星空の下で
夢小説の名前変換
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漆黒の闇に広がる満天の星。
あまりにも綺麗で吸い込まれそうになってしまう。
寒気すら覚える、誰1人いない砂浜。
けれど空と海に映る煌びやかな光と、繰り返される波の音に心が落ち着いた。
『女の1人歩きは危険だよ?』
後方でした柔らかな口調の低い声。
ナナシは驚きながら振り向く。
月明かりも相まって光る銀髪を揺らし、爽やかな笑顔の男が近付いてきた。
前髪で隠れ気味だが、時折見える紅い左目と縦の傷が、端正顔立ちを浮きだたせているようで、初対面ながら見とれてしまった。
『横、いいかな?』
『‥‥‥どうぞ』
ボーッと見惚れていると、フッと男の口元が笑う。
『星、見てたの?』
『今夜は特に綺麗だから』
『俺、邪魔しちゃったかな』
『そんなこと‥‥‥全然ないです』
見上げると視線がぶつかり、離す事が出来ず見つめ合ったまま。
ただ静かな時間が流れた。
スッとナナシの頬を覆う冷たい手。
『惚れちゃったって言ったら‥‥‥俺、軽い男になるのかな?』
この人の笑顔は心地良い。
惹き付けるような、どこか安心してしまう笑みだった。
最初から警戒心を抱かなかったのも不思議だ。
『じゃあ、私は軽い女になるのかな』
見透かすような目に胸が熱くなるのを感じていると、少し冷たい唇が重なった。
触れるだけの優しいキス。
そんな中、遠くで“先生”と呼ぶ子供の声が暗闇から聞こえた。
名残惜しそうにゆっくりと離れ、寂しそうな笑顔を向けられる。
『名前、何て言うの?』
『‥‥‥ナナシ』
男はナナシの額に口付けると立ち上がった。
『またね、ナナシ』
あの胸を熱くする柔らかな笑顔を向けると、フッと姿を消した。
闇に響く波の音。
広がる星空。
1人残されたナナシ。
『あの人、名前教えてくれなかった』
先程の事は全て夢で。
笑顔も、唇も、幻で。
そうじゃないかと考えると、ギュッと胸が苦しくなった。
でも。
“またね、ナナシ”
声がまだ耳に残っている。
手のひらの感触が頬にある。
重なった唇の感覚も。
何より忘れられないあの笑顔がまだ目に焼き付いて離れない。
約束したわけじゃないし、来るという保証もないけれど。
またここに来てみよう。
『今度は名前聞かなきゃね』
名前も知らない人。
でも、きっと会えるはず。
この星空のもとで。
☆終☆
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