年下の彼
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なんだか大変なことになった。
告白された。
同じ事務所のアイドル、しかも二つ年下の男の子に。
10代…まだ10代の子に。
いや、まだ私も二十歳ですけど…やっぱり10代と20代の壁は厚いよ…。
それなのに、彼はその壁を壊すべく挑戦をしかけてきたのです…。
「マスターコースをクリアし、デビューします。それから、あらためて貴女に告白します。」
何故…私なのか…。
いくら考えてもわからないまま。
噂に聞くと、その一ノ瀬くんは…無事にエンブレムを二つ受けとり、CDデビューも掴んだらしい。
もうすぐCDが発売になる。
そうしたら…きっと、一ノ瀬くんはまた私に想いを告げにくる。
そして私にその答えを求める…。
「参ったねぇ…これは…。」
少なからず一ノ瀬くんを意識しているとは…言えない。
だって、私も一ノ瀬くんもアイドルだから。
お互いに共倒れになるようなことはしたくない。
わかってはいるんだ。
一ノ瀬くんは大人だし真面目だから、それはわかっているはず。
その上で言ってきたなら、それなりに覚悟をしているの?
「お願いだから、好きって言いに来ないで…」
私はそれを、願うしかなかった。
どうか今のままで。
先輩と後輩のままで…。
そう思っていたのに。
「…あ」
まさかのテレビ局内でバッタリ、一ノ瀬くんに会ってしまい、しばし二人で廊下でかたまった。
あれからもちょくちょく顔を合わせてはいたけど、なんとなく二人になるのは避けてた。
それで一ノ瀬くんは傷ついているかもしれないけど…仕方ないよね…。
私は持ち前の明るさで、一ノ瀬くんに話しかけた。
「一ノ瀬くんだ、ひさしぶりだねぇ!」
「ええ、おひさしぶりです。」
一ノ瀬くんも軽く微笑んで返してくれる。
それがなんだかホッとした。
「今日はどうしたの?」
「歌番組です。綾瀬さんは?」
「私はクイズ番組だよ。賞金100万円、頑張らなくちゃ!!でも最下位は罰ゲームらしいんだよねぇ…。」
「最下位になることを祈っていますよ。」
「ひどいよ!!」
本当に面白がっているのか、笑みを浮かべられた。
一ノ瀬くんは、どんな顔をしてもカッコいい。
出待ちファンにキャーキャー囲まれているところも、何度か見た。
どんどん上にあがっていく彼に、私は自身への焦りより、何故か安心感すら覚える。
先輩として?付き合いはそんなに長くはないのにね。
「CD発売するんだよね、おめでとう。」
「ありがとうございます。完成形ができましたら、一番に届けてもよろしいですか?」
「いいよ!ちゃんと買うから!売上げに貢献するよ!」
「それは…嬉しいです…とても。」
……うん。
それはきっと、売上げが上がるとかじゃなく…私が買うと言ったことが、嬉しいってことなんだよね…?
「近いうちに…会えませんか…?」
「…あー…ごめん…しばらく地方ロケで飛び回るんだ…。」
「…そうですか…」
それは本当のことだけど
本当に…二人にはならないほうがいい。
このまま、私が避けていることを察して、一ノ瀬くんが諦めてくれたらいい。
いまならまだ、間に合うよ。
きっと、熱病に冒されたようなものだよ。
私は一ノ瀬くんの気持ちを、そんなふうに思っていたの。
ピンポーン
マスターコースから通常の寮に戻り、再び一人での生活が始まった。
後輩は可愛かったけど、同室と指導がなくなったら肩の荷がおりて、ホッとした部分は正直ある。
そんなとき、仕事から帰ってきてヘロヘロだった夜に、鳴った玄関のベル。
「ふぁーーい……」
誰だろう…と思いながらもドアを開けると、夜に似合わない万年お天気男な先輩が、妙なポーズで立っていた。
「ハッローぅかなちゃん!ご機嫌いかがかなー?あなたの嶺ちゃんがやってきたよぅ!!」
「良くないです。閉めていいですか。」
「もう!冷たい!!ノリが悪いぞ!?」
「勘弁してくださいよいきなり!今日は早朝から京都に奈良に飛んで食レポをはしごしてとんぼ返りなんですよ!!」
ちなみに食レポとは、グルメレポーターのことです…。
「なんなんですかぁ…嶺ちゃんは仕事ナッシングですか。」
「うーん、その爽やかに毒舌なところは嶺ちゃん嫌いじゃないよー?ちょおっとハートがブレイクしそうだけどっ!人をいつでも暇人みたいに言わないでよねっ!」
「暇じゃなきゃなんなんですか?」
そろそろ疲れから私のハートがブレイクしそうです。
嶺ちゃんは、まぁまぁまぁ…と言いつつ玄関に入ってきた。
あの、一応女性の部屋なのですが!?
というか…片手に大量のビニール袋を下げているのも気になるんですけど。
「今日はね、せっかくだからトッキーのデビュー祝いをしようかなって!ここで。」
「ここで!?何故!?事前の許可もらってないし!デビュー祝いなら一十木くんは!?」
「そのリズム感のいいツッコミ、お兄さん大好きっ!!立派に僕ちんの後を継いでいるようだね?」
「継いでません質問に答えてください。」
あああ話が進まない…!!
もう誰かヘルプ!!
黒崎さんでも美風さんでもカミュさんでもいいから!!
早く誰かに通報しなきゃ。
と、頭の中でグールグル考えていたんだけど。
「残念ながら、おとやんはロケでいないからぁ、また別の日にやろっかなってね。」
「なら、みんなそろった日でいいんじゃ…って、なんで携帯をいじっているんですか?」
私の話をよそに、嶺ちゃんは携帯でおそらくメールを打ってる。