(甘夢)してあげないよ。
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「フンフーン♪」
任務先の小さい子たちからクッキーをもらっちゃって、俺は気分よく艇の通路を歩いた。
ニャンペローナにプレゼント!!ってたくさんの子供たちが、小さな手を差し出してくれたんだ。
色んな形のが、透明な袋いっぱいに詰まってリボンで可愛くラッピングされてる。
こういうのってさ、すごく嬉しいよね。
あの子たちの笑顔と、その気持ちがさ。
子供の笑顔ってすごく癒される。
ちょっと形がゆがんでいるのとか、一生懸命に作ってくれたんだなぁ、っていう手作りのぬくもりを感じるんだ。
あ~…嬉しくてニヤニヤする!!
この気持ち、誰かわかち合ってくれないかな?
俺一人でいるより、わかり合いたい。
そう思ってウキウキしていた時、ふと頭に一人の顔が浮かんだ。
うん、彼女ならきっと聞いてくれるよね?
笑って聞いて、頷いてくれるはず。
そう考えるともう早く話したくて仕方がない。
帰ってきているかな
部屋に行ってみようかな…。
思えば思うほど会って話をしたくて、心弾ませて歩いていた時、ずっと前のほうから何か羊の声が聞こえた。
「緊急時以外の飛行は禁止メエ!!」
「………え?なに?…え。」
「わぁ!?どいてーっ!!」
段々近づいてくる声に反射的に立ち止まった俺に、すごい勢いでヒロコちゃんが飛んできたのが見えて、あ!!と思った時には止まるに止まれなかったヒロコちゃんは、思いきり俺にぶつかって後ろに転んだ。
「うわぁっ!?」
俺も驚いたのと、完全に気を抜いていた矢先の衝突で後ろによろけた。
「いた…っ」
「だっ、大丈夫?ヒロコちゃん!」
転んだことで、多分打ったらしいお尻や腰の辺りを撫でているのを、ヒョイッと屈んで覗きこんだ。
するとヒロコちゃんは驚いた顔をして、座ったままザッ!!と数センチ後ろに下がった…早っ!!
「ごめ…っ!與儀、ごめんっ!大丈夫!?」
「あ…俺はよろけただけだから平気だけど。」
「うう…っごめんっ!」
大丈夫だよって言ったんだけど、ヒロコちゃんはすごく慌てて泣きそうな顔をしてひたすらごめんを繰り返してる。
うーん…確かにぶつかったのはちょっと痛かったけど、転んだヒロコちゃんのほうが痛いよね?
通路で飛ぶなんて、よほど急な用事があったのかな。
「本当に俺は大丈夫だよ。何か急いでた?動けなかったら代わりに行こうか。」
「え!?あ、大丈夫!あの、與儀が戻ったって聞ぃ…あ!!えっと…!!」
「え?」
「なんでもないっ!!!」
腕をぶんぶん振って、ヒロコちゃんは必死に真っ赤になった顔を下に向けて俺からそらした。
俺が帰ってきたから、飛ぶほど急いで来たの?
そう…ヒロコちゃんは、きっと俺のことが好きなんだと思う。
予想の範囲なんだけど、ほぼ間違いないんじゃないかな。
こんなにわかりやすい態度で、本人は隠してるつもりなのが可愛くて…だけどね、なかなか告白してはくれないんだよね。
怖かったり恥ずかしかったりって、きっとヒロコちゃんの中には色んな葛藤があったりするんだろうけど…だから、ごめん。
つい、その気持ちを確かめたくなっちゃうんだ。
「本当に?大丈夫だから代わりに行くよ?」
「っ!!!」
わざとグイッと顔を近づけて見つめると、ヒロコちゃんはまた真っ赤になった。
可愛いなぁ、これだけ反応してくれちゃうと。
からかいが過ぎるのは可哀想な気もするけど、ついやりたくなるんだよね。
俺のことを好きでいてくれているんだなぁって、心の中で勝手にニヤニヤする。
「大丈夫…大丈夫だから。あの…ね。」
「うん?」
「お…かえり…って、言いたく、て……。」
「え?俺に?」
「そうだよ…。」
………うわぁぁあ!!
メッチャ可愛い!!!
そのために、わざわざ飛んで来てくれたの?
ヤバイ、さすがにグッときた…俺も赤くなりそうなくらいに、ドキドキしてる。
ヒロコちゃんも、頑張って勇気を出してみたのが伝わるくらいに必死な顔をしてる。
ねえ、知らないフリって卑怯かな?
知らないフリをして、反応を見ちゃうとか。ズルいかな。
「ありがと~。俺もヒロコちゃんに言ってもらえて嬉しいな。」
「ほ…本当?」
「本当ほんと!!」
嬉しいのは事実だよ?
それを言った俺に笑ったヒロコちゃんの恥ずかしそうな笑顔も、可愛いと思う。
でもね…そろそろ…。
「ところでね、ヒロコちゃん。ちょっと言いづらいんだけど…。」
「なに?」
「…下着、見えそう。」
「えっ!?」
転んだからスカートが捲れて、太ももが見えていてギリギリ下着が隠れてる。
ヒロコちゃんも、バッ!!と下を向いて両手で隠した。
そ…の光景は、さすがに俺も恥ずかしかったりして。
でも、恥ずかしがったりなんてできなくて…俺もまた、つい照れ隠しをしてしまう。
「ぷっ…あははっ!嘘だよ~!!」
「え!?嘘!?」
本当は嘘じゃないけど、わざとらしく笑った俺の下手な演技、気づかないでね。
目のやり場に困ってドキドキしていたなんて。
「もおお!與儀のバカっ!!」
「あははっ!さっきのビックリした顔!!面白かった!!あ~可愛い!」
「かわ…っもう!!!」
「ごめんごめん~。」
ヒロコちゃんとこうしているのが好きなんだ。
一緒にいて楽しいんだよね。
「もういい、私、部屋に帰るっ」
「え?もう?」
「與儀、意地悪なんだもん。」
「え~、ひどいよ、意地悪なんかしていないのに。…はい、手。」
「……………」
床に座っているヒロコちゃんに手を伸ばすと、ヒロコちゃんは目を見開いて固まった。
立つのを手伝おうと思ったんだけど、まさかこれも恥ずかしい?
そっか、これも恥ずかしいんだ?
「どうしたの?立たないの?手、貸して。」
「…え?あ…いいよいいよ!!大丈夫、自分で立てるから!!」
「いいから。ね?ほら。」
「でも…やっぱりいいから!」
「動けないなら部屋まで抱っこして…」
「わぁあ!いい!いらない!!」
ごめんね
恥ずかしいのを知っていて、わざとこういうことをして。
その反応のひとつひとつに、俺への気持ちを感じて嬉しくて、つい。
俺に触るのは恥ずかしいかな。
だけど俺は、ヒロコちゃんに触りたいんだよ、ね。
「あ…ありがと…っ。」
ヒロコちゃんは抱っこされるくらいならと観念して、そっと手を伸ばすと俺の手を静かに握った。
それを少しだけ力を入れて引っ張ると、ゆっくり立ち上がった。
小さくて柔らかい手だなぁ。
温かくてちょっと指先が冷たい。
冷えているなら温めてあげたい。
抱っこでもよかったんだけどな。
「手、冷たいね。」
「え?ごめ…」
「ん?そういう意味じゃないよ。今帰ってきた俺より冷たいんだね。」
「ちょっと冷えたかな…。も、大丈夫だから離して…。」
「どうしよっかな。」
「もう…っ!」
本当は離したくなかった小さな手がスッと離れていって、途端に寂しい気持ちになる。
そんなふうに思っているの、知らないよね。
…いつも何か話す話題はないかなって探して、見つけるとついからかう材料にしちゃうんだ。
おもしろい反応もしてくれるし。
だから、まだ話をしていたいんだけど、本当に部屋に戻っちゃうのかな。
なにかないかな、話題……うーん……。
「…あ、そうだ。ヒロコちゃん、一緒にクッキーを食べない?」
「クッキー??」
突然の話題変換にハテナを出すヒロコちゃんの後ろから、ちょうど花礫くんと无ちゃんも歩いてきたから手を振って声をかけた。
「花礫くーん!无ちゃーんっ!クッキーがあるんだけど、食べない?」
「あ、與儀おかえりーっ!」
「ただいま!」
「…クッキー?別にいらねえけど。」
「そんなこと言わないでさ!任務先でもらって…って…ああっ!?」
「ソレ、めちゃくちゃ割れてるけど。」
「ああああっ!!??」
花礫くんに指差された袋の中のクッキーは、何枚かに割れたり、粉々に砕けたり…してた。
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