想い
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『以上この作戦でいきます。見張りの方以外はお休み下さい。くれぐれも単独では動かないように』
静かにそう言ったハヤテと目が合う。
しかしフイとすぐに外され、彼はその場から離れた。
ナナシはキュッと唇を噛みしめる。
ハヤテが隊長をつとめる4人1組のAランク任務。
1人が負傷し動けない状態にいた。
原因はナナシを庇ったため。
そして先程、3人1組で出来るようにハヤテが作戦を組み直したのだが。
ナナシは怪我人と共に待機を言い渡されたのだ。
実質、ナナシを除いた2人1組での作戦だった。
ハヤテと一緒に任務が出来る、などと不謹慎かもしれないが心踊っていたが。
自分のせいで負傷した仲間がいて、任務からも外された現実。
“私が足を引っ張ってる‥‥‥”
きっとハヤテもそう思っているに違いない。
力を認められるどころか、足手まといと思っているだろう。
“医療忍者のアナタは彼の側にいてください”
作戦の時はそう言われたが、怪我をしている彼の傷は命に関わるようなものではなく状態も安定している。
麻痺毒の解毒はしたが、これ以上の治療は自己の治癒力に任せる事しか出来ない。
ただの戦力外通告にしか聞こえなかった。
ハヤテに忍としての力を認められていない。
だから外された。
そう考えのるが自然だ。
見張りと火の番をしながらも頭の中はその事でいっぱいだった。
『ナナシ、交代だ』
そうしている間に交代の時間。
『‥‥‥うん』
どうせ作戦に加わらないのだから休んでも仕方ないのに‥‥‥などと、皮肉めいた事が頭をよぎる。
ナナシは頭を冷やそうと離れた川辺へと行った。
月明かりに照らされた澄んだ水の流れは、モヤモヤした想いを浮き立たせ、自身を惨めにさせる。
『どうして‥‥‥』
頭を冷やすどころか、1人なった途端、悔しさと悲しさと自分の力の無さに涙が溢れた。
忍として泣く事は許されない。
しかし止まることなく頬を伝い落ちていく涙。
『こんな事だから弱いのよ‥‥‥』
叱咤するように呟くと川の水で涙を洗い流す。
『何をしているんですか?勝手な行動はとらないように言ったはずですが』
突然の背後からの声にナナシは驚き振り向いた。
『ハヤテ‥‥‥』
慌てて顔の水を拭き取ると川から上がる。
『今のうちに休んでおいてください。あなたも怪我人でしょう?』
『‥‥‥私に休む理由はないでしょ?怪我なんて大したことないし』
ハヤテの優しい言葉が、ただの同情にしか聞こえず冷たく返すことしか出来ない。
ハヤテは黙って傍までやってくるとじっとナナシを見つめた。
『泣いていましたか?』
その言葉に反射的に顔を逸らしてしまう。
それでも何も言わずに見つめてくるハヤテ。
頭の中は、先程までの思いが渦巻くだけ。
その沈黙に耐えきれなくて。
『ナナシ‥‥さん?』
再び涙が溢れた。
『なぜ私は作戦から外されたの?』
ナナシはただ訴えるように問いかけた。
『それは先程も言ったように‥‥‥』
『彼の怪我は安静にしていれば問題ない。私がついていなくても大丈夫でしょ?私がわからないと思った?』
その言葉にハヤテは黙ってしまった。
『この任務の人選をしたのはハヤテでしょ?』
『えぇ。貴女を選んだのは、貴女の力を見込んでの事。ただ‥‥‥』
再び黙ってしまったハヤテ。
視線を落とし続きを言うのをためらっているようだった。
『私が思っていたより、敵が強すぎました。あの場面で敵に襲われたのが貴女じゃなくても、負傷者は出ていたでしょう。だから貴女が作戦に加わってくれた方が私たち2人も助かります』
『じゃあ、どうして‥‥‥』
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