(甘)フォーチュン・ラバー
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理由なんかないんだ。
心が好きって叫んだら、それが恋の始まりなんだから。
好きになってしまったら、どんなに抑えたって無理。
心だけは思い通りにならない。
笑って見せたら與儀も笑い返してくれた。
写し鏡みたいで幸せな気持ちが広がっていく……こんなにも穏やかで、ドキドキもする、こんな恋ができる相手が與儀で良かった。
むしろ與儀とだからできる…與儀としかできない。
これからどんな男の人に、何人に想いを寄せられたとしても、私の好きの気持ちは與儀だけにしか湧かない。
だから與儀も、與儀の好きを私だけの独り占めにさせてほしいな……。
二人でひとしきりお茶をしながら会話を楽しんで、名残惜しくもお日さまがてっぺんから傾いていく。
楽しい時間って本当にあっという間だなあ。
「さぁて、そろそろ買い出しに行かなきゃね…」
「うん。…ねぇリイナちゃん、あとちょっとだけ、付き合ってくれない?」
「え?いいけど……」
そう言われて連れてこられたのは、見晴らしがいい岬に立っている灯台。
展望台にもなっているらしく、大きくそびえ立つ一番上には丸く飛び出た展望スペースがある。
與儀は私の手を引いて中に入り、上までのぼった。
やっぱり中には数組のカップルがいて、それぞれ思い思いに景色を眺めて楽しんでる。
「わ、キレイな眺め!!」
お日様に当たって、水面がキラキラ輝いてる。
水平線がすごくキレイ。
「うん…でも、こっちなんだ。いこう?」
「うん??」
一番騒ぎそうなものなのに、與儀は景色は眺めずに、さらに奥にある螺旋階段を指差した。
なんだろう?と思いながら手を引かれるままのぼっていくと、さすがに高いからゴウッと強い風が吹いた。
真ん中に鐘がついていて、周囲は窓ガラスなどはなく柵に囲まれていて。
柵にはたくさんの錠がついてる。
「あのね、これ…」
遠慮がちに差し出された手のひらには、同じ錠と、ピンクのキラキラした石がはめこまれているハートがついた鍵がふたつ。
「なに?これ。」
「この錠ね、この鍵じゃないと開かないんだって。…で、恋人同士で柵に錠をかけて鐘を鳴らすと…永遠に幸せに結ばれるって伝説…。」
「………え?」
「雑誌で見て、どうしてもリイナちゃんと来たくて…今日の買い出し、俺とリイナちゃんでって平門サンにお願いしたんだ…。」
そう言って、與儀は顔を赤らめながらも真剣な顔をした。
ずるいよ、そんな顔で見つめてくるなんて。
またドキドキさせられた…悔しい。
……私と永遠に結ばれたいと思ってくれた與儀の気持ちが、たまらなく嬉しかった。
「與儀って乙女ちっくだね?」
「せめてロマンチストって言ってくれない?こういうの…嫌い?」
「ううん、大好き。やろう?」
「!!ありがとう!!」
どうりでカップルが多いと思った。
柵にギッシリついている錠は、それだけの数のカップルの思いがこもっているんだね。
私たちも二人で錠を柵に引っかけて、カチリと閉めた。
「それで、この鍵はそれぞれひとつづつ持っているんだ。これ、リイナちゃんの分だよ。」
「うん、ありがとう」
もらった鍵は與儀の体温で温かくて、どれだけの間、握りしめていたんだろう?って思ったら…嬉しかった。
「で、鐘を鳴らそう。」
鐘から下がっている紐を2人で持って、ゆっくり振った。
リーン、ゴーン…
優しくて強い音が響く。
作業は簡単だけど。
これで、永遠に幸せに結ばれる…。
素敵な伝説。
「なんだか結婚式みたいね」
「あ…そうだね。結婚式……結婚かあ……永遠だもんね……。」
「ね、與儀。」
「な、なに?」
「大好きよ。」
「なっ…なに!?」
與儀は真っ赤な顔をしてわたわたと慌てた。
少しはドキドキさせられたかな?
悔しかったから、仕返しだよ。
私にもたまにはドキドキしてよね。
「連れてきてくれてありがとう。これで、永遠に幸せに結ばれる…でしょ?」
「うん…そうだね。永遠にね。」
そっと伸びてきた腕に包まれ、私はたしかに幸せを感じた。
本当に永久に結ばれそうな暖かさを感じる。
結ばれるね、きっと。
そうなることを願って、私も與儀の背中に腕を回して抱き締めた。
「他の人がくるかもよ?」
「いいの、みんな俺たちを知らないし…見せびらかしてやるんだぁ。」
「幸せだよ、って?」
「うん。」
とんだバカップルだね。
でも、嫌じゃない。
「リイナちゃん、大好きだよ。本当に本当に大好き!!」
「うん、私も大好き!!」
「俺ね、リイナちゃんが貳號艇に配属になったの、運命だって思ってる。」
「運命?」
少し離れて與儀を見ると、與儀はふんわりと優しい笑みを浮かべた。
「初めて会ったときから、ずっと好きだったよ。一目惚れかな…それから一緒にいるうちに、どんどん好きになって。どうしたら俺を好きになってくれるだろう?ってずっと考えていたんだよ?」
それは、初耳だね…。
なんだか照れる。
そんなにずっと想ってくれていたなんて。
「付き合ってからも、なんだか俺ばっかり好きみたいで苦しくて。でも今は幸せ。リイナちゃんが俺を好きだって言ってくれたから。」
「與儀……。」
與儀ばかり好きだなんて、そんなことはない。
私だって與儀を好きになってから、與儀はどんな女の子が好きなんだろう?私を好きになってくれないかな、どうしたら好きになってくれるんだろう…って、ずっと思ってきたんだよ。
だからこそ、同じ気持ちになれた今が愛しくて幸せで…ずっとずっと続いて欲しいと願う。
それこそ本当に永遠に。
私たちは人目もはばからずキスをして、笑いあった。
鐘の下、結婚式の誓いのキスみたい。
ずっと一緒。
伝説に誓ったんだから。
「名残惜しいけど…時間だね。」
「うん…そうだね…買い出し行かなきゃね。…花礫くんと无くんに、お土産を買って帰ろう?2人が喜びそうなやつを選ぼうね。」
「うん!一緒に選ぼう!」
楽しいデートはもう終わり。
だけど、帰る場所も一緒で、これからもずっと一緒。
離れることなんてないから。
どこまでも、いつまでも
私たちは愛を誓い合う。
手を繋いで、また二人で歩き出した。
…遠くなった灯台で、また幸せな鐘の音が鳴った。
おわり
2013.07.01