(狂愛)深愛のアメジスト
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「やっぱり、おかえりって言ってもらえるの嬉しいな。」
「そうですか?」
「うん。羊にはいつも言われてるけどさ。无ちゃんや…マナちゃんに迎えてもらえると、帰ってきたなぁって思うよ。」
「あ…ありがとうございます。」
なんだか、恥ずかしいな。
私はみなさんをただ見送って、迎えるしかできないだけなのにね。
でも與儀さんのその言葉が嬉しくて、私もふっと笑顔になった。
すると與儀さんは少し顔を赤くして俯きながら、ポケットに手を入れた。
「あのさ…今朝、言えなかったんだけど…これあげる。」
「はい?」
そう言ってポケットから出して渡されたのは、綺麗にラッピングされた小さな袋。
いいのかな…と思いながらも受け取って開けた中には、可愛いピンク色のレースのリボンが入ってる。
「これ…。」
「約束したでしょ?新しいの買って返すねって。ちょっと遅くなっちゃったけど…。」
「あ…」
私がヴァルガに襲われたときに、怪我をした與儀さんの手に巻いたリボン。
その時の買って返すって約束を、與儀さんは覚えていたんだ。
「ありがとうございます!すごく可愛いです。」
「良かった…好みに合うか心配だったんだ。」
「嬉しいです、すっごく!!」
助けてもらったのに新しいのなんて、よかったのに。
それでも與儀さんの気持ちが嬉しくて、リボンを大切に手に包み込んだ。
「………」
そんな私を、與儀さんはまた顔を赤くして見た。
だけど目がカチッと合ったら、そらされてしまって…どうしたのかなと思ったけど。
「マナちゃん…」
「はい?」
「…今朝の話なんだけど。花礫くんに、先々の事を相談しているって…あれ、艇を降りるって…こと…?」
「え?」
與儀さんは視線を落として目を泳がせたまま、ぽつりと呟いた。
突然の話題に驚いたけど、さっきまでの笑顔が嘘みたいに沈んだ表情をしてる。
「降りたい…?」
「…そういうわけではないのですが…もしそうなった時のために、この先どうしようか考えないといけないな、って。花礫くんに相談していたんです…。」
「…そっか。」
表情も声も暗く沈みこみ、ただ下を向いている與儀さんを、私はじっと見つめた。
いつまでここにいるのか、わからないから。
花礫くんが出ていってから、現実的に考えていかないといけないと思ったの。
みなさんと知り合えたのに、寂しいけど。
「そうだよね。マナちゃんもこれから先があるんだし…いつかは、花礫くんみたいに自分の道を歩かないとなんだよ…ね。」
「…………」
與儀さんは一生懸命に明るく話そうとしているけど、表情は沈んだまま。
笑おうとしてうまく笑えていなくて…寂しいって與儀さんも思ってくれているのかな。
「……ごめん…」
低く、そんな呟きが聞こえて。
私はいきなり立ち上がった與儀さんに、腕を掴まれた。
強く引かれて、今までにないくらいに近い距離で体がくっつき、とても辛そうな目で見つめられた。
「わかってる。いつかは艇を降りて、自分の道を歩いて…たくさん、新しい場所に行ったり新しい出会いも待っているんだよね……でも、ごめん…嫌だ…」
「與儀さん……?」
「…いつか、誰かと恋をして恋人になって、って…考えたら…ごめん…っ!!嫌だ…」
「よ…」
また強く引っ張られて…與儀さんに、強く抱き締められた。
「與儀さん!?」
慌てて離れようとしたけど、男の人の強い力にはかなわなくてビクともしない。
苦しいくらいの力で。
與儀さんの体が震えてる。
「マナちゃんが誰かを好きになっちゃうの…嫌だよ…ずっとここにいて…。」
「え……」
「好きだよ…マナちゃんのことが…。」
「……あの…?」
「ごめんね、本当は良くないって思って言えなかったけど…やっぱりどう考えても苦しくて…今朝の事からずっと、どうしたらここにいてくれるのか考えて、考えて考えて…」
「よ…與儀さん…」
まさか與儀さんに想われていたなんて。
輪の人に…なんて、普通想像もしないでしょ?
かたく私を閉じ込めていた腕がかすかに緩んで、至近距離で見つめられた。
目が、いつもの與儀さんじゃない。
ふわふわした雰囲気の與儀さんはどこにもいなくて…
どこか必死な、でも何か強い光のこもった瞳。
いつも優しく向けてくれていたアメジスト色が、濃く深い色に変わってる。
「今日、ずっとここにいてもいい?」
「え…」
ゆっくり、くっついたまま後ろに押されて、逆らえないままドサッとソファに…倒された。
な、に?これ……。
仰向けになって上から見下ろされる形になって、起き上がろうとしたけど肩を押さえられてまた動けなくなった。
こんな與儀さんは知らない。
知り合って間もないけど、與儀さんはいつも優しく笑ってる明るい人なのに。
こんな、強引なことはしない。
「マナちゃんが俺の事を男として意識していないのは、わかっていたんだけど…俺はね、ずっとマナちゃんを一人の女の子として見ていたよ…。ねえ、これから少しづつでいいから、俺を意識してもらえない?」
「で…も…あの…私は一般人ですし…與儀さんは輪で……」
「…うん。俺、すっかりそれを忘れてた…マナちゃんとずっと一緒にいられると思っていたよ。でも違うんだね…だからもう…今しかないんだよ…ね…?」
「いま…って」
「マナちゃんに、俺を意識してもらうチャンス…。」
まるで泣く直前かと思うほどに強く思い詰めた表情の、その顔が私に近づいてきた。
鼻と鼻がもう少しでぶつかりそうな、お互いの息遣いを感じてしまうくらい近くまで迫って、慌てて顔を横に向けた。
同時に與儀さんの両肩に手を置いて押さえると、ギリギリのところで止まって見つめられているのが、視界の隅に見切れてる。