儀式
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飛段はあの鎌で倒せる程度の敵にはあまり興味を示さない。
『ナナシ〜、頼んだぜぇ』
一度剣を交えて相手の実力を見て弱いとわかると、興が覚めたようにそう頼んでくる。
『せっかくの獲物なのに、コレで殺っちまったらジャシン様もガッカリだからなァ』
ガチャっと音を立て、背中に三連鎌を収める。
弱い敵は相手にしたくない。
血を得るだけの鎌攻撃で殺してしまいそうだから。
しかしあの呪術はしたい、という飛段のワガママを叶える彼女を使った戦法。
ナナシは軽く頷くが、やや乗り気ではないのは確か。
『ホント悪趣味な儀式にピッタリの悪趣味な作戦』
『ジャシン教を愚弄すんのかお前?ンな事言ってると、お前も呪うぜェ?』
『あんなので殺される位なら舌でも切って自害する』
『ケッ、可愛くねぇ奴』
『惚れてる癖に』
チラッと視線を流すと、何か言いたそうな不機嫌な顔に睨まれた。
『さっさと行けよ』
『はいはい』
ナナシは武器を構えると、真っ直ぐ相手に向かっていった。
一撃必殺も可能な程のスピードを持ち合わせているが、この作戦での攻撃に殺しは必要ない。
必要なのは彼の術に使う血だけなのだから。
2本の短刀で敵を翻弄しながら、狙う箇所を定めていく。
金属同士のぶつかる音だけが響いていたが。
一瞬の隙をついた彼女の刀が敵の腕を貫いた。
『ぐっ!』
突如として溢れ出た血が武器を伝い彼女の手の内に溜まっていく。
『今回も早いな』
遠目に眺めていた飛段が、感心したように呟いた。
腕から武器を抜くと、敵は痛みに耐えながらもナナシと間合いをとった。
しかし、もう仕掛ける必要のない彼女は溜まった血を手に、離れた飛段の元へと寄る。
当たり前のように立ち尽くす彼にスッと手を差し出した。
『このまま舐めれば?』
『毎度も言わせんな。何の為にお前に頼んでンだよ』
『角都が知ったら“頭が悪い作戦”って絶対罵られる』
『だからアイツがいねぇ時にしかやらねェんだろ』
『ハァ‥‥‥毎回やっちゃう私も同レベルか』
『俺に惚れてるからだろ?』
『うるさい』
ナナシは手のひらに溜まった血に口をつけると一気に煽った。
独特の味が広がる。
呪術をするたびに彼はこんなものを体内に取り込む訳だが、口に含んだ時のこの不快感。
何度やっても慣れない。
この後行われる、最高の痛みという快感を得るための儀式とやらもどこがイイのか。
まったく理解に苦しむ。
不愉快な表情を浮かべるナナシを見て、飛段はおかしそうに笑った。
『可愛い顔が台無しだぜ?』
睨み付けてくる彼女の腰に腕を回し抱き寄せ見下ろすと、顔を掴み上を向かせる。
そのまま唇を寄せ深く口付けた。
血は嫌いだが、血を欲する悦びに高揚している飛段は好きだ。
自分を欲しがっている訳ではないのはわかっている。
キスはついで。
しかし。
強引にキスをされれば求められていると錯覚してしまう。
だからまわりくどく頭の悪い作戦だと思っていても、頼まれればやるのだ。
『ンン‥‥‥ッ』
先程口にした血液が飛段の中へと取り込まれる。
それは儀式の始まり。
深く繋がっていたキスが離され、名残惜しそうに唇を撫でる指先。
ナナシが目を開けた時には。
瞳の色だけを残し、呪いを纏った飛段が姿があるだけだった。
終
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