茜さす
NAME CHANGE
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『……南、私な?』
「待った」
名前の言葉を遮るように、南が声を発した。
「俺から言わせてや」
『ど、どうぞ…』
南は真っ直ぐに名前を見つめる。
「今日学校で名字を見て、もう前とは同じように見られへんって思ってん。何でか言うたら、そんなんとっくに分かっとることなんやけど…こうやってわざわざ待って貰って、言わん訳にはいかんよな」
名前は黙って南の話を聞いている。
「名字」
南は地面に置かれている名前の手にそっと手を重ねた。名前はビクッと手を震わせ、南の目を見つめる。
「好きや」
真剣に言うと、名前は目を見開き、頬を赤く染め、口をパクパクとしている。
お互い好きと分かっていても、いざ言葉にしてみるとこんなにも可愛らしい反応をするのか…と南の表情が緩む。
名前は俯き、重なる手を見ながらプッと吹き出し、突然大声で笑い出した。
『アハハハハ!』
「な、何で笑いよんや…!」
『ご、ごめん。いや、私は〝今度、南がバスケしてるトコ見たい〟って言おうと思っててん』
「は?!」
予想外の言葉に南は戸惑い、早とちりしてしまったことに急に恥ずかしさが込み上げてきた。顔に熱を帯びるのがよく分かり、口元を手で隠す。
『南ぃ』
名前は南の顔を覗き込むようにした。その表情もまた、真剣だった。
『嬉しい。ホンマに』
南はそのまま目だけを名前の方に向けた。まだ耳まで真っ赤だった。名前は、こんな南を見たことが無かった。故に新鮮で、何だか凄く愛おしく思えた。
(可愛いトコ、あるやん)
ついニヤニヤしてしまいそうになる。必死に堪えていると、そのまま南に肩を抱き寄せられた。
顔が近い。
流石にこれには名前も赤面せずにはいられない。
『み…なみ…ちょ……近い…』
「俺には、お前が必要や」
今度は耳元で囁くように言った。あまりにもドキドキし過ぎて、しゃがんでいた名前は後ろに倒れそうになった。それに気づいた南は支えようとするが、自身もバランスを崩してしまう。
「…!!」 『わっ…』
気が付くと、2人で仰向けになっていた。
さっきまでの青空が、気付けば茜色に変わっていた。
『綺麗…』
「ホンマやなぁ」
同じタイミングで2人は目を合わせる。
スカイブルーのシャツが、夕陽に染まる。
南は名前の手を握った。
名前も、そっと握り返す。
優しく目を細め、前髪がそよそよと風に靡く南は何だか綺麗で、吸い込まれそうになる。
『私たぶん、一生この光景を忘れんと思う』
「光景?」
『南がこないに男前って、知らんかった』
「…それはお互い様や」
『えっ…?』
「もう言わへん」
『えー!何でやねん!』
新学期と共に、2人の新たな関係も始まった。それがこれから先もずっと続き、この日が2人にとって一生モノになると知るのは、もう少し先のことだ。
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