南side.
NAME CHANGE
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買い物を終え、自転車に戻った。当然、軽い方の袋を名字に渡した。あれから何か考えているのか、名字は喋らなくなった。沈默が何となく気まずくて俺から言葉を出した。
「ほんで、どこで買うん?」
『えっ?な、何を?』
「アイス」
『あっ…あぁ!アイスな!えっと…あの坂登った所にめっちゃ美味しいトコあんで』
「詳しいやん」
さっきアイスが楽しみだと喜んでいたのに、忘れてたんかい。少し可笑しくて、俺はフッと笑ってしまった。
坂道になり、さすがに立ち漕ぎしなければ登れない。さっきまでは名字に合わせてゆっくりめに走っていたが、立ち漕ぎでスピードを落とすのはしんどい。俺は先に登り切り、名字が来るのを待った。
見ると名字は懸命に自転車を漕いでいていた。別に降りて押して来ても良いものを…。やっぱり頑張り屋さんなんやなぁと思うと、微笑ましくて愛しくて思わずプッと吹き出してしまう。
「ほら、もっと前に体重かけや!シャキッとせんかい!!」
太陽が名字を照らす。
額の汗が光り、自転車を漕ぐたびにスカートが揺れ、チラチラと白い脚が見える。
あまりにも力強くて、あまりにも綺麗で、こんなの自分が知ってる名字ではないと思った。
坂を登り切った名字の息は切れていて、暑いのか頬が薄っすらと赤い。これを見てやらしいことを想像しない男子高校生はいないだろう。少し直視できなくて、俺は視線を逸らした。
「ほら、アイス買う店教えてや」
気持ちを悟られないよう言ったが、少しぶっきらぼうだっただろうか…。
『今日、南と買い物来れて良かったわ』
どういう意味や?それは俺を好意的に見てくれてるということなのか?まあ何にせよ、悪い意味ではないだろう。
「そら良かった」
名字の言う通り、俺はホンマに素直じゃない。もう少し、名字が喜ぶような気の利いたことが言えるようにならんもんか…。
気が付くとアイス屋に着いていて、たくさんの種類があったが俺は迷わずレモン味を選んだ。
初恋やらファーストキスの味…って言うやんか。
驚くことに、ちょっと恥ずかしそうに名字もレモン味を頼んだ。
もうこれは確信しても良いかもしれへん。
レモンの味が口に広がる。
恋はもう始まっている。
おわり
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