三大欲求
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ピンポーンと呼び鈴の音にカカシは顔を上げる。
来訪者の予定はあるがまだその時間じゃ無い。
誰だろう?と思いながらも扉を開けた。
『あ、ナナシ、っととと』
扉を開けた途端流れ込むように歩を進め入ってきたのは、件の来訪者。
早すぎる訪問に驚きもあったが、どうしたかを聞く間もなく彼女はカカシにそのまま突っ込んできた。
避けきれずその身体を抱き止める。
『ゴメン、ボーッとして‥‥‥』
虚ろんだ目をしたナナシはふと顔を上げる。
『随分早い訪問じゃない?』
彼女の身体からは石鹸の匂いに混ざって消毒薬の匂いが微かする。仕事帰りのようだ。
『約束の時間に来れるように‥‥‥一旦帰って‥‥‥寝て‥‥‥って思ったんだけど。急な任務で長引いて‥‥‥シャワーのせいかな‥‥‥ねむい』
説明をしているのか独り言なのか、ポツポツ呟くナナシ。
通常の夜の病院任務は朝方終わる。
自宅へ帰って睡眠と諸々の用意をし、夜、カカシ宅を訪れ、彼オススメの店へ食事に行く、という本日の予定だったのだが。
現在の状況は予定とは大きくズレていた。
見回りと待機の任務がほとんどの夜の病院。
今回、想定外の夜間任務帰還者(怪我人複数名)の対応に追われ、忍術フル稼働、プラス朝方帰宅のはずが昼前帰宅となる大幅なタイムオーバー。
相当な体力とチャクラを消耗し、ナナシは眠気と疲労でフラフラの状態だった。
出血の処置や汗で汚れた身体を洗い流す為に浴びたシャワーもまた、身体が温まり眠気に拍車をかけたようだ。
仮眠室で休もうにも先客がいたため、帰路についたが“このままでは倒れる”と、本能的に察し‥‥‥ナナシの足は自然と帰宅途中にあるカカシの家へと向かったのだった。
『少しだけ仮眠させて‥‥‥』
睡魔と疲労、申し訳なさを滲ませた表情を向けてくる彼女にNOなど言えるわけがない。
『いいよ、上がって』
事情を知ったカカシは快くナナシを受け入れる。
疲れ切った顔を見ると心配しか無いが、早くに会えた事の方が嬉しい。
『掛けるもの取ってくるから、ソファーに横になってて』
『‥‥‥うん』
返事を聞いた後、毛布を取りに行き戻ってきたカカシ。
『ん?』
ナナシの姿はソファーではなく、下に敷いてあるフカフカのラグにあった。
丸くなってうずくまるように横たわり、既に眠りに落ちている。
『まぁ、ここでもイイか』
肌触りのいい物を買っておいて良かった、グッジョブ俺、と自画自賛しながら毛布を掛けると、そばに腰掛けた。
『無理するなって言っても聞かないだろうな』
ナナシの寝顔眺め、頭をそっと撫で頬をさする。
何でも卒なくこなす、クールで余裕な姿が印象的な彼女だったが。
弱みを見せてくれるようになった。
こんな風に自然な姿も見せてくれるようになった。
必要としてくれるようにもなった。
何より、よく笑って、笑顔を向けてくれるようになった。
守りたい愛おしい存在。
“大切な人”と言われた事はあるが、“好き”と言われた事はない。
好意を感じる事はあるが、彼女自身がきちんとそれを伝えてくれるまで待つしか出来ない。
過去の出来事が彼女を変えてしまった。
誰にも心を開かなかった。
拒否されて拒絶されて避けられても。
“見守ってやってくれ”と、頼まれたから見放す事は出来なかった。
勿論、頼まれたからだけではない。
単純に好きになったから。
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