は、誰にでも分け隔てなく向けられるもので…俺だけのものじゃない。
だ、だけど、普段いつも傍にいるのは俺だから、仲の良さなら俺のほうが上のはず!!
平門さんは上司だから…きっと、俺より遠い場所にいるはず。
でもやっぱり……耐えられなくて、いっそ割って入ろうかと思った。
その時、平門さんは何かに気づいた様子で軽く屈んだ。
そしてかなえちゃんの右手をとってジッと見つめてる。
平門さんも、アザに気づいたんだ。
まるで検分するように見て、触ってる。
それを…
「……っ……」
見て、しまった。
腕を触ってる平門さんを見るかなえちゃんの顔が、赤くなっているのを。
すごく恥ずかしそうに、だけどどこか嬉しそうにも見える。
それを見た途端、心臓が凍りついた。
(かなえちゃんは…平門さんが、好きなの…?)
ずっと近くにいたのに、どうして気づかなかったんだろう。
ただ傍にいられるだけで嬉しい、そんなことを思っている間に、彼女は別の人を見ていたなんて。
……いやいや、まだ決めるには早い。
ほら、純粋で男慣れしていないから、単に触られて恥ずかしかっただけかもしれないし!!うん、そうだよ。
だって、かなえちゃんと一番仲良しなのは、俺だもんね。
そのうちきっと、俺の気持ちにも気づいてくれる…はず。
そしたらきっと振り向いてくれるよね。
だから…お願いだから…
あまり、かなえちゃんに触らないで…っ!!!
「おっ…お待たせっ!!」
少し声がひっくり返っちゃったけど、もういたたまれなくて無理矢理リビングルームに乱入した。
つかつかと歩み寄ると、かなえちゃんはサッと右手を引いて平門さんから離した。
触られていたのを見られたくなかったのかな。
ほら、やっぱり俺に誤解されたくないから…つまり、少しは俺を意識してくれているんだよね?
「は…早かった、ね?」
「だって、怪我は早く治療したほうがいいでしょ。ほら、手を出して。」
「もう、大丈夫なのに…。」
かなえちゃんは苦笑いしながら、俺に右手を差し出した。
痛々しいアザに湿布を貼る様子を見て、平門さんも笑った。
「過保護だなお前は。」
「よ…用心するに越したことはありませんから。」
確かにただのアザに湿布は大袈裟…かもしれないと思ったらちょっと顔が熱くなったけど、好きな女の子が怪我をしたら、アザだろうと小さな擦り傷だろうと心配に決まってる。
なにかしてあげたい気持ちにくらいはなるよ。
「まぁ見たところ、骨には異常がなさそうだったから良かったな。ただの内出血だ。」
「あ…はい。ありがとうございます。」
そんなの…俺だってわかってるよ。
だから、異常があったらすぐにでも医務室に連れていってる。
必要ないと思ったから湿布を取りに行ったんだ。
良かったな、と…そう言った平門さんに、かなえちゃんがどことなく嬉しそうに見えたのは…気のせい…かな。
そういえば、俺に触られても顔を赤くしないんだね。
「……………」
嫌な考えばかりがグルグル回る。
ダメダメ、余計なことは考えない。
好きだから余計に勘ぐりたくなるだけ…だよ。
滅多にない平門さんの優しい労いが嬉しいだけ、そう。
俺だって、平門さんにたまに褒められれば嬉しくもなる。同じだよ。
だって、俺たち同じ立場だもんね。
上司に褒められたら嬉しいよね。
だから、労いをもらって喜んでもおかしくない…それだけ。
「はい、できた。」
「ありがとう、與儀。」
「う、うん……。」
ほら…俺だって、かなえちゃんのこのたった一言で、こんなに嬉しくなれるんだから。
かすかに触れた手に、ドキドキと心臓が高鳴る。
「保護者も大変だな。」
「與儀は優しいんですよ。」
(…………っ)
ねぇ、ほら
かなえちゃんだって、ちょっとくらいは俺のこと…って、思っちゃうでしょ。
もう少し頑張れば、手が届くかもしれないって思ってしまう…でしょ?
「どちらかというと、俺にはかなえが保護者に見えるがな。與儀のほうがなついている子供みたいだ。」
「ど!どういう意味ですか!?」
一生懸命好きで追いかけているのを、よりによってなついている子供って!!
かなえちゃんは俺を見て吹き出した。
え?つまり当てはまるってこと!?…ひどいよ、もう!!
「與儀みたいな子供なら大歓迎で欲しいですけどね。」
「かなえちゃんまで!ひどい!!」
俺はかなえちゃんの子供じゃなくて恋人になりたいのに!!
…って言いそうになって、それは抑えた。
今はまだ言うときじゃないから。
ちゃんとタイミングを見て、それなりのセッティングもして告白するんだ。
ずっと二人の大事な思い出になるように、素敵なシチュエーションで。
それに、楽しそうに笑う笑顔を見たら、今のこの楽しい時間は壊したらダメだって思うから。
「おっ!俺のほうが年上なんですから!かなえちゃんを守るのは俺のほうです!!」
「ますます背伸びしている子供だな。」
「平門さんーっ!!」
「あははっ…もう、平門さんもやめてくださいよー!」
「笑わないでよー!!」
ムキになる俺だけど、ついにこらえきれず笑い出すかなえちゃんの姿には、嬉しかった。
君が俺で楽しく感じるならそれが一番嬉しいから。
だけどね、今はまだもろいこの関係を、早く固めてしまいたいってはやる気持ちもあるんだよ。
けどきっと君は振り向いてくれる…そう、信じてた。
だってこんなに楽しそうにしてくれるんだもん。
ひとしきり笑ったあとで、平門さんはあらたまってかなえちゃんを見た。
「…さて。ではかなえ、さっきの話だが…。」
「はい、わかりました。」
「なに?なんの話?」
「新しい任務の話だよ。與儀が医務室に行ってくれている時に、言われたの。」
「…そうなんだ。」
任務の話、か。
じゃあ、またかなえちゃんは危ないことをするのかな。
仕事だから仕方ないけど、やっぱり心配になるのは過保護なのかなぁ。
今度はアザじゃ済まないかもしれない。
任務のたびにいちいち気にしていたら身がもたないけど、毎日毎日無事に戻ってくることを願ってしまうのは…好きだから。