飾らないで
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その後、話題になっているSF映画を観に行った。隣りに座るのは緊張したけれど、周りが暗いため緊張を隠すことができた気がした。当然、映画の内容は頭に入ってこなかった。勇気を出してチラリと木暮先輩を見ると、真剣に画面を見ていた。少し難しそうな表情に思わず口元が緩んでしまう。
私の視線に気付いたのか、木暮先輩がこっちを見た。目が合うと途端に恥ずかしくなり、お互い笑い合った。
その後、映画館が入っているショッピングモール内を見て回った。木暮先輩はラーメンの絵と文字がプリントされたTシャツを買っていた。部活で着るらしい。意外な一面を見ることができて、私は嬉しかった。そして、気付いた。
〝恋をしている〟と。
木暮先輩がレジでお会計をしている間、私は携帯を開き、メールを打った。
『楽しいですね♪』
お財布を鞄に仕舞う時、メールの着信に気付いたのだろう。木暮先輩は携帯を見ていた。そしてそのまま何か操作をしていて、それが終わると同時に私の携帯にメールが届いた。〝木暮先輩〟と表示されている。メールを開くと、そこにはこう書かれていた。
「名前ちゃんが好きです」
バッと顔を上げて木暮先輩を見ると、照れくさそうに微笑みながら私の方に向かってきた。
「ハハ…いきなりゴメンな。なかなか切り出せなくてさ。でも名前ちゃんのメールを見たら、今言わなきゃって思っちゃって…不思議なことに、メールだと色々素直に言えちゃうんだよな」
『わ、分かりますっ!私も木暮先輩と直接お話するの緊張しちゃって…』
「改めてちゃんと言葉にするよ。名前ちゃんが好きなんだ。俺と付き合って欲しい」
メールも嬉しかったけれど、言葉にすると木暮先輩の声と表情が分かって、心に響いた。少し恥ずかしそうな先輩が愛おしい。
『わ、私で良ければ、よろしくお願いします』
木暮先輩は今まで見た中でも最上の笑顔を見せてくれた。
「ラーメンと映画、また別の日にリベンジしないか?」
『えっ…リベンジ?』
「俺、緊張しちゃってさ。ラーメンの味も映画の内容もサッパリだったんだ」
『…私も、同じです』
私たちは一瞬見つめ合い、そして大笑いした。
彩子ちゃんの言う通りだった。
私もありのままの、飾らない先輩を知れて嬉しい。
今度は、私だけが知っている先輩を見せて欲しいな。
何も飾っていない私も、先輩だけに見せてあげるから。
おわり
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