V.D-2.14
夢小説の名前変換
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『ナナシ、今日何の日だか知ってる?』
隣りに座る男が尋ねてきた。
ナナシはペンを止める事なく黙々と報告書を書き進めていく。
無視を決め込んだが、無視をされるのをわかっているかのように、頬杖ついて笑顔のまま見つめるだけの彼が視界の端に入る。
『‥‥‥バレンタイン』
思い通りになるのが嫌で一言ナナシは言い放った。
しかし、言ってから彼がそのセリフを待ち望んでいた事に気付き少し後悔する。
いつも無駄に絡んでくるこの男がバレンタインを見過ごすはずがないのだから。
今こうしてここにいるのは、チョコレートの催促に決まっている。
勿論そんなもの用意していない。
ついさっき、死にそうな任務を終えて帰ってきたばかりなのだから。
『俺さ、チョコレー‥‥‥』
『カカシ。私、任務終わったばかりなの。報告書さっさと書いて提出して、すぐ休みたい位疲れてるの。私からのチョコレート期待してるなら無駄だから』
セリフを遮り、イラついたように言うとナナシは疲労の見える顔をあげた。
『ん。だから、はいコレ』
そう言って小さな箱を差し出すカカシ。
随分と可愛らしいラッピングがされている。
『疲れてる時は、甘いモノって言うでしょ?』
『言うけど、これ‥‥‥?』
『俺からの逆チョコ』
手を取られチョコレートを手のひらに乗せられた。
『逆チョコって、何?』
思いもよらない返しにナナシはただ動揺してしまう。
『言葉のまま。男の方から好きなコにチョコレートあげる事だけど?』
本人を目の前にサラッと“好きなコ”などと言われ、動揺に拍車がかかり赤面するナナシ。
『そう‥‥‥ありがと』
しかし、その部分には触れないようにしてお礼を言った。
『どういたしまして』
カカシはと言うと、満足そうに相変わらず柔らかい笑顔を向けてくる。
それを見て、冷たく言って悪いことしたな、と少し反省。
ナナシはペンを置くと箱を眺めた。
『せっかくだし、食べてもいい?』
尋ねると、頬杖をついたままカカシは『どうぞ』と頷く。
包みをとり箱を開けると種類の異なるチョコレートが並んでいた。
ひとつひとつデコレーションされていてどれを食べようか目移りしてしまう。
その中のひとつを取り口に入れた。
ゆっくりと溶けて広がっていく甘さが、本当に疲れを忘れさせてくれるようだ。
『んん、美味しい!』
思わず笑みをカカシに向ける。
『任務終わりに、女の子に混ざって買った甲斐があったよ』
『その格好で買いに行ったの?目立ったんじゃない?』
『その辺は恥ずかしくて思い出したくないから、触れないで欲しいなぁ』
と、苦笑い。
しかし喜んで食べている彼女の姿に、それも報われたようだ。
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