(切甘)初恋は甘く切なく
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そう簡単にはいかないとは思っていたんだけど。ここまでなんてね。女子更衣室には何も異変はなかったんだよね?」
「うん、とくに怪しいところは…男子更衣室は?」
「こっちもとくに…。いったん、平門サンに連絡して指示を仰ごうか。」
「そうだね。」
シャワールームに入ったら、通信機器は使えない。
30分後、更衣室前で。
それまでにお互いが現れなかったら異変とみて動くことを前提に、私たちは各更衣室に分かれた。
見回りをしているスタッフも、清掃の人も…一見して怪しいところはない。
もっとも、明らかに怪しい人なんかいないだろうけど。
それを見破るのが私たちの仕事。
ここからは輪モードにならなきゃ。
荷物を持ってシャワールームに入り、脇のカゴに置いてとりあえず、シャワーをひねった。
サア…ッと降り注ぐお湯を頭から浴びて髪を解きながら考える。
(火不火…ヴァルガ…)
こんなところで一般人に手を伸ばしているとしたら…許せない。
ここは、たくさんの人のたくさんの楽しみや幸せが生まれる場所なんだから。
ピチャッ…ピチャッ…
(あれ…?)
なんだろう、なんだか違和感。
なに……??
ギィ……
背中を向けていた壁から、変な音がする。
シャワーの水の響きかたがおかしいし…嫌な風向きの、匂いを肌で感じる。
バッと振り向いたとき、そこに壁はなかった。
かわりに、向こうの暗闇から手が伸びて、悲鳴をあげる前に口をふさがれ引きずられる。
慌てて武器を出そうとして気づいた。
腕輪をしていないことに。
(しまっ…!!)
咄嗟に、カゴに手を伸ばして倒したけど、腕輪が入ったままの荷物が床に転がる。
私を捕まえている人物の後ろで、さらに誰かの気配がする。
何人いる……?探ってみるけど、わからない。
(與儀…お願い気づいて…!!)
シャワー室の壁は、きっと男子のほうも同じ。
それか、せめて私がこないことに異変を感じて。
それまで30分稼ぐか、腕輪を取る。
不可能では、ない。
とにかく、今は探らなきゃ。
幸い一般人は今はいないみたい。
「エサにと思ったが…丈夫で健康そうな女だな。これなら実験に回しても耐えられそうだ。うまくいけば進化するかもしれん。」
(実験…進化…)
やっぱり、ここは火不火の…?
怒りに震える私を恐怖と捉えたのか、やけに優しい声がかかる。
「お嬢さん、怖くないからね?ちょっと人より優れた存在になれるだけ…興味はないかな?」
そんなもの、あるはずがない。
いったい、ここで何人を犠牲にしたの。
許せない…許さない。
怒りに任せちゃダメ。
でも、與儀を待っていられないかもしれない。
その時、さらに後ろから足音が近づいてきた。
男は私の顔をジロジロと覗きこむ。
「あれ?この女…どこかで…。おい、手を離せ。」
口をふさいでいた手が離れ、一気に酸素が入ってきてクラクラした。
私も、この男、どこかで…。
「…あ!思い出した!だいぶ前に乱入してきた輪の女だ!!」
「輪!?この女が!?」
(…バレた!!)
でも、そうだ。
この男、少し前の一斉捜査で取り逃がした…ヴァルガ…!!
「ふん、まさかこんなところまで嗅ぎ付けるとはな。」
「…顔を覚えていてもらえたなんてね。私もここで会えてラッキーよ。」
「腕輪をつけてなきゃ、お前なんかただの女だ。輪のくせに、油断したな。」
(……っ)
負けない
こんな言葉の羅列に負けるもんか。
私は…輪!!!