(切甘)片恋のparadox
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「與儀にはバレちゃったかぁ…。」
「どうしたの?」
「あの…大丈夫。ちょっとね、今日葬送したヴァルガが…ある事情があって可哀想で、悲しくなっただけ。」
「それって…」
「あ、でも!もう大丈夫!本当に!!」
…全然、大丈夫に見えないよ?
無理して笑わないで。
せっかくの可愛い笑顔が、そんなに悲しく見えるなんて嫌だよ…。
リイナちゃんは、もっと素敵に笑える子なのに。
「本当に大丈夫?話して楽になれるなら聞くよ。」
「大丈夫だから!ね?」
あくまで笑顔は崩さないまま、リイナちゃんは平然を装った。
そっか。
つらかったら話を聞いて少しでも助けに…って思ったけど。
気を使わせたくないから、無理をしているんだね。
それを強引に聞き出そうとするのはよくない。
でも…それって…。
「うん、じゃあ何かあったら、いつでも言ってね。」
「ありがとう。じゃあまた後でね。」
「うん…。」
それって
今現在、リイナちゃんが俺に気を使っているってことで…。
「…………」
小さな背中がどんどん遠くなっていくのを見届けてから、俺も早足で部屋に入ってドアを閉めて、そのまま寄りかかって床に座り込んだ。
気を使うのは人として当たり前だけど…。
リイナちゃんにとって俺は、所詮それまでの存在?
つらいことを素直に打ち明けられるほど近い相手じゃない。
優しいから気を使ったんだと思う。
だけど…でも…。
「俺は、どうしたいんだよ…。」
自分で自分のやりたいことがわからない。
簡単に言えばリイナちゃんが好きで、できることなら親密になりたい。
心身寄せあって笑えるようになりたい。
でも、それは叶わない。
それに気づいちゃったから、忘れるって決めたのに。
胸の中を占めているのは…
「どうしたら俺を好きになってくれるのかな…。」
どうしたら、君の特別になれますか?
心はリイナちゃんに近づきたがってる。
頭はダメだって叫んでいるのに。
俺は、どっちの言うことに従えばいいんだろう。
君がつらいとき、一番に話を聞いて、そっと抱き締めてあげるような存在に…なりたい…。
「好きだよ…。」
ただ、リイナちゃんからの"好き"が欲しい。
それがどんなに難しいことかはわかっているけど…。
「好き…だよ…。大好き…。」
かすれて小さくこぼれてくる声が、俺にしか聴こえない範囲でそっと消える。
止まらない痛みが、目から溢れてぽたぽた流れていく。
目頭が熱くて止まらなくて、呼吸もろくにできなくなった。
好きな人に好かれて恋人同士になるって、実は奇跡みたいな確率なんじゃないかって…。
「なんで好きになっちゃったんだろ…。」
好きにならなければよかった。
ただ仲間でいられたならよかったのに。
最初のフワフワした感じのままいたかった。
「…ぅ…っ…」
どんなに考えてもどうしようもない。
俺は……俺は、ただ君が好き。
ただそれだけなのに。
もらったお土産を箱のまま抱き締めて、ただずっと一人で泣くしかできなかった。
大好きなリイナちゃんの笑顔は、俺のものじゃない。
それでも…会いたくて。
一緒にいたくて……。
やっぱり俺は、会いに行ってしまうんだろうね。
「あの…リイナちゃん。」
「うん?」
夕飯になって、話しかけたリイナちゃんは少し明るい笑顔に戻ってきていた。
苦しくても、やっぱりまた好きって気持ちになる。
「お土産ありがとう。」
「ううん、たいしたものじゃなくてごめんね。」
「そんなことないよっ!大事にするから!」
「おおげさだよ~。」
……ううん
俺にとっては、大切な宝物だよ。
きっとこれから、俺はずっとあれを大切に持っているんだろうな。
「今度お返しするね。」
「え?いいよ!本当にたいしたものじゃないから!……あの、ね、與儀。」
「なに~?」
「さっき、ありがとう。」
「え?」
俺、なにかしたかな。
リイナちゃんはそう言うと、柔らかく笑った。
俺の大好きな笑顔。
そこにはさっきみたいな寂しげな雰囲気はなくて、どこか吹っ切れたように爽やか。
「輪の人間らしくないことで落ち込んじゃって、情けないから誰にも言わずにいようって思っていたんだけど…。本当は、誰かに気づいて欲しかったのかも。」
「リイナちゃん…。」
「だから、與儀に気づいてもらえて嬉しかったよ。ありがとう。おかげで立ち直ったからもう大丈夫!」
「そっ…か…。」
俺、ちょっとはリイナちゃんの助けになれた…?
恋人じゃなくても、少しでもリイナちゃんに近くなれたのかな。
だったら嬉しい……。
心から笑っていて欲しいから。
「明日からまた頑張るね。」
「うん、俺も頑張るっ。」
「一緒に頑張ろうね。」
「一緒…うん、一緒にね!」
これからも一緒にいられるから…
苦しくても、切なくても、きっと忘れるなんてできない。
大好きって気持ちを胸に抱えて…少しでも、リイナちゃんの支えになっていきたい。
(…好きだよ。)
気持ちは、言葉にしないと伝わらない。
わかってはいるけど、言葉にはできない代わりに、何度も何度もそう心の中で呟いた。
本音を言っちゃえば…
少しでも傍にいたい。
俺を好きになってくれないかな。
できたら恋人同士になりたい。
自然に手を繋いで、笑い合えるようになりたい。
だけど言えないから…。
「なにかあったら、遠慮しないで俺には話してね。」
「うん、ありがとう。」
俺は…
君が笑顔でいられるようになりたい。
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