トライフル
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任務が終わり報告書を提出し終えたゲンマが歩いていると。
『ゲンマさん、ゲンマさん』
『ン?』
かすかな呼び声がする。
くるっと振り向いてギョッとした。
まるで周りを警戒するように気配を絶ったハヤテがチョイチョイと手招きをしている。
『お前。誰もいねぇんだから、ンな物陰に隠れる必要ねぇだろ』
呆れてゲンマが溜息つくと“あっ!”と気付いたように陰から出てきた。
『つい任務中のクセで』
どこまでヌケているのだか。
『お前は忍としちゃあ、一流なんだがなぁ。で、何か用か?くだらねぇ用事なら帰るぜ。くの一ならともかく野郎の用事なんざ仕事だけで十分だからな』
『あぁ‥‥‥ゲンマさん29でしたっけ。切羽詰まってるんですねぇ』
遠い目をしてボソリ、ゴホゴホ。
『どういう意味だそりゃ!』
特定の女はいないが、別に女に不自由していない、三十路目前の独身・不知火ゲンマ。
キレ気味のゲンマに『冗談ですよ』と言うハヤテだが目は笑ってなかった。
『それより、話を進めて宜しいですか?』
マイペースなハヤテに、振り上げたかった拳を反対の手でグッと抑える。
『ンだよ!』
『ゲンマさん、料理得意でしたよね』
『ン?あ、あぁ。得意っつーか好きなだけだ』
得意分野の話題を出されて機嫌が良くなるのだから、ゲンマも単純かもしれない。
『お菓子も作れますか?』
『ある程度ならな』
『シフォンケーキもですか?』
『あぁ。っだよ、もったいぶってねぇでハッキリ言え』
『あー‥‥‥あの、私にシフォンケーキの作り方を教えてもらえませんか?』
ハヤテは言うのを躊躇うかのように照れながら切り出した。
『お前が?‥‥‥シフォンケーキを?‥‥‥作る?』
『‥‥‥ハイ』
2人の間に沈黙が走る。
『ぶはっ!似合わねぇ!』
吹き出し笑いだしたゲンマに、さすがのハヤテも何とも言い難い面持ち。
『で、何で作るんだよ。作り方教えてやるから言ってみろ』
ガシッと肩を組んでおかしそうに楊枝をフーリフリ。
『風邪で入院している彼女がいるんですが、食べたいものを聞いたところシフォンケーキが‥‥‥』
ピタリと楊枝のフリが止まる。
『ちょっと待て。今何て言った?』
ポツリポツリと説明するハヤテに思わず突っ込んだフレーズ。
『ですから、彼女がシフォン‥‥‥』
『彼女だぁ!?』
『そうですが?』
『お前、女いたのか!?』
『えぇ。まぁ』
ガーンガーンガーン
フリーズしているゲンマ。
男前が台無しなくらい物凄い顔になっている。
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