(切甘)I'm Home
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「お前たちは…ラブシーンには時と場合を考えろ。」
「す、すみません…。」
まぁでも、と平門さんはルアちゃんに視線を移した。
「その様子じゃ大丈夫そうだな。」
「はい、お陰さまで。」
気づくとルアちゃんの発作的な症状はすっかり治まって、顔もいつもの肌色に戻っていた。
目の前で自分のために負傷した俺を見たショックで…というのなら、咄嗟にだったけど飛び出してよかった。
守ることができてよかった。
ルアちゃんも無事だったし……俺も無事で……大切な恋人を取り戻すことができた。
結局は戦闘のあと念のためにまた研案塔で診察になったけど、結果は異常なし。
ほんの一部だったけど記憶障害の疑いがある中で無理に戦闘に参加した事に関しては、燭先生からしっかりお咎めは受けていたけど…ね。
長年の戦闘経験の勘や動きの鈍り、最悪は腕輪の使い方や技の出し方に記憶面で支障が出ていたらどうするつもりだ…と。
そこは最終的に出動の判断をした平門さんにも怒りの矛先は向いたけど、お二人のやりとりはまぁいつも通りというわけで。
復帰後にすぐ大規模な事件が発生してしまったのは予想外のイレギュラーだったから、あの場合は少しでも人命救助のために戦力を出すことは致し方ないことだったと、先生も最後には納得してくれたけどね。
「えっと…もう、抱き締めていい、ん…だよ、ね?」
「う…うん。ていうか…私から抱きついちゃう。」
「わっ…」
部屋に戻ってから
本当に記憶が戻ったのか、また拒絶されないかとまだ怖々する俺に、ルアちゃんは恥ずかしさや照れを出しながら抱きついてくれた。
くっつきたがりの君のクセ。
小さな動物みたいに俺の胸に頬をすりよせるのが、いつもの君の仕草。
俺の大好きなそのクセを直に感じて、やっと戻ってきてくれたことを実感できたんだ。
また明日の朝から、寝顔と起き抜けの君を見ることができるんだね。
「ごめんね…與儀は恋人じゃないとか、いっぱい酷いことを言ったね。」
「本当だよ~…そこだけ忘れるなんて、なんで!?って思った。でも、もういいよ。どれだけ今までが幸せだったのかがよくわかったから。」
「私も。よりによって一番大切な記憶を無くしていたなんてショックだよ。」
それは…俺のことが一番大切だって言ってくれているんだよ、ね?
恥ずかしい、これは。照れちゃうよ。
「おかげで、もう與儀が恋人じゃない状況が私にとってどれだけからっぽなのかがよくわかったよ。」
「本当?」
「うん。任務は変わらずできるけど、與儀への気持ちがない自分自身が何か空白になったみたいだった。…大好きよ、與儀。」
「おっ…俺も…大好き。」
好きな人に想われることが…
好きな人にはっきり好きだと言えることが、こんなに幸せなことだったんだ。
「いやー、でもまさか與儀が…私に忘れられたショックとはいえ、あんな強引な手段に出るとは……。」
「うっ…言わないで…それはもう忘れてよ!!」
暴走して恋人に無理強いするなんて…やっぱり最低だよ…!と、自己嫌悪。
なのに、ルアちゃんはそれを責めるどころか、どこか嬉しそうに見える。
俺はあれで嫌われたんじゃないかって本気で泣いたのに。
「ふふふ、ごめん。責めてるんじゃないよ。嬉しかったの。」
「…無理矢理、しようとしたのに?」
「それだけ私を取り戻そうと必死だったってことでしょ?」
「ま、まぁ…そうだけど……。」
そう取ってくれるなら、まあありがたくはある、かな。
実際、必死だったしね。
「必死な與儀、悪くなかったよ。むしろ好きかも。これなら記憶を失くした甲斐があったかもね。」
「もうやめてよ…二度とあんな思いはごめんだからね!!」
「はーい、ごめんなさい。」
謝りながらもまだ嬉しそうにニコニコしている、可愛い恋人を抱き締めながら
本当に記憶が戻ってくれてよかった…と心底ほっとした。
抱き締めたら、抱き締め返してくれる。
このぬくもりが今あることを、本当に幸せに思う。
絶対二度とごめんだけど
もしもまたルアちゃんが記憶を失くすことがあったら…俺はまた、ルアちゃんを取り戻すために必死になって
いっそ周りが見ていられないくらいに悪あがきもするんだろう。
それだけルアちゃんが大切だから。
その日、艇に戻ってから俺たちはずっと抱き合って、次の日の朝目覚めるまで、ただくっついて過ごした。
ルアちゃんが俺に言ってくれた、あの言葉を繰り返し思い出しながら。
俺はいっぱいいっぱい、今までを取り戻すかのように、ルアちゃんを愛した。
――…I'm home
(ただいま)
おわり
2015.01.16
こんにちは、大変お待たせいたしまして、申し訳ありません!!
リクエストの、
「重症になったヒロインが與儀との記憶だけを失う」
でした。
ヒロインちゃんにけっこうひどいセリフを言わせてしまいましたが、確かに(本人にとっては)ただの仲間だと思っていた人に、実は恋人なんだと言われたらそりゃもう驚きますよね。
忘れられたほうもショックでしょうし…
というわけで、実は私も好きな記憶喪失もの。
いつかまた別作品で書いてみたいものです。
リクエストありがとうございました!