あの勝利がくれたもの
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その数日後、すぐに神奈川代表の合宿が始まった。あの名簿に書かれていたメンバーが揃うと、やはり迫力があった。
初日の夜、明日の練習メニューについて監督と牧さんと打ち合わせをした。監督は合宿所には泊まらないため、終わるとすぐに帰ってしまった。私と牧さんは少しそこで話をしていた。
「さっき桜木に聞いたんだが、清田がインターハイから帰った足で、そのまま湘北に出向いたらしいんだ」
『えっ…そうなんですか?』
「〝優勝できなかった〟と報告に行ったらしい」
会場のロビーで清田が桜木くんと流川くんにかけた言葉を思い出した。
〝お前らがあの山王に勝ったこと、ぜってー無駄にはしねぇからな〟
清田はきっと、湘北が掲げていた〝全国制覇〟を成し遂げたかったのだろう。それが同じ神奈川代表としての最大限のエールになるからだ。
『清田、成長しましたね。やっぱりタダモノじゃ無かったか』
「あぁ。飛び抜けてたからなぁ、アイツは」
まだ入部から1年も経っていないのに、こんなにも成長が見えるだなんて、先が楽しみだなと思った。暫く余韻に浸っていると、牧さんが私の手をそっと握った。
「ところで、そろそろ敬語じゃなくても良いんじゃないか?俺は名前の彼氏なんだろう?」
お互い座っているため目線の高さが同じせいか、少し上目使いで私を見つめる牧さんはズルい。
『や、分かってますけど…一応今は合宿中ですし…』
「練習が終わってるんだから、プライベートの時間だろう?それにこの部屋には誰も入って来ないぞ」
牧さんは私の手をむにむにと何度も握る。
「合宿中は一日中、名前といられるんだな」
『ま、牧さん…ダメです…ドキドキし過ぎてヤバい…』
すると、牧さんは私の胸に耳を当てた。私は驚いて固まってしまう。
「本当だ。鼓動が速いな。でもそれは俺も同じだぞ。ほら」
私の手を自らの胸に当て、鼓動を確認させた。確かに速い気がするが、それ以上に牧さんの逞しい胸板に触れて、私の鼓動はさらに速さを増した。
『ま、牧さん…ちょっと…ホントに心臓に悪いです…』
「そんな顔するなよ。我慢できなくなる」
牧さんは握った私の手を引き、腕の中にすっぽりと包んでしまう。そして伏し目がちに私を見つめる。目尻のホクロがいつもより凄くセクシーに見えるのは何故だろう…。
私は目を閉じた。
そして、そっと唇が重なった。
初めてのキスが国体選抜合宿の時だと言える私たちは、この恵まれた境遇に感謝しなければならないと、改めて思った。
翌日の練習で、清田と桜木くんが以前より仲良くなっているように見えた。流川くんは清田へのパスが何となく増えた気がした。
国体が終われば、本当に牧さんや赤木さんたちとバスケをすることは出来なくなってしまう。けれどあの1年生3人を見ていると、神奈川の高校バスケはこれからもキラキラと輝いていくに違いないと思えた。
だからもう少しだけ、彼らと一緒にバスケをする牧さんを見ていたい。
牧さん、素敵な後輩たちに慕われて、本当に良かったですね。
そんな牧さんがやっぱり大好きです。
国体が終わったら、そう伝えようと心に決めた日だった。
おわり
あとがき→
初日の夜、明日の練習メニューについて監督と牧さんと打ち合わせをした。監督は合宿所には泊まらないため、終わるとすぐに帰ってしまった。私と牧さんは少しそこで話をしていた。
「さっき桜木に聞いたんだが、清田がインターハイから帰った足で、そのまま湘北に出向いたらしいんだ」
『えっ…そうなんですか?』
「〝優勝できなかった〟と報告に行ったらしい」
会場のロビーで清田が桜木くんと流川くんにかけた言葉を思い出した。
〝お前らがあの山王に勝ったこと、ぜってー無駄にはしねぇからな〟
清田はきっと、湘北が掲げていた〝全国制覇〟を成し遂げたかったのだろう。それが同じ神奈川代表としての最大限のエールになるからだ。
『清田、成長しましたね。やっぱりタダモノじゃ無かったか』
「あぁ。飛び抜けてたからなぁ、アイツは」
まだ入部から1年も経っていないのに、こんなにも成長が見えるだなんて、先が楽しみだなと思った。暫く余韻に浸っていると、牧さんが私の手をそっと握った。
「ところで、そろそろ敬語じゃなくても良いんじゃないか?俺は名前の彼氏なんだろう?」
お互い座っているため目線の高さが同じせいか、少し上目使いで私を見つめる牧さんはズルい。
『や、分かってますけど…一応今は合宿中ですし…』
「練習が終わってるんだから、プライベートの時間だろう?それにこの部屋には誰も入って来ないぞ」
牧さんは私の手をむにむにと何度も握る。
「合宿中は一日中、名前といられるんだな」
『ま、牧さん…ダメです…ドキドキし過ぎてヤバい…』
すると、牧さんは私の胸に耳を当てた。私は驚いて固まってしまう。
「本当だ。鼓動が速いな。でもそれは俺も同じだぞ。ほら」
私の手を自らの胸に当て、鼓動を確認させた。確かに速い気がするが、それ以上に牧さんの逞しい胸板に触れて、私の鼓動はさらに速さを増した。
『ま、牧さん…ちょっと…ホントに心臓に悪いです…』
「そんな顔するなよ。我慢できなくなる」
牧さんは握った私の手を引き、腕の中にすっぽりと包んでしまう。そして伏し目がちに私を見つめる。目尻のホクロがいつもより凄くセクシーに見えるのは何故だろう…。
私は目を閉じた。
そして、そっと唇が重なった。
初めてのキスが国体選抜合宿の時だと言える私たちは、この恵まれた境遇に感謝しなければならないと、改めて思った。
翌日の練習で、清田と桜木くんが以前より仲良くなっているように見えた。流川くんは清田へのパスが何となく増えた気がした。
国体が終われば、本当に牧さんや赤木さんたちとバスケをすることは出来なくなってしまう。けれどあの1年生3人を見ていると、神奈川の高校バスケはこれからもキラキラと輝いていくに違いないと思えた。
だからもう少しだけ、彼らと一緒にバスケをする牧さんを見ていたい。
牧さん、素敵な後輩たちに慕われて、本当に良かったですね。
そんな牧さんがやっぱり大好きです。
国体が終わったら、そう伝えようと心に決めた日だった。
おわり
あとがき→