(甘)時を、刻む、夜に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スタイリストさんが用意してくれた衣装はみんな、形やデザインの違いはあれどセレモニードレスばかりだった。
てっきり私の顔写真とサイズを見たスタイリストさんセレクトかと思いきやトキヤくんの依頼だったらしい。
その理由は、あまりに華美すぎると外を歩いた時にさすがに目立ちすぎてしまうのと、動きづらくなるから。
もう正式な婚約者同士なのだから、と早速外に並んで出ようとしたトキヤくんに、でもまだ発表していないのにと躊躇う私を、それも大丈夫、問題はありませんと連れ出した。
その行き先は。
「……っ…!わあ…………っ!!」
さっきのプラネタリウムと今いた系列のホテルがある大型複合施設
その中に同じくある水族館の巨大水槽に、思わず大きな感嘆の声を漏らした。
照明でキラキラと光る青と白い砂。
艷やかに赤いサンゴ。
その海の中を泳ぐ大小のカラフルな魚たちとヒラヒラと優雅な大きなエイ。
別のエリアには一面見回すほどの広さの水槽にふわふわ泳ぐたくさんのクラゲ。
……そこを、堂々と手を繋いで見て回る私とトキヤくん。
なんと、今だけ期間限定で1日一組限定の夜の水族館貸し切りプランというものがあるらしく……それも、スイートルームを予約したお客様用の特別プランなのだとか。
夜だから屋外には出られず見られないエリアもあるけど、全然良い。
さっき、遊園地や水族館に行けなくても良いって言ったばかりなのに、まさかこんなに早く水族館デートが叶うなんて。
短時間だけど、誰もいないから2人で堂々と手を繋ぐことができる。
フロントから案内してくれたホテルや水族館のスタッフさんには並んで歩くのを見られたけど、守秘義務もあるから大丈夫だろう。
正式な発表まではやっぱり混乱を避けるためになるべく秘密のほうが良い。
漏れたら漏れたで先に婚約を発表するだけ、だけど。
おしゃれかつ外を歩いてもあまり違和感はなく、動きやすいセレモニードレスにした理由がこれだったのは……1日中計算され尽くしたデートなことに感心してしまう。
色々調べてプランを考えたんだろうなあ。
絶対にただのプロポーズだけでは終わらせないとの強い気概を感じる。
クラゲの泳ぐトンネルをくぐると自分も海の中にいるような幻想的な光景が広がった。
海の底のように深い青に白く透明なクラゲの群れが映える。
トンネルの真ん中で立ち止まり、2人並んでそれをゆっくりと眺め、トキヤくんが私の腰を抱いた。
「結婚を発表して、落ち着いたらまた2人で来ましょう。今度は昼間に堂々と屋外エリアも見て回りましょうね。」
「うん。すごくすごく楽しみ。」
私たちのデートはまだまだこれから。
この複合施設の中には他にも見るところがたくさんあるし、ここ以外にも他のどんな場所にだって行ける。
あそこに行きたいって希望を言ったら、きっとトキヤくんは聞いてくれる。
トキヤくんの希望も聞いて、お互いの意見とすり合わせる…そんな当たり前の普通のデートを、これからたくさんしていこう。
「……あとひとつ。実はこの貸し切り水族館つき宿泊は2泊のプランになっているので、明日一度仕事に行ったら、また夜はこちらに泊まりましょう。」
「明日も泊まれるの?」
「はい。今夜はもう遅いのでホテルのレストランで食事となりますが。明日は複合施設の展望レストランの個室でゆっくりというのはどうですか?」
「えー、すごい贅沢な気分!…でも嬉しい、すごく素敵。」
「では決まりですね。」
どのみち明日もトキヤくんの新曲の打ち合わせをするから、ずっと一緒。
トキヤくんは微笑み、クラゲの群れを眺め始めた。
時間を気にせず、誰を急くことなくのんびり揺れている姿が可愛らしくて。
2人でいるときは私たちもこうして過ごしたい。
そうしてクラゲの流れをゆっくり目で追うトキヤくんの横顔を、今度は私がずっと見つめて楽しんだ。
光と水とクラゲの影が反射して頬に映るのを、ただずっと眺めていた。
…ずっと、私が楽しむことを優先させて、私が楽しんでいる姿ばかりを見ていたトキヤくんが、ようやく自分の楽しさを堪能している姿が、本当に愛おしかった。
きっとこれからたくさんのデートと2人の時間を重ねるけど……2人きりでクラゲを見つめたこのゆったりとした時間は、一生忘れることはない。
将来の約束を交わしてから初めてしたこのデート、2人きりの夜の水族館を…
私は一生の思い出として胸に刻み続ける。
「……トキヤくん。」
「はい?」
私は、さっきせっかくトキヤくんから貰えたのに、お返しをしていないことがあるのを思い出した。
私の腰を抱き、脇腹にある右手にそっと自分の右手を重ねて、その胸に頭をもたれさせて。
少し恥ずかしいから、視線は落として左手の指輪を見つめたまま。
「……私も、トキヤくんだけをずっと…心から愛しています。」
「………………」
……いまトキヤくん、どんな顔をしているんだろうなぁ。
反応をせず黙り込んだ彼にドキドキしていると、腰には手を回したまま、少しだけ上半身を動かしてもう片方の手で頭を撫でられた。
「…せっかくの貸し切りの水族館なのに、もう早く出たくなってしまうではないですか。」
「え??」
「かなでにあまり嬉しいことを言われると。…早く部屋に戻って2人きりになりたくなります。」
「…………っ」
そ、それって………ええと……。
今夜はホテルに泊まるわけだし………自分やトキヤくんのお部屋以外の場所に2人で泊まるって、初めて……だから………環境も雰囲気とかも全然違うわけで。気分も変わる。
お酒も少しだけ入っているし。
婚約もしたし。
ここまで状況が揃ってむしろ何もないわけはない。
……いやいや、ただめちゃくちゃいつもよりイチャつくだけかもしれない、し。
………いやいやいや…でも……………。
……思わず頬が熱くなる。
「クスッ……何か想像しました?」
「べっ!別に……………っ」
「……まあ、その想像で概ね間違いは無いと思いますよ。部屋で2人きりでないとできないこともありますから。」
「…ぅ………………」
さすがに長年の付き合い、よく私の思考パターンをおわかりで。
…………………なんて。
重ねられている右手と右手の指がキュッと絡み、頭を撫でる手が余計に優しくなる。
頭のてっぺんあたりにふわりと柔らかいものが触れて、それがトキヤくんの唇だと気づくと…こんなに幸せでいいのかと思ってしまう。
……でも。そうだね。
もう少しだけ水族館を楽しんだら、2人でホテルに戻って一緒にご飯を食べよう。
これからの話をしながらゆっくりと。
それからお部屋で、またゆったりと2人の時間を過ごすんだ。
これからはずっとそんな時間ばかりを過ごせるから。
色んなトキヤくんを、ずっとずっと見つめていよう。
クラゲ越しに、水槽のガラスにうっすらと映る私とトキヤくんは、幸せそうに寄り添いながら笑っていた。
それを見つめたあと、私たちはまたどちらからともなく唇を交わした。
2人の新しい夜の長い時間は、まだまだこれからだから。
「君と共に歩める私の人生は、幸せそのものです。私と歩む君の人生も、たくさんの幸せで彩りましょう。」
「…うん、よろしくお願いします。」
宿泊の準備の心配は必要ないと笑っていたトキヤくんだったけど……
ホテルに戻ってから、あのお二人に渡された紙袋を開けるように促されて開封してみると
中身は私がいつも使っている愛用のスキンケア化粧品類一式の未開封の新品と、これはまた見事な可愛らしい新品の下着一式が入っていた。
実はクローゼットには翌日着ていくお洋服も用意してあるという。
……抜かり無さすぎて一周回って怖い。
けど、いきなりの泊まりで私に不便がないようにとの配慮が大変、深い愛に溢れすぎていて可笑しくて嬉しくて笑ってしまいたくもなった。
……普段あまり履かないような、大変大変お洒落でオトナな下着類だったから、…これを…着るの……?え、見せるの……?と戸惑ってしまったのは、また別のお話。
大人気アイドル・一ノ瀬トキヤが業界関係者の女性と電撃結婚発表をして世間を騒がせたのは、それから半年後のことだった。
やはりショックを受ける声はあったけど、相手はデビュー前からデビュー後もずっと支え続けてきた長年交際の恋人だとわかると、それまで一切のスキャンダルや浮ついた話がなかったトップアイドルの硬派で一途な純愛だとして意外と好意的な反応も多く拡がった。
けれど、プロポーズの内容は誰にどれだけ問われても、一切表で話すことはなかった。
おわり
2025.09.22
作中の複合施設は都内某所に実在する複合施設と実際のプランをモデルに書いております。
ところどころに実在のものと異なる部分もあることをご了承ください。
タイトルに「トキヤ」を密かに含めております(*´艸`*)
久々に書いたトキヤ夢、お読みくださりありがとうございました!
5/5ページ