花、咲く
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暫くして戻ってくると、名前は再び南の隣りに座った。しかし何故か正座をしている。
「どないしたん?」
『……かも』
「あ?何て?」
『破水したかも』
「はす……は?え、ちょ…ホンマに?」
『落ち着いてや。チョロッて出ただけやねんけど…』
病院に電話をすると、すぐに来るよう言われた。事前に頼んでいた花屋の奥さんに来て貰い子どもたちを預け、南と名前は病院に向かった。さっきまで心地良かった花火の音が、今は真剣な心境を表すようで落ち着かない。
検査をするとやはり破水していて、このまま産まれるまで入院することになった。しかし名前は何ともなく、ケロッとしている。
『子どもたちのこと、頼むな』
「お前は赤ん坊のことだけ考えとけ。ほな、また明日来るからな」
南が名前の頭にポンと手を置くと、少し泣きそうな顔をした。3人目と言えどやはり不安だろうし、上の2人のことも気になるのだろう。南は身体の向きを変え、大きなお腹に手を添えた。
「父ちゃんも、兄ちゃんたちも待っとるからな。何も心配せんと元気に出て来い」
その言葉を聞いて、名前の表情が緩む。
『烈、ありがと。頑張るな』
その日は、いつもの明るい笑顔で別れることができた。
南が自宅に戻る頃にはすっかり花火大会が終わっていて、楽しそうな余韻に浸りながら人々が家路についていた。
初めて花火大会を最後まで見なかった。それもまた一つの大切な思い出になったと思いながら、ジメジメと蒸し暑い夜道を進む。もう花火は上がっていないはずなのに、ドーン…と遠くから音が聞こえる気がした。
.