虚心、否 scene.1
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『ナナシに、ちょーっとしたお願いがあるんだけど』
申し訳なさそうな顔なのに、どこか楽しそうにカカシが尋ねてくる。
『お願い?』
任務で雪の降る地へ行くらしく、新しくマフラーを買おうと思っている、とのこと。
機能性とお洒落センスを兼ね備えたものが欲しいらしい。
『ナナシはセンスいいし、そういうの詳しそうだから買いに行くの付き合って欲しいんだ』
と、言われたのは数日前。
センスとか詳しいは別として。
予定が無かった事もあり気軽にいいよと答え、待ち合わせ場所へと向かったのはいいけれど。
待っていたのは女のコに囲まれた頭1つ飛び出た銀髪頭。
『あれってナンパして‥‥‥?違う‥‥‥されてる?』
少し遠めで眺めて立ち尽くしてしまった。
ジィーッと見ていると視線に気付いたのか、こちらを向いて軽く片手を挙げてきた。
反射的に同じく軽く手を振ってしまう。
が、ハッとして直ぐに手を下ろした。
そうしていると囲まれた女のコに何やら言って、笑顔で軽く手をフリフリし、足早にこちらへとやってきた。
なんだかモヤモヤしてしまう。
『ごめん、道聞かれたから教えてた』
『‥‥‥ナンパかと思った』
『ナナシとのデートなのにする訳ないでしょ』
サラッとデートと言いのけられ、このシチュエーションを急に意識してしまう。
『‥‥‥‥女の子の方からしてきたのかと思ったの』
『そういえば、今から時間ありますかって聞かれたなぁ』
ナンパです、それ。
相変わらずヘラっと話す姿に、更にモヤモヤモヤモヤ。
別にカカシが悪いわけじゃないし、女の子の方も単独のイケメンを誘っただけなので別に悪くない。
ヘラッとしてるのだっていつものこと。
誰も悪くない。
悪く無いけれど‥‥‥。
『ナナシ?なんか怒ってる?』
難しい顔をして押し黙ったせいかカカシに言われ、ハッとして。
『怒ってない!』
思わず強く返してしまった。
驚くカカシにまたハッとして、冷静になろうとした。
モヤモヤの原因は‥‥‥。
『ごめん。女の子と楽しそうだったから‥‥‥なんか面白くなくて』
彼女じゃない。
恋人じゃない。
けれど、いつも自分がカカシの傍にいて。
隣にいて。
それが普通になっていたから、他の女の子に見せていた笑顔に嫉妬してしまった。
『ふふ‥‥‥』
なんだか嬉しそうにカカシが笑みを漏らす。
『そんな事言われると、色々期待するでしょ』
彼女を見下ろすと、手を取りスルリと指を絡めて繋いだ。
『っ‥‥‥!?』
『勘違いさせるような事を言った、ナナシが悪いんだよ?』
『そんなつもりじゃ無くて‥‥‥!』
その通りなのだが、恥ずかしさの方がまさってしまい否定の言葉しか出てこない。
カカシの手の温もりや力強さは素直に嬉しいはずなのに。
『嫌なら振りほどいてイイよ。俺からは離さないけどね』
ズルいセリフを放ったカカシに物言いたげな険しい顔のナナシだが、言葉には出来ず反抗するようにギュッと手を握り返した。
その反応にカカシは更に嬉しそうに笑みを浮かべた。
『イイね‥‥‥じゃ、行こうか』
笑った素顔が自分にだけ向けられていること。
恥ずかしさもあったがやっぱり嬉しい。
素直に出来なくて自己嫌悪に陥ってしまっても。
『さ、今日はナナシをいっぱい振り回すから、覚悟しておいてね』
『マフラー買うだけじゃないの?』
『じゃないよ、勿論。デートなんだからプランを一生懸命考えたんだからさ。けど、ナナシが連れてってくれるマフラーのお店が最優先だからね』
振り回されても嫌じゃないその優しさに甘えてしまう。
『‥‥‥カカシといるとワガママになってく』
ポツリとボヤキがもれる。
『俺だけが知ってるワガママなナナシって事でしょ?嬉しいなぁ、それ』
『なんで?イヤじゃないの?ワガママなんて厄介なだけでしょ』
『俺は色んなナナシを知りたいからね。ワガママだろうと厄介だろうと‥‥‥俺だけが知ってるなんて、特別感あるよね』
嬉しそうに笑って見下ろすカカシ。
『見習いたいくらいのポジティブ』
呆れたように。
けれど、心の中は嬉しくて自然と笑みが溢れた。
好きと言えたらいいのに。
終わり
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