その後の授業も、全くと言っていいほど身に入らなかった。助かった、というのは違うのかもしれないが、私の心の中では「助かった」という言葉でいっぱいだった。もしあの状況のままだったら、間違いなく私の居場所も何もかも失って、クラスからはぶられ、下手したらいじめまで受けていたかもしれない。そんな状況を変えたのは間違いなく清田信長だ。
　元凶でもある彼は、それはもういつも通りに過ごしていて、振られたことに対してバカにされてはいるが、それをものにして尚更注目を集めていた。
　もしかしてダシに使われたのか？　とも思ったが、元から自信過剰なことで注目を浴びていた彼が私を使って、もっと注目されたいと思うだろうか？
　チラリと清田信長を見る。何もなかったと思えるほどにいつも通りのあの人。もし仮に、彼が私を気遣ってオーバーリアクションをしたのなら、逆にあの場であの雰囲気が作られなかったら。もし、告白してきた奴があの人ではなかったら。きっと、こんな平和に終わって無かったかもしれない。
　私は彼に対して嫌悪感も苛つきも消えていて、「黒歴史を作らせた無礼者」から「黒歴史を塗り替えた人」とレッテルを変えておいた。きっと、もう今後、彼と話すことも無いだろう。でも、いつか話す機会があったら、その時は嫌な顔をしないようにしっかり相手を見て話そうと心に誓った。