おごりの春の うつくしきかな
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名前は通勤の都合で、実家から少し離れた所で一人暮らしをしている。今日は休日で特に用事がないため、昼前までゆっくり寝ていたところだ。
顔を洗い、レーズンパンをかじりながらテレビを見ていると、携帯が鳴った。画面には〝藤真健司〟と表示されている。
藤真は名前より5つ年下で、実家のご近所さんだ。幼い頃からよく名前の後ろを着いて回っていた。大学進学を機に一人暮らしを始めてから会う頻度は減っていたが、それでも実家に帰ると決まって顔を合わせていた。こうして電話で連絡してくるのは珍しい。名前は通話ボタンを押し、携帯を耳にあてた。
『もしもし、健司?久しぶりだね』
「おー、今日休みだろ?何か予定あんの?」
『今日は特にないよ。さっきまで寝てたし』
「じゃあちょうど良かった。夕方、行っても良いか?」
わざわざ電話をしてきて、しかも家に来るだなんてもしかして何かあったのかもしれない…名前はそう思い、すぐに了承した。
夕方、部屋のインターホンが鳴った。ドアを開けると、相変わらず整った顔のすっかり青年になった藤真が立っていた。
藤真を見たのは正月以来だった。ほんの数ヶ月の間に何だか大人っぽくなった気がする。
「久しぶりだな」
『うん。さ、入って?』
藤真は持ってきた袋をテーブルに置いた。少し鈍い音がドンッと響く。
「俺さ、この前ハタチになったんだ」
『えっ…そっかぁ…今月誕生日だもんね。とうとう健司も成人しちゃったかぁ…』
「だからさ、コレ」
そう言って先程の袋から取り出したのは缶ビールだった。
「決めてたんだよ。ハタチになったら真っ先に名前と酒飲むって」
ニッと歯を出して笑う藤真の笑顔は幼い頃から変わっていない。あの藤真とお酒を飲む日がくるだなんて…名前は何だか嬉しいような、寂しいような、不思議な気持ちだった。
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