(甘)想い愛と助け愛
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ヒュッと街に降り、携帯に送られてきたデータを元に目的地へ向かう。
なるべく、與儀や花礫くんや无ちゃんは、このままゆっくりと遊ばせてあげたいから。
膝が痛いなんて言っていられない。
それこそ闘いをしたら、もっと酷い怪我をすることだってあるんだから。
闘員としてのプライド、スイッチが、その痛みに耐える力をくれる。
(あれか…)
街の住宅街の路地に、ヴァルガとみられる姿があった。
住宅街…下手に暴れて家を壊したり、住人が出てこないといいのだけど。
その前に、やる。
両手を前で掲げ、武器を出すと、私はヴァルガの前に降りた。
「国家防衛機関、輪。第貳號艇闘員、リイナ。参ります。あなたを…葬送します。」
いざ、参る。
平和の礎となるために。
そんなに強い敵ではなかったけど、終わらせて艇に戻る頃…私は体力をごっそり奪われてフラフラになっていた。
「はぁ…」
一気にスイッチが切れた感じで、部屋までもたず通路でへたりこんだ。
戦闘中は忘れていたのに、落ち着いた今ごろになって、膝の傷がズキズキと疼き出す。
それくらい任務に集中していたってことなんだろうけど。
いたた…これは、さすがにきついな……どうしよう。
「大丈夫メェ?」
私の顔色を覗き込んでくる羊の頭を、そっと撫でた。
「疲労が見えるメェ。痛いメェ?」
「うん、休むから大丈夫。」
たぶん膝の怪我がなかったら、もっと早く終わらせられたのに。
任務は使命だからいいけど、ヴァントナームは行けないし、散々だ。
でも、もしもみんなと一緒にいるときに呼び出しが入ったら、きっと與儀も行くと言ってきかなかっただろうから…良かったのかもね。
そう、一人笑いながら頑張って立ち上がって部屋に向かおうとしたとき、向こうから與儀が走ってきた。
「リイナちゃん!!」
「あれ?先に戻っていたんだ?ただいまぁ。」
「ただいまじゃないよ…なんで連絡をくれなかったの!?」
「え?援護が必要なほどの強者じゃなかったし。」
與儀は私の前で息を切らし、盛大なため息をついた。
「もぉ…俺、知らなくていっぱい遊んじゃって…言ってくれたら代わりに行ったのに。」
「だって、與儀なら絶対にそう言うと思ったから。」
「え?」
「せっかく三人で楽しんでいるんだから。私一人、手が空いていたんだから、それでいいでしょ?」
「リイナちゃぁん…」
ああ、情けない顔をしちゃって。
本当に大丈夫だったもの。新たな怪我もしなかったし。
「も、ほんっっとにイイコ!!なんでそんなにイイコなの!!??」
「えー……」
なんで、と言われましても。
いつも與儀をいじめてるし…いい子、とは、言えないんじゃないかな…?
「だって、夫婦は助け合いでしょー?與儀が息抜きをしているときは、私が頑張るの。」
「ふ…ふぅふ!!?」
「違うの…?」
私の言葉に、與儀は予想どおりに固まった。
「…違わ…ない、か…うん…そうだね…夫婦…そうだね…」
そうなんだよね…とわたわたしている與儀が、可愛かった。
私も、さっき一人でわたわたしたクチだけど。
「でも…それなら、大事な奥さんが一人で闘っているのに、自分だけ遊ぶのは…なおさら嫌だよ…」
「私は大事な夫が息抜きをしているときくらい、ゆっくりしてほしいの。」
「お…っと…」
ブワァ…と真っ赤になる與儀に近づいて、抱きついた。
それを與儀は、自然に腕を伸ばして受け止めてくれる。
うん、これでいい。
「お出迎えしてくれたら、それでいい。」
「リイナちゃん…っ」
これでいい。
これが私の幸せ。
「おかえり、って言って?」
「うん…おかえり。今日も無事に戻ってきてくれたね。」
「うん!!ただいま。」
そ…っと両肩に手が添えられて…これは、通路なのにラブラブモード!?と思って身構えた。
待って…羊もいるのに。
ダメだよ……でも……嬉しい…キスくらいは…してもいいかな…?なんて。
一人もじもじしていたら、與儀が優しい声を出した。
どうしても期待してしまう。
「じゃあ…リイナちゃん。」
「な、に?」
「…行こうか。」
「え??」
そして私は、いきなり抱きかかえられて羞恥に耐えながら通路を進んだ。
「ふぁ…っちょっ…!!優しくしてってば…!!」
「してるでしょー?ほら暴れないで!!剥がすよ。」
ベリベリッ
「ぃっ…ったぁああ!!!」
膝の絆創膏をひっぺがされて、お腹の底から叫んだ。
「ほらぁ、やっぱりまた出血してる。絆創膏が真っ赤になっていたもん。」
「うう…っ」
せっかく葬送して無傷で帰還したのに、こんなところに伏兵が潜んでいたとは。
「アザが濃くなってる。本当に強者じゃなかったの?」
「余裕、余裕…ぅわぁあ!!!触らないでっ!!」
なんで今日に限って療師が乗っていないの…!!!
再び消毒薬を染み込ませたガーゼで傷を押さえられて、ブワァっと冷や汗が出た。
嫌な鳥肌が立つ。
さっきのラブラブモードへの期待を裏切られたこともあり、うっかり期待しちゃった恥ずかしさと怒りで余計にふつふつと感情が荒ぶった。
「與儀、覚えていなさいよーっ!!」
「なんでっ!?治療しているのに逆恨み!?」
「八つ当たり!!」
「なおさら酷いよー!!」
だって…だって痛いんだもぉぉん!!!
「與儀が怪我をしたときは…私が熱心に治療してあげるよ……」
「え…遠慮…します…」
ようやく治療が終わり、新しい絆創膏がペタリと貼られるころには、私は息も絶え絶え。
二度と階段ではしゃがない。
試しに曲げ伸ばしをしてみるけど、やっぱり痛い。
「よく我慢しました。イイコ、イイコ。」
大きな手で撫で撫で…と頭を撫でられて、また照れた。
花礫くんは怒るだろうけど、私は嫌いじゃない。
むしろ大好き。もっとしてください。
「そんなイイコには…はい、お土産。」
「うん?え、本当に買ってきてくれたの?」
「約束でしょ?」
差し出されたのは、細長い箱。
ヴァントナームだし、てっきりニャンペローナものだと思っていたけど…違った。
白いその箱を開けると、中にはさらに黒い箱…それも高そうな箱が入っていて。
なんだろう?甘いお菓子でもなさそう。
すごく高級感のある雰囲気。
それを、ドキドキしながらそっと開けてみた。
「う…わぁ…」
中には、蝶の飾りのついたネックレスが納められていた。
羽の部分にキラキラした石がちりばめられていて、安くはないのは見てすぐにわかった。
これって多分…ダイヤ…?
お土産って軽く言える代物じゃない。
「こんな…こんなの、もらっていいの?」
「ジュエリー屋さんでね、見つけたとき絶対にリイナちゃんに似合うと思って。つけてほしくて買っちゃった。気に入ってくれた?せっかくだからヴァントナームっぽいものを、って考えたんだけど…。」
「キレイ…ありがとう……すごくキレイ…。」
與儀はニャンペローナのお店が一番の目当てだったのだろうし、自分の買い物だってあったでしょ。
しかもあの二人を連れた中で…こんなに素敵なジュエリーが売っているようなお店なんて、絶対にたまたま見つけて入ったとかじゃないはず。
わざわざ寄って探してくれたのかな。そう考えると。
どうしよう、泣きそう。
嬉しい……。
與儀の気持ちが…。
膝の痛みも任務の疲れも、もうそんなものはどうだっていい。
お土産を買ってきてちょうだいなんて、本当に軽い気持ちで言っただけで…與儀が二人と楽しく息抜きしてくれたら、それで良いと思っていたのに。
こんなに嬉しいこと、ある?
「絶対に大事にする…!!!」
「良かった、気に入ってもらえた。」
気に入らないわけがない。
こんなに気持ちのこもったプレゼント。
きっと、悩んで悩んで選んでくれたんだよね?
ギュッ…て箱を抱き締めた。
「あー…どうせなら、抱き締めるならこっち!」
腕をとられて、與儀に回された。
うん、そうだね。抱き締めるなら、與儀だね。
「ありがとう…」
「うん、その笑顔が見たかったんだ。行けなくて落ち込んでいたからね。」
気にしていてくれたんだ。
やっぱり與儀は、最高の旦那様だ。
嬉しくてネコみたいにすりすりと甘えてみたら、くすぐったそうな声が聞こえてきた。
「俺、汗臭くない?」
「ううん?安心する。與儀の匂い…。」
「…………」
「與儀?」
急に黙りこんだ與儀に声をかけてみたけど、いっそう強くギュウッと抱き締められて、顔は見られなかった。
「もぅ本当、俺の奥さんは可愛いねぇ。」
幸せ…って感じの気持ちが読み取れるような声のトーンに、胸がキュンとした。
声と同じく與儀の表情も、いまとろけているのかな?なんて思っちゃうくらい。
「バカップルじゃなくて、バカ夫婦だね…?」
「いいね、バカ夫婦!!」
照れ隠しの私の言葉にすら、ちゃんと笑って答えてくれる。
本当に、この人と出会えて良かった。
この人と結婚できて、良かった。
愛してる
この言葉をはっきり具現化できるのは
與儀、あなただけなんだよ。
おわり
2013.09.26