(ギャグ)與儀さん、ストップ!!
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ーーガタッ…ドーンッ
「え!?」
就寝時間までの少しの余暇、ソファに腰かけて読書をしていたら、思いきりドアに何かがぶつかる音がした。
羊さんが荷物でも崩した?
いやぁ、まさかね…。
ちょっと待ってみたけど、謝りに入って来ないし。
「え…なに?やだな…。」
艇内だし危険はないと思うけど、だからこそ原因がわからない得体の知れない物音は怖い。
羊が戦っているような雰囲気もないし、何なの…?
ちょっとビクビクしながら、そぉ…っとドアノブに手をかけて開いてみた。
―――ズルズルッ
「ひゃあっ!!??」
その瞬間、何か重いものが引きずられる音がして、その何かが私に覆いかぶさってきた。
「なっなに!?なに!?うわぁっ!!!」
いきなり襲ってきたその重いものを支えることが出来なくて、私は思いきり後ろに倒れて尻餅をついた。
「いったぁ…っっ」
私と、その何かのぶんの重みがかかって、尾てい骨が折れたんじゃないかってくらいに激しくお尻が痛い。
その痛みに悶えていると、まだ私にのしかかったままの何かが唸った。
「う~……」
……………あれ?
「……與儀?」
よくよく見ると、私にしっかりのしかかっているのは金髪長身の男。
そして今の声を、私はよぉぉく知ってる。
「與儀!?ちょっと!!具合でも悪いの!?」
こんなにぐったり倒れてくるなんて、よっぽど体調を悪くしたのかな。
それで私のところまで助けを求めにきたの?
そう思うとすごく心配になって、座って與儀を支えたまま、背中をそっと撫でたら與儀はゆっくり体を起こした。
……顔が真っ赤で、笑ってる。
「えへへ、リイナちゃんただいまぁ~~~。だいすき!!ちゅ~!!」
「え……。」
ヘラヘラ笑いながら私のおでこやほっぺたにチュッチュッとし始めたから、さっきまで緊張感溢れる心配をしていただけに、一気に意味がわからなく思考が停止した。
それが、ある真実を見出だしてからまた一気に思考が回転を始めた。
「………酒臭い。」
與儀からお酒のニオイがぷんぷんする。
そういえば、いま平門さんのところに朔さんが来ているんだっけ…さては付き合わされたね?
「與儀、酔ってる?」
「酔ってないよぉ~。あ、でもリイナちゃんの魅力には酔ってるかも~。言っちゃった…恥ずかしいなぁ~。」
「…完全に出来上がっていますね。」
與儀のおでこが真っ赤になってる。
さっきドアにぶつかったのはこれか…。
事態に気づいたらしい羊さんが、何匹かゾロゾロと入ってきて私たちを囲んだ。
「與儀から大量のアルコール反応があるメエ。」
「歩行困難と判断するメエ。」
「部屋に運ぶメエ。」
「あ…じゃあお願い…」
「え~~っ!?ヤダヤダ!!ここにいるぅっ!!」
「…はい?」
部屋に連行されると聞いた與儀が、いきなり子供みたいに駄々をこね始めた。
…與儀って、酔うと幼児化するの?
「與儀、もう部屋で休んだほうがいいよ…。」
「ヤダ!!リイナちゃんといるっ!!リイナちゃんに会いたくて来たのっ!!」
……本当に幼児化してる。
私に抱きついたまま、イヤイヤと首を振って剥がれそうにもない。
これ、羊に連行されても脱走して倒れかねない。
「わかったわかった…。羊さん、ここで休ませるから大丈夫だよ。」
「わかったメエ。何かあったら呼ぶメエ。」
羊たちはササッと退散して、ドアがパタンと閉じられた。
その瞬間、與儀はまた笑顔になった。
「へへ、リイナちゃんと一緒~。」
「あのね、一緒にいるのはいいから、とりあえずはどいてくれないかな…さっき打ったお尻がまだ痛いの。」
「………えっ!!??」
まだジンジンしている腰の辺りを撫でさすると、與儀は驚いてパニックを起こした。
「あ、ご、ごめんっ!俺がさっき転ばせたからだよねっ!?ごめんっ!!本当にごめんっ!」
「本当だよ、もう…。」
って、何気なく言ったはずのセリフで、與儀は真っ青になって本気で涙を浮かべた。
「あ、あ、ごめ…っごめんなさ…俺、どうしよ…怒らないでっ!!あ、怒っていい、怒っていいから嫌わないでっ!!ぐすっ…ぐすっ…俺、リイナちゃんに嫌われたら生きていけないいーっ捨てないでーっ!!」
うわぁぁんっ!!
と與儀は本気泣きして鼻をすすりながら抱きついた。
え!?今度は泣き上戸!?
いつもの泣き虫の何倍も酷くなってない!?
私の肩に顔を埋めて、まだ「嫌わないで!捨てないでぇ!!」って号泣してる。
涙で肩が濡れて冷たくなってきました…。
「お願いだから俺を捨てないでええっ!!!嫌いにならないでぇっ!!」
「な、ならない、ならない。嫌いにはならないから…。」
「わ…別れるって言わない…?捨てない?」
「言わないから…これで嫌いになって別れたら、私どれだけ鬼畜で冷酷非情なの…。」
背中を撫でさすって落ち着かせようと、なるべく優しく声をかけてあげた。
與儀は涙に濡れた瞳で私をジッと見つめて、息を吐いた。
「よかったぁ…リイナちゃんに捨てられたら生きていけない…。」
「それ、さっきも聞いたよ…。大丈夫、捨てない捨てない。」
ショボン…と、本当に捨てられた動物みたいになってる…。
お酒は本性が出るって言うけど、これは與儀の本性なの?
まさか常に私に捨てられないか怯えてるわけじゃないよね…?
「…あ、痛いとこ大丈夫?ごめんね?さすってあげるから出して?」
「お尻を出せと!?」
與儀にしてみれば気遣いなんだろうけど、立派なセクハラだよ!!
「いいよ、大丈夫だよ…。」
いくら恋人でも、お尻を撫で回されるとか嫌だよ…。
でもそれに納得しないのか、與儀はムッとした顔をした。
「痛いの痛いのとんでけってしてあげようと思ったのにぃ!ぷんっ!!」
「今度は怒り上戸ですか…しかも可愛い怒り方ですね。」
これが、ついさっき捨てないでってすがり泣いていた人と同一人物ですか…?
さすがに付き合い長い私でも、ちょっと疲れてきたよ…。
膨らませてるほっぺを掴んでぷしゅーと空気を抜いてあげながら、與儀の腕を引いた。