年上の彼女
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自らの行動に驚き、そして自覚してしまった。
彼女に、確実に惹かれているということ。
わたしにはないものを、持っている人。
ピンポーン
「はーい?」
ガチャッ
「あ……」
「突然すみません、一ノ瀬トキヤと申します。綾瀬さんはいらっしゃいますか?」
マスターコースの女子寮…本来ならば、あまり出入りは差し障りがあるのですが…。
綾瀬さんの部屋に伺うと、おそらく彼女が指導をしているのであろう、女性が出てきた。
きっと、私と同期生なのでしょう。
早乙女学園が広かったため、まだ全員は覚えていない。
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
彼女はバタバタと奥に入っていき…一ノ瀬さんが…!!と言っているのが聞こえてきた。
あちらは私を知っているのですね。
そして…良かった。
今日、どうやら綾瀬さんはいるようです。
「一ノ瀬くん、どうしたの??」
綾瀬さんは普段着らしいラフなワンピース姿で、パタパタと奥から出てきた。
「すみません、ご迷惑かと思ったのですが…少し、いいでしょうか。外で…。」
「え?うん。」
綾瀬さんは後輩の彼女にちょっと出てくると告げ、部屋から出てきた。
私たちは寮を出て、散歩がてら庭を並んで歩き、夜空にうっすら浮かぶ星を見上げた。
「先日、見ましたよ。沖縄キムチ鍋レース。」
「え、本当に見たの!?」
「ええ。いいリアクションの勉強になりました。」
「しなくていいから!あれを一ノ瀬くんがやったらおかしいから!」
テレビの中の彼女は、他のアイドルや芸人にまざり、ファーのついたダウンコートに身を包んで…猛暑の中でキムチ早食いに奮闘していた。
真っ赤な顔をしながら頭を抱えている姿が周囲を笑いに誘い、見ていて憐れに思いながらも面白い、そんな出来になっていた。
やっている本人はしんどかったでしょうが…。
「尊敬に値します…が、失礼ながら笑ってしまいました。」
「…いいもん。笑われるのも仕事だから。」
ムスッと拗ねた頬を、指先でつまみたくなるような、そんな衝動にかられた。
「でも一ノ瀬くんが笑ってくれたなら、いいや。私はその場面を見たかったよ。」
「なぜです?」
「笑ってる一ノ瀬くんが可愛いから」
「…可愛い…初めて言われました…」
そう?と彼女は無邪気に笑った。
可愛い…………。
それは、私が年下で後輩だからですか…?
「…綾瀬さんも、可愛らしいですよ。」
「そう…?なんか一ノ瀬くんに言われると照れる。」
「…………」
精一杯勇気を出して言ったのですが…
深く考えずに流されたようで寂しくなった。
私はいま、間違いなく彼女に…。
「で、どうしたの?なにかあった?」
「ええ…少し、あなたと話がしたくて…。」
ん?と笑いながら首をかしげるしぐさに、素直なときめきを覚えた。
間違いなく…私は、彼女に恋をしている。
最初は後輩として、先輩への尊敬だと思ったのですが。
「先日私と一緒にいた……」
「うん。一十木くんだっけ。」
「ええ。音也と、寿さんが…あなたの雑誌を見ていまして。」
「まさか、あの水着?嶺ちゃんも見たの?」
「………はい。」
「ええ!!??やだ!!」
そう言って、赤くなった顔を両手で隠す仕草に、胸が痛くなった。
もしや、寿さんは…あなたの?
胸がズキッ…と痛んで、切なく、なった…。
「…寿さんには見られたくなかったのですか。」
「え?だって恥ずかしいじゃない。昔から知ってる人だし…絶対にあの人、変にいじるもん!!」
「……そうですね…それは否定できません…。」
最悪だぁ…と綾瀬さんはうつ向いた。
「私も、複雑でした。」
「え?」
「音也や寿さんや…他のたくさんの方々が、あなたの水着姿を見たことが…複雑でした。我ながら勝手ですが。」
「なんで??」
瞳が、じっと私を見つめてくる。
想いよ届けとばかりに私も見つめ返すと、しばし沈黙が訪れ…らしくもなく緊張しながら次の言葉を紡ごうとした矢先に、綾瀬さんが先に口を開いた。
「えっと…一ノ瀬くんて、私のファン、とか?」
「違います。」
「あ、そう…言ってて恥ずかしいな…。」
「好きなんです、あなたが。」
「……えっ?」
人気のない庭に、静かな風が横切った。
言ってしまった。もう、取り消しはきかない。
そう思い強く見つめたのに、彼女は驚いた顔のあと笑った。
「恋愛だったらご法度ですよ?一ノ瀬くん。」
「わかっています。」
「もう、あまりからかうとお姉さん、社長に言いつけちゃうからね?」
「からかっていません。ですから茶化さないでください。私は本気です。」
「……………」
瞬間、彼女の動きや表情が止まった。
どうしたらいいのだろう、そんなふうに視線が泳いでいる。
困っているのは明らかだ。
「私、も…まだまだ捨てたもんじゃないかな。一ノ瀬くんみたいなイケメンにそう言ってもらえるんだもんね?」
「ですから、茶化さないでください。年下は嫌いですか。」
「…いや…特に考えたことないけど…」
「なら、ずっと考えずにいてください。私はいま18で、あなたは20歳…なんの問題もありません。」
「問題?」
「少なくとも犯罪にはなりません。」
「犯罪って……いや、色々あるでしょ、世間的に…。」
たしかに、20歳の女性と18歳の男
。
犯罪でなくても、世間的にみればどうとられるかはわからない。
ましてや私たちはアイドル。
バレればお互いにスキャンダルとなる。
それでも
彼女を、少しでも独占したいと思ってしまった。
「一ノ瀬くんだって、年上女なんて…」
「私は相手があなたなら気にしません。…年上に見えませんし。」
「けっこうはっきり言うね…いいけどね…いまだにお酒止められるし。一応私、先輩なんですけどね…。」
私は、少し熱い綾瀬さんの手に触れた。
一瞬、びくりとしたけれど、引っ込めることも逃げることもしなかった。私より小さな手。
そのことに、どうしても期待を寄せてしまう。
「貴女は私にないものを、持っています。明るくて元気なところ…。そういうところが一緒にいると楽しく、かつ真面目な部分もあり…貴女といると励みになり、落ち着くんです。」
「言い過ぎだよ…ふざけてるだけだよ。」
「そういうところも、好きです。」
「…………」
恋愛禁止
それなのに感情に流され抑えられない。
全く私らしくない…しかし、嫌ではないのです。
「どうしても年齢が気になるのでしたら、感じさせないくらいに大人になってみせます。あと2年待ってくださったら…一緒にお酒も呑みます。」
「……………」
綾瀬さんの唇がなにか言いたげに揺れた。
手が、私の手から離れようと…しかし、私はけっして離さなかった。
「あなたが好きです…。」
「……だ、だめだよ。私がたぶらかしたって、一ノ瀬くんのファンに怒られちゃう…」
「では、私はあなたに手を出したと、あなたのファンに憎まれますね。」
あくまで冗談にしようとするなら、冗談で返します。
ですが、私の気持ちは冗談にはさせません。
「できることなら、手を出せる立場になりたいのですが。」
「なっ…!!」
「先程からそう言っていますよ。私は本気です。」
ほら…瞬間的に赤くなった頬。
それは、暑さのせいではないのでしょう?
覚悟を決めたのか、真面目な表情にかわり…下を向いて小さく息を吐くと、まっすぐに見上げられた。
「…ありがとう。その気持ちはね、すごく嬉しいよ。本当に。でもね…私たちはアイドルだし、恋愛禁止もあるけど、ほかにやるべきことが色々…あるでしょ…?」
「…そうですね。」
「私もそんなに売れてるわけじゃないし偉そうには言えないけど、一ノ瀬くんは絶対にビッグになれるから…頑張ってほしいよ。」
「当然です。誰よりトップアイドルになってみせます。」
「すごい自信だね。頼もしい。」
そう言って笑った顔があまりにも愛しくて…
「気が逸ったことは謝ります。ですが……私の気持ちも、少しづつ考えてはいただけませんか。」
「一ノ瀬く…」
「まず、マスターコースを必ずクリアします。そうして正所属になったら、あらためて貴女に告白します。それからはトップアイドルになるために努力しますので…。その時には、私の傍に貴女がいてほしい…。」
「…………」
「考えてはいただけませんか。時間はまだありますから…。」
「わ…わかった…でも、あのね、ここ庭だから!誰かに見られたら恋愛どころかアイドル生命ないんだからね!?」
「…はい、気を付けます、先輩。」
「絶対に先輩だって思ってない!!その顔!!」
「すみません、生まれつきこういう顔なもので…」
「もぉぉ…!生まれつきイケメン!!」
…それは、果たして悪口なのか……誉められているのでしょうか?
愛しくてつい微笑んでしまう私を、この可愛らしい先輩は気に入らないようです。
必ず、エンブレムを手にいれてマスターコースをクリアし、デビューします。
そして…
貴女の心も、手にいれます。
それまでどうか
貴女の隣は、私が予約させてください。
つづく。
2013.07.28
彼女に、確実に惹かれているということ。
わたしにはないものを、持っている人。
ピンポーン
「はーい?」
ガチャッ
「あ……」
「突然すみません、一ノ瀬トキヤと申します。綾瀬さんはいらっしゃいますか?」
マスターコースの女子寮…本来ならば、あまり出入りは差し障りがあるのですが…。
綾瀬さんの部屋に伺うと、おそらく彼女が指導をしているのであろう、女性が出てきた。
きっと、私と同期生なのでしょう。
早乙女学園が広かったため、まだ全員は覚えていない。
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
彼女はバタバタと奥に入っていき…一ノ瀬さんが…!!と言っているのが聞こえてきた。
あちらは私を知っているのですね。
そして…良かった。
今日、どうやら綾瀬さんはいるようです。
「一ノ瀬くん、どうしたの??」
綾瀬さんは普段着らしいラフなワンピース姿で、パタパタと奥から出てきた。
「すみません、ご迷惑かと思ったのですが…少し、いいでしょうか。外で…。」
「え?うん。」
綾瀬さんは後輩の彼女にちょっと出てくると告げ、部屋から出てきた。
私たちは寮を出て、散歩がてら庭を並んで歩き、夜空にうっすら浮かぶ星を見上げた。
「先日、見ましたよ。沖縄キムチ鍋レース。」
「え、本当に見たの!?」
「ええ。いいリアクションの勉強になりました。」
「しなくていいから!あれを一ノ瀬くんがやったらおかしいから!」
テレビの中の彼女は、他のアイドルや芸人にまざり、ファーのついたダウンコートに身を包んで…猛暑の中でキムチ早食いに奮闘していた。
真っ赤な顔をしながら頭を抱えている姿が周囲を笑いに誘い、見ていて憐れに思いながらも面白い、そんな出来になっていた。
やっている本人はしんどかったでしょうが…。
「尊敬に値します…が、失礼ながら笑ってしまいました。」
「…いいもん。笑われるのも仕事だから。」
ムスッと拗ねた頬を、指先でつまみたくなるような、そんな衝動にかられた。
「でも一ノ瀬くんが笑ってくれたなら、いいや。私はその場面を見たかったよ。」
「なぜです?」
「笑ってる一ノ瀬くんが可愛いから」
「…可愛い…初めて言われました…」
そう?と彼女は無邪気に笑った。
可愛い…………。
それは、私が年下で後輩だからですか…?
「…綾瀬さんも、可愛らしいですよ。」
「そう…?なんか一ノ瀬くんに言われると照れる。」
「…………」
精一杯勇気を出して言ったのですが…
深く考えずに流されたようで寂しくなった。
私はいま、間違いなく彼女に…。
「で、どうしたの?なにかあった?」
「ええ…少し、あなたと話がしたくて…。」
ん?と笑いながら首をかしげるしぐさに、素直なときめきを覚えた。
間違いなく…私は、彼女に恋をしている。
最初は後輩として、先輩への尊敬だと思ったのですが。
「先日私と一緒にいた……」
「うん。一十木くんだっけ。」
「ええ。音也と、寿さんが…あなたの雑誌を見ていまして。」
「まさか、あの水着?嶺ちゃんも見たの?」
「………はい。」
「ええ!!??やだ!!」
そう言って、赤くなった顔を両手で隠す仕草に、胸が痛くなった。
もしや、寿さんは…あなたの?
胸がズキッ…と痛んで、切なく、なった…。
「…寿さんには見られたくなかったのですか。」
「え?だって恥ずかしいじゃない。昔から知ってる人だし…絶対にあの人、変にいじるもん!!」
「……そうですね…それは否定できません…。」
最悪だぁ…と綾瀬さんはうつ向いた。
「私も、複雑でした。」
「え?」
「音也や寿さんや…他のたくさんの方々が、あなたの水着姿を見たことが…複雑でした。我ながら勝手ですが。」
「なんで??」
瞳が、じっと私を見つめてくる。
想いよ届けとばかりに私も見つめ返すと、しばし沈黙が訪れ…らしくもなく緊張しながら次の言葉を紡ごうとした矢先に、綾瀬さんが先に口を開いた。
「えっと…一ノ瀬くんて、私のファン、とか?」
「違います。」
「あ、そう…言ってて恥ずかしいな…。」
「好きなんです、あなたが。」
「……えっ?」
人気のない庭に、静かな風が横切った。
言ってしまった。もう、取り消しはきかない。
そう思い強く見つめたのに、彼女は驚いた顔のあと笑った。
「恋愛だったらご法度ですよ?一ノ瀬くん。」
「わかっています。」
「もう、あまりからかうとお姉さん、社長に言いつけちゃうからね?」
「からかっていません。ですから茶化さないでください。私は本気です。」
「……………」
瞬間、彼女の動きや表情が止まった。
どうしたらいいのだろう、そんなふうに視線が泳いでいる。
困っているのは明らかだ。
「私、も…まだまだ捨てたもんじゃないかな。一ノ瀬くんみたいなイケメンにそう言ってもらえるんだもんね?」
「ですから、茶化さないでください。年下は嫌いですか。」
「…いや…特に考えたことないけど…」
「なら、ずっと考えずにいてください。私はいま18で、あなたは20歳…なんの問題もありません。」
「問題?」
「少なくとも犯罪にはなりません。」
「犯罪って……いや、色々あるでしょ、世間的に…。」
たしかに、20歳の女性と18歳の男
。
犯罪でなくても、世間的にみればどうとられるかはわからない。
ましてや私たちはアイドル。
バレればお互いにスキャンダルとなる。
それでも
彼女を、少しでも独占したいと思ってしまった。
「一ノ瀬くんだって、年上女なんて…」
「私は相手があなたなら気にしません。…年上に見えませんし。」
「けっこうはっきり言うね…いいけどね…いまだにお酒止められるし。一応私、先輩なんですけどね…。」
私は、少し熱い綾瀬さんの手に触れた。
一瞬、びくりとしたけれど、引っ込めることも逃げることもしなかった。私より小さな手。
そのことに、どうしても期待を寄せてしまう。
「貴女は私にないものを、持っています。明るくて元気なところ…。そういうところが一緒にいると楽しく、かつ真面目な部分もあり…貴女といると励みになり、落ち着くんです。」
「言い過ぎだよ…ふざけてるだけだよ。」
「そういうところも、好きです。」
「…………」
恋愛禁止
それなのに感情に流され抑えられない。
全く私らしくない…しかし、嫌ではないのです。
「どうしても年齢が気になるのでしたら、感じさせないくらいに大人になってみせます。あと2年待ってくださったら…一緒にお酒も呑みます。」
「……………」
綾瀬さんの唇がなにか言いたげに揺れた。
手が、私の手から離れようと…しかし、私はけっして離さなかった。
「あなたが好きです…。」
「……だ、だめだよ。私がたぶらかしたって、一ノ瀬くんのファンに怒られちゃう…」
「では、私はあなたに手を出したと、あなたのファンに憎まれますね。」
あくまで冗談にしようとするなら、冗談で返します。
ですが、私の気持ちは冗談にはさせません。
「できることなら、手を出せる立場になりたいのですが。」
「なっ…!!」
「先程からそう言っていますよ。私は本気です。」
ほら…瞬間的に赤くなった頬。
それは、暑さのせいではないのでしょう?
覚悟を決めたのか、真面目な表情にかわり…下を向いて小さく息を吐くと、まっすぐに見上げられた。
「…ありがとう。その気持ちはね、すごく嬉しいよ。本当に。でもね…私たちはアイドルだし、恋愛禁止もあるけど、ほかにやるべきことが色々…あるでしょ…?」
「…そうですね。」
「私もそんなに売れてるわけじゃないし偉そうには言えないけど、一ノ瀬くんは絶対にビッグになれるから…頑張ってほしいよ。」
「当然です。誰よりトップアイドルになってみせます。」
「すごい自信だね。頼もしい。」
そう言って笑った顔があまりにも愛しくて…
「気が逸ったことは謝ります。ですが……私の気持ちも、少しづつ考えてはいただけませんか。」
「一ノ瀬く…」
「まず、マスターコースを必ずクリアします。そうして正所属になったら、あらためて貴女に告白します。それからはトップアイドルになるために努力しますので…。その時には、私の傍に貴女がいてほしい…。」
「…………」
「考えてはいただけませんか。時間はまだありますから…。」
「わ…わかった…でも、あのね、ここ庭だから!誰かに見られたら恋愛どころかアイドル生命ないんだからね!?」
「…はい、気を付けます、先輩。」
「絶対に先輩だって思ってない!!その顔!!」
「すみません、生まれつきこういう顔なもので…」
「もぉぉ…!生まれつきイケメン!!」
…それは、果たして悪口なのか……誉められているのでしょうか?
愛しくてつい微笑んでしまう私を、この可愛らしい先輩は気に入らないようです。
必ず、エンブレムを手にいれてマスターコースをクリアし、デビューします。
そして…
貴女の心も、手にいれます。
それまでどうか
貴女の隣は、私が予約させてください。
つづく。
2013.07.28