トビラ、ヒラク
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「あの人だよ」
「えっ…なんか意外…」
今日も移動教室の途中、見知らぬ女子生徒に横目で見られ、ヒソヒソと何かを言われる。この現象は、私に彼氏ができた数ヶ月前から始まったことだ。
彼氏は翔陽高校のみならず、近隣校の女子なら知らない人はいない、というくらい有名な人物だからだ。
その名も〝藤真健司〟
とにかく見た目が良い。巷では王子なんて呼ばれている。その上バスケ部のエースで、しかもキャプテン、落ち着いた話し方、一歩引いたようなクールな佇まい、なのに時折見せる子どもみたいな笑顔…
完璧だ。
当然モテまくりな訳で、そんな藤真くんが私の彼氏であるということがもはや奇跡、もっと言い方を変えれば珍事に近い。この珍事が、他の女子からの視線とヒソヒソ声という名のシャワーを引き起こしているのだ。
そんな日々に少し慣れてきた今日この頃、まさに今シャワーを浴びている最中だというのに、ジャストタイミングで正面から王子様が登場した。そして私に気付いたようで、パッと左手を挙げた。悔しいけれど、その仕草も表情もやっぱりかっこいい…。
「移動か?」
『うん。音楽だから』
自分から聞いた割に、ふーん、とテキトーな返事をした。そして私の耳元に顔を近付け、小声でこう言った。
「明日、俺んちで一緒にテスト勉強しねー?」
もうすぐ藤真くんが彼氏になって最初の中間テストが近付いていて、突然言われたこの言葉に私は一瞬固まってしまう。
「顔に出てんぞ、全部」
私の肩にポンと手を置き、藤真くんは行ってしまった。途中、キャー!と黄色い声が聞こえた気がしたけど、今日は初めて聞き流せた気がする。
藤真くんの家で勉強…ということは、つまり…そういうこともあるかもしれない。私は経験があると言っても本当に〝あるだけ〟で、何をどうしたら相手が悦ぶだなんてほとんど分からない。藤真くんはモテるし、きっとそういうことも私より経験があって、スマートにリードしてくれるだろう。緊張するけれど藤真くんとなら、私…。
その後の授業なんて全く頭に入らなかったし、晩ご飯に何を食べたのかも覚えていなかった。
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