泳げない人魚
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ナナシは海の波間にプカプカ浮いていた。
浮き輪に掴まり不機嫌な顔。
せっかく2人きりで楽しもうと海へと来たのに、カカシはちょっと目を離した隙に、綺麗なお姉さん達にナンパにあっていたのだ。
彼のやんわり断っている様子が遠くから見るナナシには、何だか楽しそうに見えて。
彼に非がない事はわかっているが、とても気分が悪かった。
『カカシのバカ‥‥‥』
ちょうどカカシと目が合うが、彼を無視するとナナシは浮き輪を抱えて海へと繰り出したのだった。
そして今1人きり。
『あ゙ー!ムカつく!』
水面をバチャバチャ暴れ、子供みたいにイライラを発散させてみるが、しぶきがかかるだけ。
『ぷはっ!しょっぱい‥‥‥』
涙の味と一緒だ。
ジワリと本当に涙が滲む。
『こんなの‥‥‥違う』
言い訳するとパチャ、と海水を顔にかけて誤魔化す。
そのままただユラユラと目的もなく波に揺らめいていた。
『‥‥‥全〜然楽しくない』
2人で楽しむはずだったのに。
泳げないからカカシにいっぱい構ってもらおうと思ったのに。
無意識に彼の事を考えてしまう。
『カ、カカシが悪いんだから!』
はっ!と我に返り思わず叫んだ。
が、カカシは何も悪くない。
悪いのは嫉妬深い自分自身だ。
わかっているからモヤモヤしているのだ。
『あれ?』
我に返ったついでに、見渡すと周り人気がない。
ボーッとしているうちに岩場まで流されてしまったようだ。
『何でこんなとこに‥‥‥早く帰っ‥‥‥ゎぷっ!』
この場を抜けようとしたのだが、流れが速く波も高くて、ナナシがいくらパチャパチャ泳いでも引き戻されてしまう。
『どうしよう‥‥‥全然進まない』
急に不安が押し寄せた。
冷たい水に体温は奪われていく。
自由に泳げないナナシにとって、この状況は恐怖でしかなかった。
『カカシ‥‥‥』
耐えきれず呟き求めた彼の名前。
祈るように、ギュッと浮き輪を握る。
しかし、聞こえるのは静寂にただ繰り返される波の音だけ。
『ぅう‥‥‥カカシ‥‥‥』
押し潰されそうな不安に耐え切れず、瞳が涙に潤んでいった。
と。
“ザバーーーン!”
突然水中から目の前に勢い良く現われた物体。
『キャーッ!?』
思わずナナシは浮き輪を投げつける。
“パコッ!”
『あた!』
どうやら命中したようで間の抜けた声がした。
『せっかく助けに来たのになぁ‥‥‥』
顔をさすりながら1人呟くのは、こっそりナナシの後をついてきていたカカシのものだった。
ちょっとだけ驚かそうと水中から登場したのだが、極度の不安に混乱した彼女に浮き輪で攻撃されたのだ。
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