「じゃあ、上がるよ…與儀は、その…おさまったら、出てきてね？」


すぃ…と泳ごうとした瞬間、後ろに引っ張られて背中から抱き締められた。
いきなりでビックリしたけど、私の首筋に顔を埋められて一瞬身構えた。


「ごめん！！やっぱりもうちょっとこのままで…。リイナちゃんの水着、あまり見られたくないから。」


「え？」

「いやわかってる！わかってるよ、心が狭いなって！でもね、例え水着でも、あんまり他の男にリイナちゃんのカラダを見られたくないんだよ！！」


「…じゃあ、一生プールや海のデートは無理だね？」

「あ、ごめん…。」


「…ううん。私も同じ。」

「え？」


一旦與儀の腕をほどいて、くるりと向かい合ってまたくっついた。
與儀は私の恋人だよ？って、周りに見せつけたい。

こんなにラブラブだよ？って。


「さっきね、與儀を褒めていた人がいたよ？イケメンでいいなぁって。」


「…ぇえ！？まさか！！」


「私がいなかったら声をかけてたって。ね、私がいなかったらどうする？ナンパされていたかも。」


「そんなの、断るに決まってるでしょ～？」


「本当？どんなに美人でナイスバディでも？」


「あったりまえ！俺にはリイナちゃんだけだよ。」


ああ…うん。
嬉しい。嬉しくて泣きそう。
こんなに素敵な恋ができるなんて、少し前なら考えられなかった。
そんな私に、與儀は目を優しく細めて笑った。


「リイナちゃんは俺にとって世界一美人で可愛くて、優しくて…えっと…とにかく全部キレイ。だから…うん、つまり！最高の恋人！！」


「…ありがとう。じゃあ、あまり與儀も他の水着の女性を見ないで…？」


「見ないよ。見たって何も思わないよ。こーんな最高の女の子が恋人になってくれただけで幸せなのに、バチが当たるよ。」


「言い過ぎだよ…」


さすがに恥ずかしいよ。
與儀だって私には最高の恋人だよ。
かっこよくて優しくて強くて…人の痛みも誰よりわかる人。
泣き虫でよく周りにいじられているけど、それは周りに愛されているからだよ。

頑なだった私の心に、スッと入ってきてしまった人。

私に、恋の切なさも幸せも教えた人。



「初恋は実らないって聞くけど…俺は叶っちゃったね。」

「ふふ、私もね。」



バカみたいに笑い合って、二人で照れた。

それから與儀にはしばらく我慢してもらって、ウォータースライダーや流れるプール、温泉タイプのプール、アスレチック…あと気まずかったけど子供用プール、日焼けコーナー。

あらかた見たけど、とくに怪しいところは見当たらなくて…。

火不火関連企業っていう話は、ガセネタだったのかなぁ。

火不火との戦いに進展がないのは残念だけど、とても楽しそうに遊んでるカップルや家族を見ると…関わりのない一般企業であって欲しいと願う。