雨
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任務からの帰り道。
もうすぐて里だというのに降り始めた雨。
それは、あっという間に水量を増し風を伴い大雨へと変わった。
暖かくなったとはいえ、春先の雨はまだまだ冷たいもの。
髪を伝い頬を流れ落ちる雨は、拭いても拭いてもきりがない。
カカシと二人きり、ナナシは隣だって木陰に立つ。
『これじゃ、雨宿りしてもあんまり意味ないね』
『あぁ。ナナシ、寒くない?』
『うん。大丈夫』
カカシにそう聞かれて返したものの、先日からの体調不良のせいか寒くてしかたない。
しかし忍としてのプライドが彼の言葉に甘えてしまう事を許さなかった。
たかが風邪。
カカシには弱い部分を見せて呆れられたくない。
だが意に反して体は震え始める。
ナナシは両手で体を抱くようにして腕を擦った。
ふと視線を感じカカシを見ると、心配そうに見つめている。
さっき“寒くない”と言ったが今の自分の様子は矛盾している事に気付く。
『雨のせいで‥‥‥ちょっと寒いかも』
彼が問いかける前に苦しい言い訳をして笑って誤魔化してみる。
しかしカカシは少し険しい、心配そうな顔を向けた。
『雨降る前から顔色良くなかったけど。具合い悪いんじゃない?』
その言葉に、あからさまにギクッとした顔をしてしまう。
『えぇ‥‥‥と、んー、大したことないから大丈夫、大丈夫』
そう返した矢先、目眩に見舞われ思わずカカシに掴まった。
『ご、ごめん‥‥‥』
慌てて手を離し顔をあげると、おもむろにカカシは額当てを外し、離した体を引き寄せコツンと自分の額をナナシの額にくっつけた。
『‥‥‥熱あるんじゃない?』
すぐそばで聞こえるカカシの声にドキドキし、顔が火照っていくのがわかる。
そう感じていると額が離れ真っ直ぐ見つめられた。
『さっきの目眩といい、熱といい。どこが大丈夫なの?』
口調が少しきつくなる。
『‥‥‥ごめん』
『俺に謝っても仕方ないでしょ』
カカシに体調が悪いことがバレてしまったせいか、張っていた気がプツンと切れてしまう。
立っている事が辛くなってくる。
『ごめっ‥‥‥』
ナナシはそのままカカシに寄りかかった。
カカシもそれを抱き止める。
濡れた体に伝わってくる体温と、体を支えられているのが心地いい。
体調不良も雨もプライドも、どうでもよくなった。
この後の事はまたその時に考えて。
今はカカシに甘えよう。
終
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