また清田信長の方は見れないまま、下を向き、上履きをじっと見つめた。
　ダメだ。この人とまた話す機会があったら嫌な顔せず向き合おうと決めたじゃないか。まさかそんな機会が今日のうちに訪れるなんて思ってもいなかったが。そう考えたらいきなり勇気に似た感情が込み上げてきた。ぎゅっと手を握り、前を向く。目の前には少々困り眉をした男が一人。

「今日、は、その…ごめんなさい。驚いて貴方に恥を、…かかせてしまったと思う…ので。でも、その、…ありがとうございました。」

目を見て、思っていることを伝えた。チグハグではあるが、要点はちゃんと言えたはずだ。言い終わって突然、今の言葉が恥ずかしくなる。この場からすぐさま逃げたくなった。火照った顔を少し隠しながら「じゃあ、さよなら」と言い、帰ろうと足を動かす。

「あ、お、おい待て！」

呼び止められた声に反射的に動きを止めてしまう。もしかしたら気に障ってしまっただろうか。振り向く事ができないまま耳を傾ける。

「絵、…上手かった。お前の。」

呼び止めてまで言う事なのかと思ったが、まさか褒められるとは思わず拍子抜けして笑ってしまった。肩の力が一気に抜ける。