Greensleeves
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まだ怪我人がいるのに。
早く次の人の治療に行かなければ。
と、気持ちだけが先走る。
呼吸は乱れチャクラを纏った手にも力が入らなくなってきた。
黒い霧が視野を狭めていくように感じていたが、まぶたをあける力も残ってない証拠。
聞こえてくる音や声も、水中にいるようにくぐもっていてハッキリしない。
痛みを感じていないせいか怪我の程度にナナシは気付いていなかった。
大量の出血により自身の血溜まりが出来ているというのに。
寒くて眠くて体が重い。
ただそれだけだと思っていた。
『ナナシ!!』
名前を呼ばれ顔をあげようとしたが首が動かせない。
どの方向から聞こえたのかわからない。
けれど聞き覚えのある彼の声。
その声に心のどこかで安堵していた。
『‥‥‥ン‥マ‥‥‥』
視界が真っ暗になり、そこで意識は途切れた。
※※※※※※※※※※
『ん‥‥‥』
意識がハッキリとしない中目だけが部屋を見渡す。
見慣れた白い部屋。
『ここ‥‥‥びょう‥い‥‥‥イッ!』
腕を動かしただけで身体に痛みが走った。
痛みに耐えながら動かした手には包帯が巻かれていた。
塞がりかけの擦り傷や切り傷も見受けられる。
全身の感覚はあるようで、体はなんとか動かせそうだった。
『‥‥‥起きたか?』
不意に声をかけられる。
足元にいたせいか気付かなかった。
立ちあがり近付いてきた人物にナナシは視線を向けた。
『ゲンマ‥‥‥』
彼の聞き慣れた声と見慣れた顔にホッとする。
しかし名前を呼んだ途端、意識が途切れる前の記憶が脳内にフラッシュバックした。
『っ任務!‥‥‥ゲンマ皆はどうなっ‥‥‥っ〜〜っ!?』
そう叫ぶと、思わず体が反応し勢いよく起き上がった。
が、全身の痛みに思わず呻き声が上がり苦痛に顔を歪めてしまう。
ベッドから飛び出そうな勢いにゲンマも思わず彼女の体を抱き止めた。
『大丈夫だからじっとしてろ。治療に当たった奴らなら全員助かった』
重傷者を優先し治療に当たったお陰か、あれだけの怪我人がいたにも関わらずひとりも死者は出なかった。
最適な判断だったと上も言っている、とゲンマは伝える。
『‥‥‥良かった』
その言葉にナナシは長い安堵の溜息をもらし、安心したような表情を浮かべた。
ただ、抱き止めた腕の中で脱力し体を預けてくる彼女の様子に、ゲンマの表情は曇る。
『良くねぇ。お前が一番危なかったんだ』
はぁ、と深いため息をつきナナシの体をゆっくりとさすった。
『3日間昏睡状態だった。一時は機械がなかったら自発呼吸もままならない状態だったんだぞ』
口調はどこか怒っているようにも聞こえる。
『自分の怪我の具合わかってただろ。チャクラも治療のために倒れるまで使っていた。あんな‥‥‥ボロボロの状態で‥‥‥お前、死んでもおかしくなかったんだぞ。何で自分の治療を優先しなかったんだ』
ゲンマは体を離すとナナシをベットへ横たえた。
『‥‥‥ゴメン、なさい』
険しい表情のゲンマに謝る事しか出来ない。
『俺に謝っても仕方ねぇだろ』
『私が死んでたら隊の全滅も有り得た。足引っ張って迷惑かけ‥‥』
『そうじゃねぇ。‥‥‥そういうんじゃねぇよ』
ナナシの言葉を遮るようにゲンマが口を挟む。
険しい表情のまま彼女を見つめていたが、自分の言葉に萎縮してシュンとしまったナナシから、フイと視線を外した。
『悪い。お前の言いたい事はわかってる。‥‥‥‥‥けど、こういう時、忍ってのが嫌になる』
苛ついたような口調の中に悔しさを滲ませたゲンマ。
『‥‥‥どこが最適な判断だよ』
吐き捨てたセリフの後にナナシを見つめた。
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