ask for the moon
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カカシはぼんやりしながら家へと続く道を歩いていた。
歩みを止め空を見上げると、ハァと溜息をつく。
『‥‥‥好きになれないな』
視線の先には煌々と照る満月。
口布を下げ、額当てを首まで下ろし、閉じた左眼に指先が触れた。
はっきりしない疼く痛みと、傷跡から時折ひりついたような痛みが走った。
どういった因果関係があるかは謎だが、満月や新月にあらわれる写輪眼の症状に、憂鬱な気分になりながらも再び歩き始める。
『ん?』
カカシの目に飛込んできたのは川辺に立つ女性。
『‥‥‥ナナシ?』
思わず目を奪われてしまう佇まいに、鼓動が高鳴る。
意識しているのに。
臆病が勝ってしまい線を引いている相手。
思わせぶりな態度をとって彼女の反応を見て。
好意を感じているのに自分からそれ以上はいかない。
それなのに誰かに取られるのはイヤだから、彼女が自分を気にかけてくれる程度の接触は常にしている。
つい嬉しくなって、そこにいる事を不思議に思いながら、カカシは道を外れヒョイヒョイと彼女の元へ下りていった。
『こんな時間になにやってるの?』
『っ、カカシ!?』
突然隣りに立ったカカシにナナシは驚いて見上げる。
『驚いた?』
『急に現れるから‥‥‥ていうか、驚かせる為にわざわざ気配消してきたでしょ』
図星を突かれ曖昧に笑ってみせると、呆れたように彼女も笑った。
『‥‥‥月』
カカシの問いかけにナナシは空を見上げ口を開く。先程の質問の答えのようだ。
『月?』
『すごく綺麗だったから散歩したくなったの』
ナナシは笑顔を向けたが、その表情は少し暗い。
『本当は‥‥‥満月は色々思い出すから避けてたんだけどね』
そう続けた消えそうな声。
ズキンと左眼に痛みが走り思わず押さえるカカシ。
『どうしたの?』
心配そうに尋ねる彼女に、カカシは左眼を押さえたまま見つめ返した。
押さえていた手を離すと頬を伝い流れる涙。
『泣いてる‥‥‥?』
ナナシの指先がカカシの頬にそっと触れ、涙を拭いた。
その手にカカシは自分の手を重ね握りしめる。
『大丈夫だよ』
『本当に?』
心配そうな不安を帯びた声が自分に向けられている事に嬉しくなる。
涙は止まらないが、彼女に触れられる事で痛みが消えていく気がした。
『‥‥‥ナナシ』
覆っていた手を取り指先にキスをして、そっと彼女を抱き寄せた。
『このまま‥‥‥少しの間こうしててイイ?』
急な抱擁に強張っていた身体から力が抜けるのがわかる。
『‥‥‥うん』
ナナシの手が遠慮がちに背中に回された。
『満月‥‥‥好きになれなくてさ』
『カカシも?』
『傷痕が痛むんだよ‥‥‥』
その度に思い出す、昔の出来事。
“忘れるな”という戒めなんだろうか。
『涙は、その痛みのせい?』
『そんなとこかな。でも感情が伴ってるわけじゃないから』
『‥‥‥私には哀しそうに見えた』
『じゃあ、本当は哀しかったのかな』
『自分のことでしょ』
『んー、哀しいとか‥‥‥そういうの、よくわからなくてさぁ』
自嘲気味な笑いが溢れる。
『恥ずかしい姿見られたね。涙のことは内緒で』
そう言って、カカシは抱き締める腕を緩め彼女を見下ろした。
『でも、そのお陰でナナシに会えたから、今日は満月も悪くないって思えたかな』
嬉しそうに柔らかな笑みを浮かべるカカシにナナシは思わず見惚れ、頬を赤く染める。
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