(狂愛)深愛のアメジスト
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「おはようメェ。起きるメェ。」
「ん……っ」
「起きるメェ。起きるメェ。」
「わ、かったから…」
昨夜はあまり眠ることができなくて、ようやく寝付けたのは朝方のこと。
だからまだ眠くてボーッとして、何度も羊さんに体を揺すられた。
「寝不足の色が出ているメェ。気をつけるメェ。」
「ごめんなさい…」
まだぼんやりして少し頭も痛い。
羊さんに怒られながら、なんとか身支度を整えて部屋を出たら…バッタリと與儀さんに出くわした。
「あ……」
「おはよ、マナちゃん!」
気まずくて心臓が跳ね上がり、体を固くした私に、與儀さんはいつもみたいにニッコリと挨拶をした。
「お…おはようございます…」
「珍しいね?いつもよりゆっくりなんて。俺、今日は寝坊してさっき起きたんだよ?」
「そ…うなんですか?」
「うん、羊に怒られちゃった。やっぱり昨日のことを思い出したら恥ずかしくて眠れなくて…。」
よくよく見ると與儀さんの目の下にはクマがうっすらとできていて。
寝不足なのは本当みたい。
恥ずかしそうに話す様子は、いつもの與儀さんだ。
気のせい…だったのかな…?
昨日の與儀さんは…。
「…あ、もしかして…マナちゃんも昨日のことで寝不足とか…?」
「え!?」
「あ~…だったらなんか、ごめんね、本当…でも、ちょっとでも意識してくれたら嬉しいな…なんて。」
(いつもの…與儀さんだ…)
いつもみたいに、頬を赤くして本当に照れながら笑ってる。
やっぱり昨日のは気のせいだったんだ…ホッとした。
安心したら一気に緊張が抜けて脱力しかけたけど、また二人並んでゆっくり歩きながら普通の話を色々とした。
昨日の事は気のせいでも、好きだと言われた事には変わりはなくて恥ずかしいし、どう答えを言えばいいのかわからないけど…。
與儀さんが言ってくれたみたいに、私も與儀さんと一緒にいるのは楽しい。
~~♪
(…………あ。)
「…花礫くん?」
私が反応するより先に與儀さんが口を開いたから、ハッとした。
見上げたけど、與儀さんは変わらずに穏やかに笑ってる。
いま、私にメールをくれるのは輪のみなさんか花礫くんしか、いない。
確認しなくても、今の時間だときっと花礫くんだ。
「多分、そうだと思います…。」
「そっかぁ。俺もまたメールしてみよっと。元気かなぁ。」
やっぱり一瞬ヒヤッとしたけど、変わりのない様子にまたホッとしてる。
ちょっと過敏になりすぎだよね…?私。
もう、普通に戻ろう。
今までどおりの日常に…。
それで…もし。
與儀さんに答えを求められたら…私は、どうしたらいいんだろう。
私は與儀さんを、どう思っているのか。
「ねぇ、マナちゃん。」
「はい?」
與儀さんは立ち止まって、私をじっと見つめてきた。
つられて私も立ち止まると、少し寂しげに笑ってる。
「…花礫くんのこと、好き?」
「え?…嫌いではありませんけど…」
突然、なんだろう。
好きか嫌いかの二択なら、嫌いじゃない。
ぶっきらぼうに見えて結局は優しいし、人として好きなほうには入るとは思うけど。
「…じゃあ、俺は?」
「え…っ」
……あれ?しまった。
同じように答えればいいのに、何故か言葉に詰まった。
與儀さんはみるみる悲しげに、いつも平門さんや花礫くんにいじられた時のような表情をして目に涙をためていく。
「も…もしかして嫌い!?」
「え!?ち、違いますよっ!嫌いではありません!!」
與儀さんも好きには入ると思う。
嫌いなんかじゃ絶対にない。
慌てて否定すると與儀さんは心底安心したらしく深いため息をついた。
「良かった…嫌いなのかと思った…」
「すみません…」
すぐにそう言えば良かったのに。
何故か言葉に詰まった自分がわからない。
花礫くんのことは、すぐに答えられたのに…。
好きか嫌いかの二択なら…好きですよ。
與儀さんのおかげで、いま笑って過ごせるのだから。
「嫌われていないなら、いいんだ。」
そう言って、與儀さんもまた笑って涙を引っ込めた。
そう…好きか嫌いか、なら。
好き、だと思う。
それが、與儀さんの求める答えかどうかは…わからないけど…。
「與儀さんは、私の恩人です。嫌いになんてなりません。」
「恩人…かあ…。そんな立派なものじゃないよ…?」
そうつぶやいた声がなんだか寂しげで、どう答えたらいいのかわからなかった。
みなさんが出掛けて行ったあと、一人ぼんやりとリビングのソファに腰かけた。
時々羊さんに相手をしてもらいながら、與儀さんにもらったリボンをジッと見つめた。
好きか嫌いかなら、好き。
嫌ではなかったけど…
返事を求められたら、どう答えたらいいのかな…。
また昨日みたいになったら、どうしたらいい?
そうこう考えているうちに寝不足が祟ったのか、うつらうつらとしてきて、スゥッと眠りに意識を持っていかれた。
目が覚めたとき、妙に唇がくすぐったいことに気づいた。
何かが当たってる。
…ううん、当たってるなんてものじゃなく…何度も何度も、深くくっついてはくすぐられる。
「んっ…!?」
目を開けると、すぐそばに與儀さんの顔があった。
私の唇を塞いでいるのは與儀さんの唇だと気づくのに時間はかからなくて…やめて、とジッと見つめたけど、離れる様子がない。
肩を掴んでも同じ、びくともしない。
ただひたすら…
昨日と同じ、暗く深いアメジストが私を映していた…。
どうして?與儀さん…。
わけもわからないまま、私は深い深い紫水晶に閉じ込められるように、落ちていった。
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