(狂愛)深愛のアメジスト
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「おはようメェ。朝だメェ。」
「ん……」
小さくユサユサと体を揺すられて、ゆっくり眠りから目覚めて朝が始まる。
ぼんやり目を開けると、視界に小さなぬいぐるみみたいな可愛い羊がいる。
最初はビックリしたけど、今はすっかり慣れた世界。
「おはよう、羊さん…。」
「起きたメェ?」
「うん、今日もありがとう。」
お礼を言うと羊さんはピョコピョコと部屋から出ていって、私も体を起こした。
自分の家じゃないけど…私の部屋。
輪の艇。
ここに来てから少し経って、ようやくここでの生活にも慣れてきた。
最初は戸惑ったけど、輪の人たちはみんないい人だし、私より先に外から来ていた无くんと花礫くんもいて、少しづつ馴染んでいくこともできて…。
あの恐怖からも、少しづつ抜け出せつつある。
私は、『ヴァルガ』っていう怪物みたいなものに襲われそうになったところを、輪の人に助けられたんだ。
それから、この貳號艇に置いてもらっているんだけど…。
まさか自分が輪の艇で暮らすなんて、思わなかった。
政府の中でも輪はまた特別、雲の上の存在のように思っていたから。
だけどみなさんいい人で、いきなり来た私を温かく迎えてくれたんだ。
「よし、と。」
身支度を整えて、いつものように朝食をいただきに部屋を出ると、羊さんたちが何匹かピョコピョコ歩いて荷物を運んだり掃除をしたりと忙しそうにしてる。
それでも、私が横を通ると挨拶をしてくれるから、私も返しながら歩いていく。
「あ、マナちゃん、おはよーっ!」
パタパタと小走りな足音が後ろから聞こえてきて、振り向くと與儀さんが笑顔でやってくるところだった。
與儀さんは、私が襲われたときに助けてくれて、艇まで連れてきてくれた人。
「與儀さん、おはようございます。」
「おはよ!今日は目覚めがよくて気持ちいいよ。」
「じゃ、今日は羊さんに怒られずに起きられたんですね?」
「ちょっ…いつも怒られているみたいに言わないでよ…事実だけど…。」
恥ずかしそうに抗議してくる表情に、私は笑った。
最近やっと、笑えるようになったの。
與儀さんの明るさに、精神的にも救われたのは事実。
色んな意味で、私にとっての恩人。
「あ、あのさ…今日ね…」
~~♪♪
「あ、すみません」
與儀さんが何かを言いかけた時、ポケットに入れていた私の携帯が鳴った。
機密が漏れないようにと、平門さんからもらった携帯で最低限の相手との連絡しかできないし、メールの音だったから急ぐことはないかなとは思ったけど…。
送り主だけ見ようと思って開いたら、花礫くんだった。
「花礫くんだ…」
花礫くんは、少し前に艇を降りて政府のスクールに入った。
私がここに来てから、特別仲が良かったわけではないけど、やっぱり同じ保護された境遇っていうのがあって…
それなりに話とかはしていたの。
「花礫くん?マナちゃん…花礫くんとやり取りしているの?」
「はい。多分授業の前に送ってくれたんですね。无くんの事とか、時々聞かれるので…後はちょっとした相談とか…花礫くんてなんだかんだ、いい人ですよね。」
「相談?」
「はい、外での事とか色々。私も花礫くんみたいに、先々の事を考えないとって思って…。」
ざっと内容に目を通すと、やっぱり昨日の夜に送ったメールの返事が簡潔に書いてあった。
艇を降りるときにさりげなく、花礫くんに言われたんだ。
『无はもうあいつらに慣れてるから俺がいなくても平気だと思うけど、これから嘉禄のこととかで色々あると思うし。あいつら忙しい時とか、一人で抱えねぇように頼むわ。』
……って。
急ぎじゃないし、これから授業だろうから返信は後にしよう…って携帯を閉じたら、與儀さんは足を止めた。
「…與儀さん?」
私も少し遅れて立ち止まって與儀さんを見たら、固まった表情のまま下を向いてる。
「與儀さん?どうしました?」
「…え?あ…ごめん。」
そっと顔を覗き込んでみると、與儀さんは固まったまま苦笑いをした。
どうしたんだろう…珍しい。
まるで取り繕うように笑って、また歩き出したのを私は慌てて追いかけた。
「…ズルいなぁ、花礫くんは俺にはなっかなかメールくれないから。いいなぁ。」
「私も、たまにしか来ませんよ…?」
「う、ん…ねえ、マナちゃん…。何かあったら…俺にも相談してね?ほら、早くここでの生活にも慣れてほしいしっ!ね?」
「あ…はい、ありがとうございます。」
どうしたんだろう?
って思いながらも返事をしたら、與儀さんはニコッと笑った。
来たときからずっと私を気にかけてくれていたし、花礫くんとも仲良くしたい!!ってずっと言っていたから…。
メールがあまりこないのが寂しいのかな?
……って、この時の私はそう思って、あまり深くは考えていなかったんだ。
與儀さんの気持ちを…。
花礫くんが降りてから、私も真剣に考えるようになったんだ。
艇を降りたらどうしよう…って。
多分、私は一時的に保護されただけだから、すぐに降りることになると思っていたんだけど、なかなかそんな話にならないから…。
『お前も政府や輪の内情をそれなりに知ってるから、なかなか降りるの難しいと思うけど。』
って花礫くんに言われて、それから時々相談するんだ。
面倒がりながらも、相手をしてくれるんだよね…。
でも勉強もあるから、あまり迷惑はかけられないけど。
―コンコンッ
「はーい?」
今朝の花礫くんへの返信を考えていた最中、部屋のドアがノックされて返事をしたら、ドアが開いて與儀さんが顔を覗かせた。
「マナちゃん、ちょっといい~?」
「あ、おかえりなさい!任務終わったんですね?」
「うん、ただいま!」
任務の帰りとは思えない笑顔で、與儀さんが立ってる。
中へ促すと少し遠慮がちに入ってきて、ソファに腰を落とした。