センチメンタル
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任務で足を怪我したナナシ。
紫色に腫れ上がった足首が痛々しい。
『折れてる?』
心配そうにカカシが問いかけた。
『‥‥‥ヒビが入ってる』
『鎮痛と炎症を抑える薬、持ってきてる?』
『うん』
『あと、冷やせるようなモノは?』
『持ってきてるけど‥‥‥?』
『じゃ、それで処置しようか』
『そんな事しなくても治すから』
チャクラを纏った手を足首に当てると、カカシがそれを遮った。
『ダメ。今日はナナシをおぶって帰るって、決めたんだから!』
『え、なにそれ。ヤダ』
鋭い切り返しにカカシはショック&フリーズ。
『な、なんで‥‥‥』
『この年でおんぶされるとか恥ずかしい』
『緊急事態でしょ』
『治療出来るだけのチャクラ残ってるし』
『‥‥‥‥‥‥』
『‥‥‥‥‥‥』
『‥‥‥‥‥‥おんぶ‥‥‥したい』
物凄く落ち込んだカカシが声を絞り出す。
内容はくだらないのに空気が重苦しい。
『もう‥‥‥わかった』
呆れたように答えると鞄から治療に必要なものを取り出し、ナナシは手早く処置をした。
『よっ‥‥‥と』
衝撃を与えないようにナナシをおぶったカカシ。
ナナシは彼の首に腕を回す。
恥ずかしさはあったが居心地は悪くない。
『疲れたら下ろしてね。傷はいつでも治せるから』
『下すわけないでしょー‥‥‥折角のかんしょ‥‥‥っ、こんな風にナナシをおぶる事なんて、もうないかもしれないのにさ』
『かんしょ‥‥‥??』
途中、気になるセリフもあったが、カカシはただただ嬉しそうにテクテク歩く。
『こうでもしなきゃ、ナナシと物理的に距離縮められる事なんかないからねぇ。ちゃんと掴まっててよ?』
『動機が不純過ぎる‥‥‥』
『耳元で囁いてくれるのも、色々掻き立てられてイイね』
『‥‥‥もう下りたい』
『安心しなよ。里まで離さないから』
何を言っても自分の都合の良いように受け取られ切り返される。
そうやって、からかって楽しんでいるのだろう。
背中の上で動けないこの状況を作ってしまった事を少し後悔もしたが。
カカシの背中で揺られるこの感覚に懐かしさも感じていた。
思わず目を閉じ背中にもたれかかる。
急におとなしくくっついてきた彼女を不思議に思ったが、カカシは嬉しい状況なので黙っていた。
『‥‥‥こんな風におんぶされるのって子供の頃以来かな』
不意にナナシが呟く。
『あの頃はみんないたから良かった‥‥‥』
寂しそうな声が最後の方は消えて行く。
『先生の事思い出した?』
『‥‥‥うん』
少し感傷に浸った空気が流れ沈黙が続いたが。
『今は俺がいるでしょ?先生以上に、俺が過保護に甘やかして傍にいるから』
『‥‥‥父さんに頼まれたからでしょ?』
『それもあるけどさ。好きだから、ってずっと言ってるのまだ信じないかな』
ぐっと言葉に詰まったナナシ。
カカシからは見えないがかなり顔が赤くなっていた。
再び沈黙が流れる。
『‥‥‥カカシはいなくならないでね』
ポツリと彼女が呟いて、ギュッとカカシに抱き付いた。
『大丈夫、いなくならないよ』
安堵したナナシの顔は見えないが、“ふふ”っと笑う嬉しそうな声がカカシの耳に届いていた。
◆終◆
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