(切甘)片恋のparadox
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「…與儀…?」
「―え?な、なに?」
―ドキッ
「どうしたの?ボーッとして。」
「え?俺、ボーッとしてた?」
「うん…。疲れた?」
―ドクン、ドクン…
「ううん、そんなことはないよ。」
「なら、いいんだけど。」
心配そうに俺を見上げていたリイナちゃんの表情が、やわらかい笑顔に変わった。
俺より小さな、可愛い女の子。
すっぽりと隠せちゃいそうなくらい小さい。
「與儀、行こうか。」
―ドキッ…
「あ…う、うん。」
名前を呼ばれた
目が合った…ただ、それだけなのに。
他の人でも当たり前にあることなのに。
君に呼ばれただけで、こんなに自分の名前が愛しくなる。
この名前でよかったとすら思う。
遅れて歩き出した俺の、すぐ前を歩く小柄な背中と揺れる髪。
それをジッと見つめて…気づいた。
心が勝手に思った。
抱き締めたい……って。
俺、リイナちゃんのことが好きなんだ。
仲間じゃない。男として、一人の女の子であるリイナちゃんを。恋愛対象として見てる。
ただの仲間なんかじゃない。
(恋愛、って…うわぁ…。)
自覚した途端に恥ずかしい!!!
いつから?わからない…。
わからないけど、いつの間にかこうなってた。
恋してるなんてなんだか変な感じがする。
この気持ちが恋なら、なんてくすぐったくて恥ずかしくて、腕輪なんかなくても飛べちゃいそうな、フワフワ感なんだろう。
まさか仲間に恋をするなんて…。
ダメだよね、こんなの。
だって俺たちは輪なのに…。
同じ艇にいて、好意をもつなんて。
でも、一度気づいたものはなかなか消えなくて…だから、いいよね。
少しくらい…こっそり、好きでいるだけなら。
仕事さえちゃんとしていれば。
気づかれなければいいんだ。
それなら迷惑もかけないから。
せめて傍にいて、一緒に笑えたらそれでいい。
その時は本気でそう思って、新しい新鮮な気持ちに素直にときめいた。
人を好きになるって、こんなに嬉しいんだね…。
だって、なんだか周りが違って見える。
目に入るもの全部、リイナちゃんに繋げたくなる。
キレイなものを一緒に観たい。
美味しいものを食べたら、リイナちゃんにも食べて欲しかったな、どんな反応をするんだろう?とか。
俺、バカみたいにリイナちゃんのことばかり考えてる。
近くにいれば、つい目で追って見つめちゃうよ。俺、危ない奴?ってくらいに。
みんな一緒にご飯を食べているときとか…
嬉しそうにしているから、あれは好きな食べ物なんだなとか。
ちょっと眉毛がピクッと動いたから、あれは嫌いなんだな…とか。
新しいリイナちゃんを見つけては一人勝手に恥ずかしがって、無理矢理にご飯をかき込んでむせて笑われた。
「ゲホッ!」
「與儀大丈夫!?」
君の前じゃうまくできない。
かっこつけたいのに。
それでも、優しく背中をさすってくれた小さな手が嬉しくて、また笑顔になった。
その嬉しい気持ちの裏側に…
気づきたくなかったもうひとつの感情も、ジワジワと溢れ出しつつあったけど。
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