THANK YOU FOR YOUR LOVE♡

僕が初めて選んだ君へのプレゼント(三井ver.)

※「3月21日」シリーズ設定です。

これはまだ私が新人だった頃の話。

新人の私にとって、社会人生活は何もかもが初めてで常に何かに追われているような、そんな毎日だった。(今もあまり変わらないけどね…)

まず最初に教えられたのがメモを取ることだった。覚えることだらけなのだから、どんな些細な事でもメモを取るようにと上司から言われていた。故に常にノートとボールペンを手に持ち、ひたすら書きまくっていた。

そして、三井先輩に一日指導を受ける番がやってきた。三井先輩の指導にはとにかく擬音が多かった。

バシッ

どーん

ギュイーン

これが三井先輩の使う擬音TOP3だった。今思えばその部分をメモする必要は無かったのだが、「些細な事でもメモを」という上司の言葉が脳裏を駆け巡り、ただひたすら文字に起こした。


「んで、ここをバシッとすりゃあ良いんだよ。分かるか?」

『ここをバシッと……っ…あれ……インクが…』

「あ?どうしたんだよ」

『三井先輩…ボールペンのインクが切れました…』


後から三井先輩が言っていたが、その時の私はこの世の終わりみたいな顔をしていたらしい。


「そんな顔すんなよ。ほら、俺の貸してやるから」

『ありがとうございます…』

「それにしてもこんなにメモ取ってりゃあインクもすぐ無くなっちまうよなぁ」


三井先輩は私のノートを取り、パラパラとページをめくった。


「ん?何か俺の所だけ妙にページ数多くねぇか?」

『…だって三井先輩、擬音が多いんですもん…』

「あ?何だって?」

『バシッとかどーんとかギュイーンとかですよ!!気付いてないんですか?!』

「そ、そんなとこメモ取る必要無いだろーが!」

『そんな判別してる余裕無いですよっ!』


今思えばこんな風に言い合ったのはこれが初めてだったかもしれない。だから私にとっては大切なエピソードなのだ。そして、これに輪をかけるように翌日がやってきた。


「ほら、これ使え」


声と共に降ってきたのはなんと、大量のボールペンだった。


『ど、どうしたんですか?!こんなに』

「こんだけありゃメモ取っても大丈夫だろ?」


見上げるとそこには一点の曇りも無い、少年のような笑顔があった。


顔は良いのになぁ…。


でも私のためにしてくれたんだよね。不器用な人…。


「おーっし、今日も教えてやるからな!ちゃんとメモ取れよ!」

『はいっ!』


これが私と三井先輩が一緒に仕事するようになるキッカケとなったのだった。

ちなみにあのボールペンはまだ使い切れていない。

私と三井先輩が成長した証だよね。



おわり

[ ログインして送信 ]