花、咲く
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あれは、花火大会の日だった。
予定日まであと5日となり、もういつ産まれても良い時期になっていた。
毎年、隣町で曜日に関わらず決まった日に花火大会が行われる。家の前の道を、浴衣を着た人たちが同じ方向に向かって歩く。南家は2階のベランダから見えるため、会場に直接行くことは無かった。
晩ご飯とお風呂をいつもより早く済ませ、麦茶と人数分のコップを持って2階に上がった。
「まだ始まらへんの〜?」
「はなび〜」
『もうそろそろ始まる頃やで〜』
子どもたちは嬉しそうにはしゃぎ、走り回っている。少し遅れて南も到着し、名前の横に座った。風呂上りのため髪はまだ濡れていて、団扇でパタパタと仰いでいる。
「暑いなぁ。涼しい部屋で花火見られんのは贅沢なことやなぁ」
『ありがたや、ありがたや。烈、ビール飲まんの?』
「コイツら寝たらにするわ」
すると、一発目の花火がパンッと打ち上がった。夜空に美しい花が光の珠を落としながら、煌々と咲いている。
「わー!でかー!」
「はなび〜!」
子どもたちの興奮はさらに増していく。
「おー、やっぱコレ見な夏は越せんなぁ」
『毎年見てるけど、ホンマ綺麗やなぁ』
大人は静かに、夜空を見上げる。
ドーン…
パチパチパチパチ…
次々と打ち上げられる度に、感嘆の声が南家の2階に漏れる。
連続で何発も打ち上がり、見る側の感動もヒートアップしていく。浸る余韻に、似つかわしくない言葉が発せられる。
『あれっ…』
子どもたちは花火に夢中で気が付いていなかった。南は花火に顔を向けながら、声だけを発する。
「何や、どっかおかしなトコあったか?」
『いや…ちょっとトイレ行くわ』
名前はスッと立ち上がり、トイレに向かった。南は特に気にせず、花火を見ながら麦茶で喉を潤す。
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