X'mas
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異教徒の祭り事を祝うつもりなどサラサラない。
むしろ鬱陶しくて当たり前なはずなのだが。
シャンパンのビンを手に、飛段は外を眺めていた。
既に食事を終え、今しがたケーキも食べ終わったところ。
『どうしたの?』
窓にへばりつくようにたたずむ飛段に、ナナシはケーキを片手に近付いた。
『赤い服着たジジィが、鹿の引くソリに乗って空飛んでるっつーから探してんだよ』
ビンに口をつけあおる飛段に、ナナシは思わず食べていたケーキを吹き出しそうになった。
『だ、誰にそんな事聞いたの?』
『クソリーダー』
再びケーキを吹きそうになった。
まさかあのリーダーが飛段にそんな事を言うとは。
とことんよくわからない人だが、その話をしている現場に立ち会ってみたかったかもしれない。
このままだとケーキがロクに食べられない。
一先ず置く事にしたナナシ。
『で、いたの?』
『それが居ねぇんだよなァ‥‥‥もしかしてガセか?』
真っ暗な空を見たまま呟く。
『居たらどうする気だったの?』
『異教徒のシンボルだろ?ここはブッ殺すしかねーだろ!』
意気揚々と語ってくれているが、その異教徒の祭り事を今もこうやって存分に楽しんでいるのはどこのどいつだ‥‥‥と、つい冷めた目でナナシは見つめてしまった。
『あっ!』
不意に飛段が声をあげる。
まさかホントに赤い服着たジジィを見つけたのだろうか。
『ナナシ、見ろよ。雪だぜ雪!』
『雪?』
窓を開け手を外へ出す飛段はどこか嬉しそうに言う。
『さむっ!』
『ンな事言ってねぇで、見ろよ雪』
『飛段、雪好きなの?』
『あ?綺麗じゃねェか』
全く似合わないセリフに笑いそうになった。
しかし彼の言葉通り、細かな雪が舞う様はこの暗闇の中どこか幻想的で綺麗である。
『スゲ!マジでテンション上がるな!』
『尻尾振ってはしゃいでる犬みたい』
『ケモノ扱いかよ‥‥‥』
『いーぬは喜び♪って歌の犬みたいなんだもん』
不機嫌そうな声の飛段だが、楽しそうな姿に変わりはない。
見ているナナシもつられて笑顔になる。
だが雪が降る位だ。寒さはハンパない。
『ねぇ、もう閉めよう。寒いよ』
『ハァ、弱ェなーお前。少し位見ろよなァ』
『そんな裸みたいな格好で寒くないほうがオカシイって』
『誰も寒くねぇなんて言ってねーだろ。俺だってメチャクチャ寒いぜ?』
プチプチと装束のボタンを外しながら、ナナシの背後へまわる飛段。
『んー、ちょっとはマシか』
開いた服で彼女の体をくるみ、腰を抱き寄せ呟いた。
『堂々とセクハラ行為ですか、お兄さん』
『お前の“飛段、寒いから温めて~”って言う心の声が聞こえたんだよ』
ナナシの肩に顎をのせ、頬をすり寄せる。
『飛段にジャシン様の裁きが下りますようにー』
あながち嘘ではなかった返しと、寒くないように抱き締めてくれる仕草が優しくて嬉しいが、相手があの飛段なものだから、恥ずかしくて素直になれない。
『今日は異教徒の祭り事が騒がしいから、ジャシン様は休んでるってんだよ』
子供のような事を言う彼は憎めない存在だ。
『メリークリスマス』
ナナシが呟くと頬にキスをされた。
『‥‥‥メリークリスマス』
腕にすりよる彼女をギュッと抱き締め、しばしの間、ホワイトクリスマスを楽しんだ2人だった。
終
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