(甘)想い愛と助け愛
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「よっ…與儀…やめてっ!!」
「暴れないでよ、すぐ終わるから!」
じたばたと逃げようとする私を、與儀は腕を掴み逃げられないようにした。
私が暴れるたびに、ベッドがギシッギシッと軋む。
いつもの與儀にはない、遠慮なしな行動と痛みに涙が出る。
ついには足まで押さえつけられ、私は與儀にされるがまま。
なんでこんなことに……怖い、お願いだから、やめて……。
無理矢理、乱暴にしないで…っ。
「やだ…っ!ぅあ…痛い…っ!優しくしてよぉ…っグリグリしないで…っ」
「充分優しくしてるよ…ほら、ね…?あと少しだから…イイコだから。」
「うぅ…ああ…っ嫌ぁ…っ!!」
「ああ…ほら、暴れるからまた血が出てきちゃった…」
見ると本当に血がにじんできて、傷口が広がっている。
白い布に、赤が広がっていく。
「仕方ないなぁ…もう。……ん、もう1回出すよ」
「えっ、嘘…や、もう嫌あっ!!」
「ちゃんとおとなしくしないと…ほら、また痛くなるよ…?中で、できちゃうよ?」
「できちゃ、やだっ…!!!もう出さないで…っ!!出すの嫌っ!!!!」
「だ~め、ほら、出すよ。覚悟して?」
「いやっ……っ!!!!やだぁあ!!!!」
水で無理矢理に、膝の傷口についた砂を落とされ、
そこにまた與儀は、ボトルからピュッと出した消毒液を、ちょんちょん…と塗っていくので痛みが激しく走った。
「うう…あああっ」
久しぶりに下りたヴァントナームの都会っぷりにはしゃいだ結果がこれ。
階段で見事すっ転んで、思いきり膝を擦りむき…医務室で治療中。
ようやく地獄の治療が終わり、大きめの絆創膏をペタリと貼られ、これはしばらくミニは履けないなぁ…と思った。
せいぜいレギンスかな…。
「はいできた。ふぅ……あんなに暴れるとは思わなかった…。」
「痛いの、嫌いなの…うう…っ。」
「確かに俺も嫌いだけどさ…。痛そうな傷口だったね……大丈夫…?」
「大丈夫じゃないけど…治療ありがとう…。」
「うん、ちゃんとしないと、傷の中で膿ができちゃうからね。」
まだズキズキしています。
階段でうつ伏せに転んで、ズザザッて滑り落ちたから…ね。
でも怪我をしたのが膝だけで良かった。
ああ考えただけで火が出そうよ。
人前であんな…派手な転びかた…。
「膝で済んでよかったと思っておくよ…。」
「そうだねぇ。骨折とか、なくてよかったよ。」
與儀のホッとした笑顔に、私もようやく安堵した。
上りじゃなく、下りで落ちるほうが危なかったかも。
そう思おう…うん。
「ヴァントナーム、もっと見て回りたかったなぁ。」
両足を軽く振ってふてくされると、腰掛けているベッドがギシッと軋んだ。
……うぁっ!痛いっ。これは無理かも…。
足を押さえて悶える私を見て、與儀は苦笑い。
「その調子じゃ、見て回るのは難しいね?」
「うん………。」
自分のバカッぷりに泣けてくる。
あんなに楽しみにしていたのに。
たまには自前の服とか、アクセサリーとか…見たかった。
しゅん…と落ち込む私に、與儀はさらに気まずそうにした。
「あの…さ。実は急遽、无ちゃんと花礫くんも一緒に行くことになってね…?」
「………え」
瞬間的に不機嫌な低音を出した私に、與儀の肩がビクッと跳ねた。
目が、私を見ていない。
「行ってきて…いい?」
「こ…の…裏切りものーっ!!」
「えええー!?」
思いきり叫ぶと、泣き虫與儀さんの登場。
泣きたいのはこっちだよ…!!!
「だっ…だって二人ともずっと艇だし…出たと思ったら危ない目に遭うし!たまには息抜きを…」
「私だって日頃から危ない目に遭ってるよ!たまには息抜きしたいよー!!」
「あー…そうだよね…」
ヴァントナーム…
次はいつ来られるかわからないのに。
服…アクセサリー…
それに…與儀と歩くのも楽しみにしていた。
任務以外で二人で街をぶらつくなんて滅多にないもの。
手を繋いで、ぶらぶら歩いて色んなものを見て…そんなデートがしたかったのに。
……でも ……たしかに今までずっと外にいた二人が、いまは艇にとどまっているんだもんね…そう考えると、任務でも外に出られる私たちと違って、二人は可哀想…。
……大人に、ならなきゃ。
考え方を変えなきゃ…。
「いいよ…行ってきなよ。二人を連れて。」
「え、いいの?」
「お土産、希望ね。二人を楽しませてあげて。與儀もゆっくり息抜きをしてきてね。それに、花礫くんと仲良くなるチャンスかもしれないし、頑張って。」
「ありがとう…!!絶対にお土産を買ってくる!!」
笑ってみせたら、泣き虫王子は涙を浮かべながら笑った。
いいか…この笑顔が見られただけでも。
ついでに甘いお菓子でももらえたら、私はそれで充分。
またそのうち行けることもあるでしょう。
「部屋まで行ける?」
「うん、大丈夫。」
早速…と立ち上がった與儀が私を見て手を貸そうとしたけど、二人を待たせたらいけないと思って、手をヒラヒラと振った。
本当は大丈夫じゃないんだけどね。
擦り傷だけでなく、思いきり階段に強打してずり落ちたから。
ああ、輪だってバレていなくて良かった…。
「じゃあ行ってきます。」
「行ってらっしゃい。………あ、與儀、待って。」
「なに?」
私はベッドから立ち上がって、ひょこひょこと歩いた。
與儀が慌てて私のところにきて、受け止めてくれる。
優しい旦那さま。
首に回した手でグイッと引き寄せて、近づいてきた顔。
唇にチュッ…ってキスをしたら、與儀は真っ赤になった。
「行ってらっしゃい」
「な…な!?」
「新婚生活っぽいでしょー?」
「う……」
ぷしゅー…と湯気が出そうなくらい…
茹でたて與儀みたいになってる…。
プロポーズしたのは自分のくせに。
こういうのには免疫がないのね。
與儀はゴクリとツバを飲み込んで喉を上下させ、私の背中に腕を回して引き寄せた。
まだ少し赤みの残る頬で。
少しかがんで、今度は私がキスをされた。
「ん、行ってきます、俺の可愛い奥さん。」
「おく…さっ」
「新婚生活っぽいね?」
逆に真っ赤にされた私の顔を、イタズラをした子供みたいな表情で見つめられた。
まさか、仕返しをされるとは思わなかった。
「じゃあ、お土産に期待していて!休んでいてね?」
「あ…うん。」
奥さん…か。
そうだよね。與儀は私の旦那様だもの。
花嫁さんとは言われたことがあって、それはそれで恥ずかしかった。
だけど、奥さん、ってまた違う響き。