(切甘)一緒にいようね。
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「ツクモちゃぁあん!!」
與儀はツクモを探し艇内をあちこち回って歩き、
リビングルームのソファに座っているツクモを見つけた。
ツクモは與儀の声に顔を上げて見た。
「どうしたの?」
「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどっ!」
「聞きたいこと?なに?」
バンッ
とテーブルに手をつき、身を乗り出す勢いでツクモに迫ったので、ツクモは驚いた。
「女の子って、その…好きな、人に、何をもらったら、嬉しい?」
いまだに、好きな人、という単語に恥じらいがこもる。
リイナの好きな人。
それは自分だと言うことが。
ツクモは突然の質問に大きな瞳をパチパチさせ、そのあとまぶたを軽くふせて思案するように視線をめぐらせた。
「もらったら嬉しいもの?」
「そう!!」
リイナのことか…と、ツクモは瞬時に察した。
そして、彼女の性格のことも考慮に入れて考える。
「そうね…私だったら、何をもらっても嬉しいけれど…。」
「なんでも…?」
「ええ。好きな人からなのでしょう?だったら、なんでも嬉しいと思う。」
「でも、好みとかあるよね…?」
「好みとは実際に別でも、嬉しいことに変わりはないと思う。」
そっか…と
與儀は小さく呟いて下を向いた。
その様子に何かを感じて顔を覗きこむと、なんだか複雑そうな表情。
「リイナの好みがわからなくて困っているの?」
「…ぅえ!?」
「何か贈りたいなら、私から聞いてみる?」
「い!いい!大丈夫…あっ!!」
相手がリイナだとわかられていることにも恥ずかしく、さすがに指輪だとは言えなくて慌てて後ずさって、近くにあったキノコ型の電話を蹴って倒してしまった。
どれだけ焦っているんだろう…と思うと、情けない。
ちょっと、当たった足が痛い。
「大丈夫!?」
「あ…うん、平気…」
痛みに足をさする與儀の代わりに、ツクモが電話を直してくれた。
ありがとう…と礼を言い、先程もらったアドバイスを整理しようと思った。
いっそ、恥をしのんでツクモにきいてもらったほうがいいのだろうか。
好みとは別になんでも嬉しいとは言っても、実際にニャンペローナ指輪は日の目を見ないわけで。
どうしても、気に入るものを贈りたい。
指輪を贈りたいと言っても、きっとツクモは冷静にきいてくれる。
そう思い口を開きかけたとき、ツクモが入り口に顔を向けた。
それにつられて振り向くと、入り口にはまさにその本人、リイナが立っていて…心臓が飛びはねそうになった。
(聞かれてた…!?)
ヒヤッとしたが、リイナは別段変わった様子もなく笑顔になった。
「二人でここにいたんだ。探したよ?」
「え、ど、どうしたの?」
しどろもどろになる與儀に目を向け、そのあとツクモに目を戻したリイナ。與儀の様子は気になったが、先に用事を済まさなければ。
「イヴァ姐さんがツクモちゃんを探していたよ?次の衣装合わせをしたいんだって。」
「あ、そうね、そろそろ決めないと。」
「衣装部屋にいるみたいだから。」
「ありがとう。」
例の贈り物についてきくか、ツクモは與儀に目配せをしたが、それに気づいた與儀もまた、目配せで断った。
「…じゃあ、私も行くから。」
「あ…」
去っていく背中に声をかけたかったが、迷ってしまった。
なんとなく、指輪のことは聞けない。
リイナは二人の様子に違和感を感じたが、確証はないので何も言えずに部屋に戻った。
「じゃあ私、イヴァのところに行くから。話はまた後で。」
「うん…。ありがとう。」
一人残った與儀は、ソファに座ってまた頭を抱えた。
(うーん…外出許可をもらって、アクセサリー屋さんとかに行ったほうがいいのかなぁ…。)
実際に見たほうがいいかもしれない。
彼女に、似合うものを。
「…で、なんで俺らのとこに来んだよ。」
與儀とツクモの訪問に花礫は何かと思いきや…。
「リイナに似合うもの?んなの、自分で考えろよ。」
花礫は明らかに面倒そうな顔をして、與儀はしゅんとした。
「だ…だって。俺だと、なんでも似合っちゃうって思って冷静に判断できないから。」
「さりげなくノロケんな。」
ノロケてない!!真剣なんだよ!!
…と、與儀は涙目になった。
まぁまぁ、とツクモがたしなめる。
「俺も、リイナちゃん何でも似合うと思う!」
「无ちゃん…イイコ!!!」
「て、ことで。解決でいい?」
「花礫くんはもっと真面目に考えてよぉ!!」
うざ…と、花礫は盛大なため息をついた。
とりあえず、付き合わなければ終わりそうにない。
さっさと終わらせて寝たい。
「何を贈りたいわけ。」
「えっ」
「贈りたいものじゃなく、似合うもの、だろ。大体目星はついてるんじゃねぇの?」
「う…。」
さすがに察しがいい。
少し戸惑い迷ったが、痺れをきらしつつある花礫からの無言の圧力に耐えきれず、消えそうな声で呟いた。
「…指輪……」
「やればいいじゃん。」
「あげたよ?でも、つけてくれなくて…。気に入らなかったかな、ニャンペローナ…」
…瞬間
部屋の空気が一変して止まった。
それを破るかのように、心底呆れながら花礫が口を開いた。
「お前それ……ギャグ?」
「え、本気…だけど…?」
「本気であのクソ猫の指輪をやったわけ…」
「え?だってリイナちゃんニャンペローナ好きだし、オモチャじゃないよ?」
「マジで引く。」
「なんでっ!!?」
花礫のドン引きの表情にさらに泣きそうになった與儀。
やっぱりニャンペローナがダメだったのか…と。
リイナちゃんも引いたのかな。
…いやいや、彼女に限ってはそんなこと…。
しかし不安は消えない。
「どうせ高いもん贈るなら、もっとマシなのあるだろ…とくに本気で女にやる指輪にキャラ物は無ぇ。マジであり得ねぇ。」
「…花礫くんのほうが、女の子をわかってるね…」
「はぁ!?バカでもわかるだろ!!」
「あの…私、は、いいと思う…けど…ニャンペローナ…」
(…あれ?いま、ツクモちゃんに気を使われた…!?)
ますます心に冷たい風が吹く。
ど、どうしよう。
やっぱり今からでも買い直そうか…うん、そうしたほうがいいかもしれない。
「だから、買い直すよ!」
「手遅れかもな。」
「てっ…!?」
確かに最近、あまり一緒にすごす時間がないと思ってはいたけれど。
(プロポーズしたばかりなのに…)
受けてくれたのに。
指輪ひとつで終わると思いたくはない。