君が好きな僕の苦手な物を、嫌いになれなくなった。
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大学のゼミの打ち上げと称して、飲み会をするらしい。以前の俺なら迷わず欠席していたが、今回は少し迷っている。
同じゼミに気になる女の子がいる。名前は名字 名前さん。グループ発表の時に同じ班になってその存在を初めて知った。彼女は他の女子と違って妙に落ち着いていて、クールな印象だった。かと言ってとっつき難い訳でもなく、冗談を言えば笑うし、人の話もよく聞いているなと思う。グループでの作業も難なくこなし、将来〝仕事ができる人〟になるタイプだなと思った。
彼女は煙草を吸う。そして、いつもブラックコーヒーを飲んでいる。たまたま通り掛かった時、大学構内の喫煙所に名字さんの姿を見つけたことがある。向こうも俺に気付いたようで、煙草を持つ手をスッとあげた。
「名字さんは、どうして煙草吸うようになったの?」
『んー…何かつまんないんだよね。大人になって、ストレス溜めながら作り笑顔で働いて、結婚して、相手に不満を持ちながらも我慢して生活する…とかさ。行き着く先が決まってるような気がして、つまんないの。だから少しくらい、はみ出してみても良いかなと思って』
想像していなかった答えに、俺は少し黙ってしまった。まだ若く、何でも選んでいけるのに何をそこまで憂いているのだろうか。もしかしたら名字さんは、自分には見えない何かが見えているのだろうか。そう思うと、彼女が凄く魅力的に見えた。
黙ったままの俺を、名字さんは不思議そうに見ている。
『女が煙草なんて…って思った?』
「あ、いや…それは全然思わないけど…」
『…けど?』
「名字さんて、いいね。そういうの、素敵だと思う」
思ったことを素直に言っただけだった。しかし彼女が耳まで真っ赤になり、伏し目がちになったのを見てしまうと、ああ、これはもう始まってしまったな、とすぐに気が付いた。
たぶん俺は名字さんを、好きになるだろう。恋愛としての〝好き〟だ。何となくそんな気がした。
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