繰り返す8月の夕空
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──高校3年生の夏
夏休みに入って早々、大学に進学しない名前は就職のガイダンスを聞くために学校に来ていた。そしてそれが思った以上に長く、すっかり夕方になってしまった。自転車で帰っている途中、名前はキッと自転車を漕ぐのを止めた。
(南…?インターハイで広島に行っとんちゃうかったっけ…?)
同じクラスの南が河原に座り込み、遠くを眺めているのはよく見かける光景だった。しかし、先日広島に行ったばかりのはずが、もう大阪に帰っているということは…さすがの名前も状況を察することはできた。
南は試合で他校の選手に怪我をさせたとか、そういう噂を聞いたことはあった。あまり口数は多くなく、いつも何かに囚われているような、感情を伏せているように思えた。それでもたまに見せる微笑みや、優しさが感じられることで、どこか人間くさい、何となく惹かれる存在だった。
そして、自分を押し殺してまでも成し遂げたい何かがある南が羨ましかった。
いつも見ていた背中が、夏の夕空も手伝って今日は一段と美しく見えた。
きっと南の人生において、今日は何か特別な日なのかもしれない。そう思った名前は鞄からカメラを取り出し、自転車に跨ったまま南を撮った。今しかないこの瞬間を形に残したいと思ったからだ。
シャッター音に気付き、南は名前の方を振り返った。
『おかえり、南』
「名字…?何してんねん、こんな時間に。つーか今、写真撮ったやろ」
『んー、何か特別な気がしてさ…撮っておかな勿体ないと思って』
「……まぁ、確かに特別っちゃ特別かもしれへんな」
名前は少し離れて南の隣りに座った。そして暫く何も言わず、南が見ていた景色を同じように眺めた。
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