THANK YOU FOR YOUR LOVE♡

僕が初めて選んだ君へのプレゼント(沢北ver.)

あー、どうしよう…もう着いちゃうよ…。

私は今、高校受験の会場に向かっている。雪道を滑らないようにと進む度に緊張が増してきて、自分で歩いているのに自分の足じゃないみたいだった。

ようやくなのかあっという間なのかも分からないけれど正門に辿り着き、〝山王工業〟の文字を見ると一気に重圧が胸にズーンとのし掛かってきた。

別に将来なりたい職業がある訳じゃない。それなのに何故工業高校なのかというのは、幼なじみの栄治が通っているから。栄治と一緒に高校生活を送りたいから。ただそれだけの理由だった。そして自分の力でちゃんと合格出来たら、栄治に好きだって伝えたい。そんな事を人知れず決意していた。

校舎の入り口に着くと、部活の格好をした栄治が寒さに震えて立っていた。真冬の秋田でジャージにハーフパンツで外に立っているのはさすがに無理があるだろう。


『え、栄治?!何してんの?めっちゃ震えてるじゃん!』

「…お前を待ってたんだよ。汗引いたら余計に寒ぃや…」


口を尖らせながらそう言いつつ、ポケットから何かを取り出した。


「手、出して」


そう言われ、両手を差し出すとコロンとお守りが落ちてきた。


「この前、遠征で京都行ったろ?そん時に買ってきたんだよ。合格祈願のお守り!」


得意げに話す栄治の言葉を聞きつつ、お守りに書かれている文字を見て私は困惑していた。


『…恋愛成就?』

「えっ?!うわ!俺のと間違えた!」


栄治はみるみる赤くなっていき、両手で顔を隠していた。そして聞こえるか聞こえないかくらいの声でこう言った。


「終わったら、ちゃんと言うつもりだったんだよ…うわ、恥ずすぎる…」

『えっ…ホ、ホント…?!』

「だー!!もうバレちまったじゃねーか!サイアク…」


栄治は頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。受験生が在校生を泣かせている、みたいな絵に見えているんじゃないかとヒヤヒヤする。全く…昔からこういう所は変わらないんだから。

でも、そこがまた好きだったりする。

私も栄治の前にしゃがみ、耳元でこう言った。


『お守り、ありがと。私頑張るよ。だから今度はかっこ良くキメてよね』


私はそのまま栄治のリアクションも見ずに、受付の方に向かった。たぶんさっきよりもっと赤くなっているに違いない。


合格したら恋が成就するんだから、このお守りは合格祈願とおんなじだよね。


四月には同じ制服を着て、一緒にあの正門を通るんだ…!


待っててよ、栄治。



おわり

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